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平成22年7月4日: 医療裁判・医療訴訟に、講演用スライドの主要部分をまとめた「医療訴訟の現状と問題点」(PDFファイル)を公開しました。ブラウザからの閲覧はこちらから可能です。 平成22年6月13日、医療裁判・医療訴訟に、医療問題弁護団問題~1~、~2~、~3~、~4~を掲載しました。 |
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医療裁判・医療訴訟>「医療訴訟の現状と問題点」より



































医療問題弁護団問題 ~1~
事件番号 |
終局 |
司法過誤度 | 資料 |
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| 一審東京地裁 | 平成19年(ワ)第35365号 | 和解 | 過誤性なし |
平成21年のある日に傍聴した事件です。91歳とご高齢の方が、医療過誤によって亡くなったとして、遺族が原告となり訴えを起こしたものです。原告本人尋問の最後に、
病院というのは患者を救うところだと思っていましたが、患者を殺すこともあるのだと思いました。私は今でも○○看護師が母を殺したと思っています。
という不穏な言葉が飛び出したため、気になっていました。そしてようやく先日、記録を確認してきました。
事件概要は後回しにしますが、この事件でなにより気になったのは、原告代理人の弁護活動でした。訴状日付は平成19年12月30日、原告側第1準備書面は平成20年6月3日付なのですが、その第1準備書面には、以下のような記載がありました。
なお、本件義務違反の具体的内容と結果との因果関係については、文献収集とその内容による検討がなお不十分であるので、次回書面にて再整理を行いたいので、今一度、次回までの準備の時間をお借りしたい。
また、第2準備書面が平成20年7月7日付ですが、因果関係については、
次回書面において主張する。
結局、賠償責任追求に関する主張は、平成20年9月2日付の第3準備書面でようやく揃えたというわけです。
普通、弁護士が訴訟を受任するとなれば、それなりの見通しを立ててから受任するものだと思っていたのですが、この事件はそうではないようです。原告代理人を確認したところ、宮城朗弁護士と宮川倫子弁護士となっており、さらにウェブで確認すると、二人とも医療問題弁護団の一員であることが分かります。特に宮城朗弁護士は医療問題弁護団の政策班の一員でもあり、より重責を担っていると考えられます。そのような弁護士が、第1準備書面を提出するに至って未だに主張の検討が不十分であるということは、如何なものでしょうか。医療に例えれば、検査などの検討がなされないままに当てずっぽうで治療・手術に突入するようなもので、これで結果が悪ければ賠償責任を問われかねないものだと思われます。このような塩梅ですから、その後に出てきた原告側の主張に説得力はなく、事件は最終的に100万円で和解になっていますが、その100万円は医療側が支払うよりも、原告側代理人が支払う方がより公平性に適っているようにすら思います。
医療事故調査委員会設置に絡めて言えば、私自身は医療事故調査委員会に法律家が関与することに必ずしも否定的ではありませんが、もし医療問題弁護団がこのような弁護活動をした弁護士に対する自己批判ができないような団体なのであれば、その団体の弁護士が医療事故調に関与することは適切ではないと思われました。
以下、事件概要です。
平成19年(ワ)第35365号
原告 B、C
原告代理人 宮城朗、宮川倫子
被告 Y
被告代理人 平沼髙明、平沼直人、加治一毅、柳澤聡、平沼大輔、小高健太郎、金子玄、渡辺周
亡A 明治45年○月○日生、平成16年1月8日死亡、当時91歳
昭和53年から慢性腎不全で通院
平成15年
5月31日 自宅で転倒して整形外科受診。
6月4日 慢性腎不全に対して、人工透析と腹膜透析の説明をした。
10月29日~11月22日 入院、シャント造設。(訴状と争点整理案とに日程の食い違いあり)
11月29日~ 嘔気、食欲低下で内科入院。
12月4日 8:45 病室でベッド上端に座位となっていたところ、病室内のポータブルトイレへ移動しようとして、転倒。靴下を履いていたため滑った様子だった。
平成16年
1月7日 3:35 トイレへ行きたいと看護師を呼び、病室外のトイレへ移動。担当看護師がAのそばを離れた際にAはトイレの個室内で転倒。左大腿骨頚部骨折。
1月14日 左大腿骨人工骨頭置換術(全身麻酔下)
1月16日 リハビリ開始
1月26日 朝レントゲンを施行したところ、左股関節が上方へ脱臼していた。
9:15 透視下で整復を試行するも困難。
全身麻酔下に非観血的に整復施行するも筋拘縮が強く困難。
16:03 全身麻酔下で観血的に脱臼を整復。
1月28日 透析中にシャント閉塞。
1月29日 16:25 全身麻酔下にシャント再作。
2月1日 2:00 Aは強い不穏状態に。レントゲンで人工骨頭脱臼再発を確認。
4:50 非観血的に整復施行するも不能。
9:20 全身麻酔下で非観血的に整復。
2月2日 10:40 透析中に意識障害、血圧低下。血中ガス酸素分圧も測定できず。
その後意識状態は徐々に改善するも、2月4日 0:20容態が急変、心停止し1:45分に死亡。
争点
1) 転倒、転落防止義務違反
原告らの主張 3:45~3:50までAを放置した。
被告の主張 他の患者からナースコールがあった。Aの足がトイレで地面に付くことを確認し、終了後にコールをするように指示、Aの了解を得てその場を離れた。予見は不可能だった。
2) 人工骨頭置換術後の脱臼および再脱臼防止の管理義務違反
3) 損害額
慰謝料 1650万円
遺族固有の損害 葬儀代各75万円、固有慰謝料100万円、弁護士費用100万円
原告一人あたり (1650万円÷2)+75万円+100万円+100万円=1100万円
平成22年6月13日記す
医療問題弁護団問題 ~2~
事件番号 |
終局 |
司法過誤度 | 資料 |
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| 一審東京地裁 | 平成21年(ワ)第29097号 |
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これも平成21年のある日に傍聴した事件です。第1回弁論で、原告代理人のみが出席していました。村田渉裁判長が原告側代理人に対して、次回弁論準備の1週間前に書面提出することを求めながら、「難しいと思うけれど一回やってみてください。ズルズルやるとズルズル行ってしまいますから。勉強ですから。」と話すのを聞いて、「提起する前に勉強しろよ」と心の中で思っておりました。
そして、先日記録を閲覧してきました。原告側代理人は大谷直弁護士と今泉亜希子弁護士で、二人とも医療問題弁護団の一員でした。ICUに入院していたところ、ベッドから転落し頭部外傷受傷。まだ係争中でしたが、この受任はひどいのではないかと思われました。過失も考えにくいし、訴状より半年後の日付で書かれた原告協力医意見書(実態は協力と言えない)に「ただし、死に対して頭部外傷がどの程度寄与しているか、私には把握できない。」と書いてあることからも、因果関係の証明は全く出来ないと考えられ、少なくとも因果関係認定を前提とした請求は最初から無理と思われる事例でした。勝負は下駄を履くまで分からないということはあるかも知れませんけれど、これは本来なら原告を説得してお引き取り願う事例だったのではないかと思われました。特に、今泉亜希子弁護士は医療問題弁護団の幹事とのことですが、一体どうしたことなのかと考えてしまいます。
これまた医療事故調査委員会との関係でいいますと、このような無理を通そうとする法律家が事故調に参加することは、いたずらに真相解明を妨げる結果につながりかねないと考えられました。医療問題弁護団は事故調参加には不適格なのではないかと思われた次第です。
以下、事件概要です。
平成21年(ワ)第29097号
原告X (訴外亡Aの配偶者)
原告代理人 大谷直、今泉亜希子
被告 医療法人Y
被告代理人 加藤愼、鈴木成之
請求額5298万4853円+遅延損害金
内訳 (峰村注:訴状は全て3桁区切り。裁判所提出書類は普通4桁区切りです)
通院慰謝料 32万1000円
死亡慰謝料 2800万円
逸失利益 2088万7911円
(74歳の平均余命11年、国民年金、厚生年金、老齢基礎年金312万1100円、企業年金138万7212円)
ライプニッツ係数7.722
入院雑費 52万8000円
弁護士費用 500万円
証拠保全 13万5942円
損益相殺(遺族年金) -188万8000円
訴外A 昭和8年○月○日生
平成19年9月21日に被告病院ICUで治療中。同院W医師の注意義務違反により、ベッドから転落。左前頭葉脳挫傷、左側頭葉骨折、左半球に外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫。
平成20年○月○日(約1年後) 肺炎で死亡。
平成13年○月 脳内出血→入院
入院歴
平成15年○月 脳内出血
平成18年○月 脳梗塞
平成18年○月(上記入院の1ヶ月以内) 脳出血
既往症 肺気腫
平成19年9月21日、頭痛訴え。血圧169/77、被告病院受診。
MRI、CT施行。ロキソニン処方。カルテに「10月再check」という記載あり。
午後3時頃デパートで食事。途中で急に具合悪くなった。椅子から立ち上がれず、意識薄れ被告病院に救急搬送。ICUへ。
救急外来でJCSII-10, 血圧207/97
18:40 頭部CT、右側頭葉出血性梗塞
20:00 不穏あり。看護記録「ストレッチャー上危険にて抑制帯す」
(病院から反論、19:20とのこと)
20:00 ICUへ。看護師の掛け声に対して時々眼を開けるのみ。
ICU1名、HCU1名、フリー1名の計3人看護体制。ICUは大部屋6人+個室2室。
巡視は1時間に1回、1人の看護師がした。
ICU入室時、救急看護師より、突然起き上がるとの申し送りがあり、抑制帯の準備がなされた。
21:30 Aが起き上がり、ベッドで四つん這いになっていた。オムツに失禁。看護師が確認していた。おむつ交換を行うと再び入眠したため、抑制は行われず、再度観察に。
22:00 看護師2名。別のICU入院患者のオムツ交換処置を行っていたところ、5分ほど経過した際にドスンと大きな音がした。ベッド足元からAが頭を下に転落していた。
被告第1準備書面
原告は、「意識障害の悪化により、1年弱という長期入院を余儀なくされた」と主張するが、1年弱の入院は意識障害が原因ではなく、療養途中で大腸癌が見つかったり、肺気腫の悪化があったことが原因。
治療費未払 126万9040円
甲B第4号証 協力医意見書から抜粋
平成19年9月21日受傷後CTについて
(受傷前と比べて)左前頭葉に脳挫傷による脳内出血疑いの高吸収域出現。左半球と小脳テント沿いにくも膜下出血、わずかながら左前頭葉付近に硬膜下血腫が見られる。しかし翌22日に意識レベルI-3に回復。9時頃施行のCTで、脳挫傷に伴なう左前頭葉の脳内出血は増大しているものの、くも膜下出血及び硬膜下血腫の増悪は無いように見える。mid-line shiftや脳室変形など、左前頭葉の脳内血腫による占拠効果もそれほど著しくない。グリセオール保存的治療で経過観察したことには問題ないと思われる。
急性期を脱して見当識障害など認知機能の異常が前面に出現し、頭部外傷による認知症に至ったと考える。
(鈴木二郎編集、最新脳神経外科p252引用)
A氏は受傷時に75歳と高齢。若年なら軽微な外傷も、高齢で死亡する結果に至る可能性ある。
一方A氏は、脳血管障害を繰り返し、かつ慢性閉塞性肺疾患に罹患するなど、血管系及び循環器系の合併症を抱えていた。これもA氏の致命傷になり得たと思われる。ただし、死に対して頭部外傷がどの程度寄与しているか、私には把握できない。
藤井聡医師(山形大学医学部生理学教授。ただし医師免許取得後5年余り脳神経外科在籍)
なお、訴状日付は平成21年8月18日
上記藤井医師意見書日付は平成22年2月2日
甲 A第25号証 原告陳述書 平成22年3月8日、最後の部分
「私には、夫がここまで原因は、ベッドから転落して、頭を打ったからとしか思えません。」
平成22年6月13日記す
医療問題弁護団問題 ~3~
事件番号 |
終局 |
司法過誤度 | 資料 |
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| 一審東京地裁 | 平成19年(ワ)第11294号 | 和解 | 問題あり |
これまた平成21年のある日に傍聴した事件です。杏林大学医学部救急医学教室教授である山口芳裕教授が、厳しい口調で被告の過失を指摘していたため、強い関心を持ちました。
事案概要を大雑把にまとめますと、脚の動脈に対する手術を受けた翌日に転倒し、脳出血を来たして麻痺を起こしたというものです。請求額は約5000万円。詳細は後回しにしますが、いろいろな医師に意見を聴いたところ、病院側は標準的な対応をしており、転倒は病院の過失とは考えられず、その後の対応については原告側は過失を主張しているものの、これも実際には特段の過失は考えにくい上に、後遺症との因果関係を肯定する材料は無いものと考えられました。特にその原告側協力医である山口教授に対する尋問の最後の部分を聴いて、これは普通に考えれば因果関係を前提とした賠償責任追求はそもそも無理だろうとの印象を強くもちました。その部分は概ね以下のようでした。
機能予後についての改善は,どの程度にできていたという風にお考えでしょうか。
------ それはどの時点なら,どの機能が廃絶せずに残ったということを申し上げることは難しいです。ただし,本人に残ったレベルよりは,1分でも1秒でも早ければ,少しでも廃絶する機能が縮小できたんではないかという,そういう趣旨での意見です。
(中略)
可能ではなかったかというのは,そうはならなかった可能性もあるということですか。
------ ええ,それは人間のからだだから,絶対にこの時点でやっていたら,この部分は残っていたはずだということを申し上げることはできません。これは医療者,医学の専門家としてできません。ただ一般論から言うと,ともかく1分でも1秒でも早くやることによって,廃絶する機能が縮小できるというのは,私もたくさんの患者の中で経験しているところでございます。
法律家の方なら一読してお分かりかと思いますが、因果関係のイの字の証明にもなっていません。こんな事件を請け負った弁護士は一体どんな弁護士なのだろうと確認したところ、これまた医療問題弁護団の団員である澤藤統一郎弁護士なのでした。原告側協力医の見解ですら、以上のように因果関係をむしろ否定するようなものであるのにも関わらず、因果関係を前提とした賠償請求の訴えを起こすことは、専門家の責任を厳しく追求することを是としている医療問題弁護団の一員として、如何なものかと思われたのでした。
以上のような事例であり、かつ優秀な裁判官を配する東京地裁医療集中部での審理でしたので、当然に原告側敗訴判決に至るものだとタカをくくっていたのですが・・・
なんと、後日に記録を確認したところ、結構な金額での和解になっていたのでした。和解は当事者同士の合意があってのものですから、第三者がとやかく言うものではないのでしょうが、しかしこの賠償をもし保険会社の保険金で支払っているのだとしたら、問題になりはしないのかと思うところです。
そして実は、この事件を通じて一番命拾いしたのは、他ならぬ澤藤統一郎弁護士ではないかと思った次第です。しかしこのような人物が所属する医療問題弁護団は、医療事故調査委員会に関与するには極めて不適格と言わざるを得ないと思います。
原告代理人の質問に対する被告代理人からの回答書。(訴訟提起以前のものらしい)
転倒した事情
H17.1.17,左総腸骨動脈狭窄に対する経皮的血管形成術(PTA)目的で入院。翌18日,心臓血管外科医師によりA氏および奥様であるB様に手術の内容,合併症等についての説明を実施し,同意を得ました。同月20日のPTA治療は,両側大腿動脈よりシース挿入し,ステント2本を留置することで左総腸骨動脈の拡張に成功しました。その後も順調に経過していました。
同月21日,9:20ごろ,シース抜去部の状態を確認し,尿道カテーテルを抜去しました。その際「初めて歩くときは看護師が付き添いますので,一人で歩かず必ず看護師を呼ぶよう(ナースコールするよう)」指導しております。9:30ころ,A氏は「洗顔・髭剃り」を希望されましたので,看護師が洗面所前の廊下まで付添い歩行をしています。その際の歩行状態に問題はありませんでした。その後,10時ころにも歩行しているところが観察されており,11時46分ごろにはベッド上で新聞を読んでいたことも確認されています。
11時58分ごろに大きな物音がし,直ちに駆けつけた看護師により病室前で仰向けで転倒しているところが発見されました。転倒の様子は同室の方が観察されており,それによれば「音がして見たら,病室の出入り口のあるヒビソフト(手指消毒剤)に手を掛け,そのまま後ろ向きに転倒した」ということでした。
質問1 Aの転倒は,手術後の最初の歩行(いわゆる「第一歩行」)の際に生じた事故か?
回答 違う。第一歩行は9:30ごろ。看護師付き添いだった。
質問2 第一歩行に関しては,看護師の介助が必要だったのでは?
回答 患者の年齢や状態,手術侵襲に鑑みると,必須というわけではない。なお,本件では付添い介助しているが,歩行状態に異常はなかった。
質問3 手術後の歩行に関しては,事前に担当者から患者本人に対して何らかの指示や注意がなされていたか。
回答 術前の説明の際に術後の合併症,注意事項について一般的な説明を実施している。また,尿道カテーテルを抜去した際に,上記の通りの指導を行っている。
質問4 転倒と転倒発見の各時刻の特定は?
回答 転倒と転倒発見時刻はほぼ同時であり,午前11時58分頃。
質問5 転倒を発見したのは誰か
回答 転倒直後に担当看護師と看護師長が駆けて発見。転倒の具体的な状況は同室の患者様が確認している。
質問6 転倒の状況
頭部を病室側,下肢を廊下側に向けて仰向けの状態で倒れているところを発見された。転倒直前の状況は,同室の患者様が確認されており,その聞き取り内容は上記の通り。患者様の氏名等は個人情報なので回答できないとご理解を。
質問7 Aにはどのような外傷や打撲があったか
回答 後頭部に2×3cm大の裂創を確認。直ちにイソジン消毒,ガーゼで保護。
転倒発見後の処置。
11時58分ごろ転倒,直ちに発見。Drコールで駆けつけた医師により意識消失,呼吸停止確認。心臓マッサージ,補助呼吸が実施され,12:05心拍の再開,呼名に反応を認めた。12:12緊急の頭部CT撮影準備,同33分にCT撮影。SAH疑いで直ちに脳神経外科コンサルト。CT所見では,脳動脈瘤の破裂による典型的なSAHではなく,右前頭葉に軽度の脳挫傷を伴う外傷性の可能性が示唆された。同CT所見上,緊急性は認めず。脳外科がCTを読影した際の患者状態は応答可能であり,神経学的な所見は認められていなかった。3時間後に経時的CTを予定。
その後,12:25左大腿静脈からCVライン確保。14:20頃血圧上昇,ペルジピンによる降圧療法を開始。15:15意識レベル低下,舌根沈下。経過CTが予定されていたこともあり,直ちにCT撮影を実施したところ,急性硬膜下血腫の出現,脳ヘルニアの徴候が急速に進行していることが認められたため,緊急手術を決定。
原告準備書面より
ペルジピン投与
14:20 収縮期血圧150台 1.5ml/時でDIV開始
14:40 212/94 0.5ml静注
14:45 194/104 同
14:50 194/104 同
15:00 JCS10 3.0ml/時に増量
15:30 3.6ml/時に増量(原告提出の経過一覧には記載がない)
事故当時69歳
平成16年5月11日,胸痛にて被告センター受診。
血管造影にて右冠動脈末梢(RCA#3)に99%狭窄。同月13日にステント留置。
右冠動脈近位部(RCA#1)50~70%,右冠動脈末梢(RCA#3)99%,左冠動脈主幹部(LMT#5)50%,左前下降枝(LDA#6)50%,左回旋枝(LCx#11)50%
8月16日 左総腸骨動脈CIA狭窄90%
平成22年6月13日記す
医療問題弁護団問題 ~4~
医療問題弁護団は、民間医局という医師のための転職斡旋サイトに、「医療過誤判例集」として月1回の連載を請け負っています。先例価値がどれほどかも分からない高裁・地裁の1判例から、医療側にやたらと義務を示そうとするその連載物そのものには、私自身は余り関心がなかったのですが、あるとき、判例集としては不適切な掲載事例があったため、民間医局に対して以下のようにメールを送信しました。
御社雑誌ならびにサイトに連載されている「医療過誤判例集」について意見を述べさせて頂きます。最新号に掲載された判例に問題があるからなのですが,あわせて従前より考えていたことを書かせて頂きます。
最新号に掲載された「せん妄のある入院患者への身体拘束が違法とされた事案~身体拘束の適否の判断~」は,今頃になって掲載するには不適切な判例です。なぜなら,1ヶ月ほど前に最高裁判所が上告審の弁論を開くことを決定したためです。
裁判の仕組みを知らないと難しい話ですが,上告審の弁論を開くということは,高裁判決が取り消される可能性が極めて高いことを意味します。医療問題弁護団の弁護士が,この事件の上告審の弁論が開かれるという事実を知らなかったのだとしたら,それは医師が最新の重要知見を見逃していたのと通じるものがあり,大きな問題です。また,この事実を知りながらも高裁の判断を説くことによって,記事を読む医師を感化しようという策略であれば,効果のない治療法を宣伝して感化しようとすることに通じる,狡猾な行為と言わざるを得ません。
この点について担当者にきちんと確認し,釈明したほうが良いと考えます。この件については,後日拙サイトでも「医療問題弁護団問題」として取り上げたいと思います。
http://www.orcaland.gr.jp/kaleido/iryosaiban/
ちなみにこの拙サイトでは,加古川市民病院事件をはじめとするいくつかの重大事件について,問題点を取り上げております。
その他の問題を記していきます。
そもそも「医療過誤判例集」という題名が良くありません。「過誤」か否かはその事例の内容によるのであって,医療訴訟全例に過誤があるかの如き題名は如何なものでしょうか。実際に,責任認定されなかった例も掲載されており,その場合には「医療過誤判例集」という題名は不適切です。
次に,但し書きの「判例の選択は、医師側もしくは患者側の立場を意図したものではなく、中立の立場をとらせていただきます。」という部分が,さも「中立の立場から解説している」という誤解を与える表現になっていることに問題があります。なるほど判例の選択はそうかもしれませんが,その内容は患者側に偏ったものと感じることが多々あります。
端的に言えば,「医師対象の雑誌・サイトで患者側弁護士に連載させるのは如何なものか」ということになります。
私は医療訴訟に研究的に接し,問題点を探ることを趣味としており,先述のようにサイトで批評を展開していますが,医療問題弁護団をはじめ患者側弁護士が,医療過誤ならぬ弁護過誤の疑いが極めて大きい弁護活動(勝ち目がない訴訟提起)をしているのを目にすることがあります。そのような彼らですから,解説が法的に的を射ていない場合が多くても不思議はないと思います。
これに対して編集部から返事が来たので、調子に乗ってもう一通メールを書きました。
早速のお返事ありがとうございます。
実は私は,「医療過誤判例集」すべてについて精読しているわけではありません。時間的制約ということもありますが,それ以前の問題として,そもそも民事訴訟の判決一つ一つは,原則として当該事件に対する判決なのであり,そこから一般論を広げるためのものではないのであるから,個々の事例をそう大きく参考にするほどのものでもないと考えているからです。
「医療過誤判例集」では,患者に有利な結果を得た判決一つをとって,さも一般的にその判決で指摘された注意義務が要求されるかのような解説が多いことに辟易しています。医療問題弁護団の弁護士は,ことあるごとに「裁判例から学んで再発防止を…」などと語りますが,単なる一例報告である一個の裁判例をもってそこまでの一般化をすると,私が死神判決と呼んでいる,産婦大量出血死亡訴訟
http://www.orcaland.gr.jp/kaleido/iryosaiban/S44wa1117.html
のように,かえって健康被害を拡大する結末を呼ぶ場合があります。
ちなみに最高裁判決は例外で,それ以降の下級審(高裁,地裁)の判断の規範となることになっているので,最高裁判決から学ぶことは,訴訟対策としては意味があるものです。しかしそれでも,現場が到底承服できないような最高裁判決もあるのですから,それをそのまま受け入れて医師に注意義務があることを当然のように書き連ねるのは,決して医療関係者のためにはなりません。
私は3年前からおおむね週1回,主に東京地裁で医療訴訟の傍聴や記録閲覧をしていますが,「あなた方が医師のことを言えるのか」とつい言いたくなるような,医療問題弁護団弁護士による弁護過誤と思しき医療訴訟を見ることがあります。その中でも特に気になっていたものが先日結審したようなので,近々記録を閲覧して拙サイトで紹介するつもりです。その訴訟では,提起前にきちんと原告協力医に聞き込みを行っていれば,勝ち目がないことが容易にわかったはずであるところ,提起から1~2年も経ってから行われた証人尋問で,わざわざその原告協力医から敗訴を決定付けるような証言を引き出していました。
訴訟提起前の調査が不十分だったわけで,同様に医師が手術前にきちんと検証せずに手術を行って失敗すれば当然非難の対象になるものです。
加古川市民病院事件や,大野病院事件についても,最近になってまたいろいろと声明を出しているようですが,「自分に甘く,他人に厳しい」医療問題弁護団に,まともに耳を傾ける医師はいないと思います。
医師も人間ですからミスもするし,また問題点はもちろんたくさんありますが,弁護士や裁判官とて人間ですから同じことなはずです。しかも司法も医療と同様にその場に集まる情報と人間によって結果が左右される不確実なものであり,現場の判断ミスなどは医療に負けず劣らず多くあるはずのものであるところ,そのような事情が医療でも同じであることを感じることもせずに,一方的に医療者にばかり義務を科すような彼らの記事にはうんざりだというのが率直な意見です。
今回記事は、上記メール2通の提示をもっておしまいとしておきます。
平成22年6月13日記す
このページに関するご意見・ご感想は 峰村健司(kenji_homme@yahoo.co.jp ←全角を半角に直す)までお寄せ下さい。
