2001年(平成十)

ローライズ・ジーンズ。9/11の同時多発テロ。「千と千尋の神隠し」。


FIDE RATING LIST JAN.
1Kasparov, Gary37Russia2849
2Anand, Viswanathan31India2790
3Kramnik, Vladimir25Russia2772
4Adams, Michael28England2746
5Leko, Peter21Hungary2745
6Morozevich, Alexander23Russia2745
7Shirov, Alexei28Spain2718
8Topalov, Veselin25Bulgaria2718
9Ivanchuk, Vassily31Ukraine2717
10Gelfand, Boris32Israel2712

 王座を譲ったとはいえKasparovが強いことは明白で、人々はチャンピオンを増員して三人と数えるようになる。混迷は深まるばかり、やや停滞気味の年だったか、あまり私の記憶に残っていない。それだけに、老雄Korchnoiの活躍が立派だった。Bielで優勝したほか、半世紀にわたる棋歴を二巻にまとめた味わい深い自戦記を出した。まれに見る名著である。


Wijk aan Zee, 13-28.Jan.
    1 2 3 4 5 6 7 8 91011121314
1Kasparov         9.0
2Anand           8.5
3Kramnik     ×     8.0
4Ivanchuk   ×       8.0
5Adams        ×  7.5
6Morozevich  ××  ×  7.5
7Shirov × ××     7.5
8Leko          ×   6.5
9Topalov ×     ×     ×5.5
10Fedorov ×  ××     ××5.0
11Van Wely  ×× ×××     5.0
12Piket ×   ×× ××   4.5
13Tiviakov ××× ×××     4.5
14Timman ×× ×  × ×  × 4.0

01/01 Kramnik-Morozevich, 0-1, D17, 終盤の怪力自慢がぶつかった。

 ShirovとKasparovの仲がこじれて、対局前の握手を拒否し合ったのが話題になった。二人の激突は第9ラウンド。その時点で5勝0敗3分でトップだったShirovは、しかし、ここで調子を崩してしまう。前年にタイトルを失ったKasparovにとっては、権威を取り戻す大きな意味を持つ優勝になった。この大会のLekoを撮った記録映画に、Kasparovの対局姿が収められているが、常人とは思えぬ威圧感を発散している。

Linares, 23.Feb.-06.Mar.
    1 2 3 4 5 6
1Kasparov ○==○=○○○7.5
2Polgar  =×○×  4.5
3Karpov ×==○  =×4.5
4Shirov =××○  ○×4.5
5Leko =×    4.5
6Grischuk ×× =○×○ 4.5

01/02 Polgar-Kasparov, 1/2-1/2, B80, 彼女だけがKasparovに激しく挑んで負けなかった。

 最初の3Rはすべてドローだったが、4RからKasparovが三連勝、優勝争いの興味は失せた。この後のFIDE早指し選手権でも文句なしの優勝を見せ付けている。KasparovとKarpovの対局は二年ぶり。にっかにかでファースト・ネームを呼び合って握手する二人に周囲はポカーン。「もうライバルじゃないのさ」とKasparov。また、レコの棋風も知られ始め、ICCの観戦者は誰の試合だろうと引き分けになれば「レコだ」「レコで終わった」と言い合った。

Enghien Les Bains, 11.-20.Apr.
    1 2 3 4 5 6 7 8 910
1Akopian      6.0
2Lautier  ×   5.5
3Bacrot     × 5.0
4Bareev   × ×5.0
5Van Wely×    ×5.0
6Grischuk ××  ×4.5
7Fressinet × ××  4.0
8Tkachiev   ×××  3.5
9Bologan××××× 3.5
10Bauer×  ××  ×3.0

01/03 Tkachiev-Bacrot, 1-0, D49, 得意定跡に引き込んだ先で五里霧中の乱戦に。

 パリ近郊のカジノで知られるEnghien Les Bains。以前から二年ごとに開催されていたが、この年から設備も顔ぶれもグレードアップした。大スターでなくても果敢な棋士を集めたのが成功して、ドローが半分以下という活気あふれる大会になった。最終日は首位のAkopianに、半点差で追うLautierが白番で挑戦。二位は他に三人も居て盛り上がる。結果は、Akopianの駒得をLautierが耐えてドロー、他の三人はすべて負け、二位も一人に決まった。

Dos Hermanas, 19.-27.Apr.
    1 2 3 4 5 6 7 8 910
1Dreev  ×   5.5
2Smirin×     5.5
3Almasi        5.0
4Vallejo  ×    5.0
5Illescas  ××  5.0
6Azmaiparashvili    ×  5.0
7Gurevich ×   × 4.5
8Radjabov ×    × 4.0
9Sokolov×  × × 4.0
10Krasenkow××  ×× ××1.5

01/04 Sokolov-Dreev, 0-1, D43, Dreevの十八番、Anti-Anti-Meran定跡の傑作。

 スペインはセビリアに近いDos Hermanasも、小さいながら素晴らしい大会を開いてくれる町である。14歳で当時の最年少GMだったRadjabovはこれがメジャーデヴュー。ポーンダウンでもSokolovからドローを得て見せるなど、すでに終盤の実力は一流だった。優勝しそうだったのは、初戦でDreevを破ったIllescas。ところが最終戦でVallejoに敗れて五位、代わってDreevが優勝した。Smirinに直接対決で勝ってるのが判定基準になった。

Zurich, 28.-29.Apr.
Semi-Finals
   1 2  
Kramnik1.50.5Piket
Kasparov1.50.5Short

Final
   1 2  
Kramnik1.50.5Kasparov

01/05 Kramnik-Kasparov, 1-0, D48, この時はKramnikの方が強いとしか思えなかった。

 Kortchnoiの70歳を記念して開催された早指しの大会。KramnikとKasparovの他、Short、Svidler、Spasskyなど12名が参加した。初日は六人づつに分かれてそれぞれの上位四人を選び、その八人で翌日に準々決勝から決勝までを戦うというシステム。Kortchnoi自身も参加し準々決勝まで残った。決勝は、落ち着き払ったKramnikと、その彼を破らんと目の色変えて勝ち上がってきたKasparovの対戦。初戦は例のBerlinでKramnikがドローを得、二局目を勝って優勝した。

Merida, 16.-22.May.
    1 2 3 4
1Anand○= ○○4.5
2Short×=○==○3.5
3Khalifman ×=○=3.0
4Hernandez××=××=1.0

01/06 Anand-Short, 1-0, C76, 黒もよく粘った熱戦。棋譜を並べて最後に私は「あ!」。

 メキシコはユカタン州の州都Merida、というより、マヤ文明の遺跡、階段ピラミッドがある所と言った方がいいだろう。前年にここで開かれた大会はメキシコ史上最強だったが、この年はAnandを迎え、さらにグレードアップ。優勝したのはこのアナンド。必然と言っても差し支えないだろう。
Astana, 20.May.-01.Jun.
    1 2 3 4 5 6
1Kasparov=○  ○○○=  7.0
2Kramnik=×○=  ○=○○6.5
3Gelfand  ×=  ○=○=5.5
4Shirov××    ○×=○4.5
5Morozevich×=×=×=×○○○4.5
6Sadvakasov  ×××==×××2.0

01/07 Kramnik-Sadvakasov, 1-0, D27, チェスってこんな簡単に勝てるゲームなんだろうか。

 カザフスタンの独立十周年を祝う大会。Astanaは1997年からの首都である。もとはAkmolaという名だった。この国で初めての大きな大会で、棋士達は最高の待遇を受けた。特にKasparovとKramnikはメルセデスで送迎された。他の四人はバスで呉越同舟。面白いのは組み合わせの抽選会。女の子が持った箱を棋士が順に選んで決めるのだが、当然ながら、KasparovとKramnikから選び始め、より当然ながら、二人は箱ではなく、女の子で選んだ。結果、二人は最終ラウンドで当る運びになり、盛り上がる展開が約束されたのである。主催者の計算通りだったのではなかろうか。






参考棋譜 (別ウィンドウで開きます)

Home