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問題一覧へ
解答は下に
(要点は図にカーソルを当てても表示されます)
CT0160
White to move.
いわゆる「離れ駒に手あり」。
CT0185a
White to move.
f2のルークが動けないのがつらいところ。
CT0185b
White to move.
図はNe3までの局面。原問題を修整。
CT0190
White to move.
正解以外の変化もちょっと難しい。
CT0192
White to move.
右か、左か、中か、どこを攻めよう?
CT0196a
White to move.
Nc7+は含みにとどめて、ポーンを得する。
-CT0196b-
Black to move.
実戦は1...Kb4で負けたが、引分けにできたはず。
CT0198
Black to move.
仕上げの練習に。実戦はあと2手で投了。
CT0212
White to move.
並の問題ならK翼方面に着目させますけど。
CT0236
Blackt o move.
同じ狙いの正解ふたつ。
解答
CT0160 1.Bxd5. exd5(Nb6, 2.Bc6), 2.e6(Rc8+. Kg7, 3.e6+. Qxd4). Rh7, 3.Rc8+
CT0185a 1.Rd6. Qxd6, 2.Nf7+
CT0185b 1.exf7+. Kxf7, 2.Qxg6+. Kf8, 3.Bxh5
CT0190 1.Nd6+. Bxd6(Ke7, 2.Qh5+), 2.Qxd5+. exd5, 3.exd6+
CT0192 1.Qxg6+. Kh8, 2.Qxh5+
CT0196a 1.Qd4. Kf8(f6, 2.Qxc5), 2.Nxe7. Kxe7, 3.Qxg7
CT0196b 1...Rxh5, 2.Rxa5+. Kb4, 3.Rxh5 Stale Mate
CT0198 1...Qxg3+, 2.hxg3. Rxb1, 3.Rxb1. d2
CT0212 1.Bd8. Qxd8, 2.Nxe5. Nb7, 3.Qxd7
CT0236 1...Nce5(Nde5), 2.fxe5. Nxe5, 3.Qg3. Nxd3, 4.cxd3. Rxb3
人間対機械
1.
人間対コンピューターの対戦について、我々が興味を持つのは、「人間の直観や大局観」と「機械の計算速度や精度」が戦ったら、どちらが勝つか、だろう。できれば、上記の二つの優劣だけを比較したいのだ。しかし、実際の勝負の展開から受ける印象は、そうなってない。勝敗を分ける最大の要因は「心理面での人間の負担」である、としか思えないからである。1997年にカスパロフがディープ・ブルーに負けた有名な例を挙げよう。"人間代表"のカスパロフは2敗したが、ひとつは「敗勢でないのに、負けと思い込んで投了したケース」、もうひとつは「素人でも知ってる定跡を間違えたケース」、敗因をそう考えるのが妥当である。いずれも、普段のカスパロフならまず有り得ぬことで、彼の力が充分に発揮されていない対局だったのだ。いつもと異なる対局設定が心理的な負担を与えて、彼のミスを生んでしまったのである。機械が勝ったのは認めるにしても、これでは、我々の興味を満足させることはできない。専門家の多くも、あの対局をもって、機械が人間の直観や大局観をしのいだ、と考えてはいない。
では、どんな対局設定が望ましいのか、と考え始めたところで悩んでしまう。問題は心理的負担だけではない。たとえば健康状態。人間が対局不能の体調になったら不戦敗である、では、機械が故障したら?1996年のディープ・ブルーとカスパロフの第4局では、機械が故障したことがあって、その修復の間、人間はイライラしながら待たされたのだ。機械の不戦敗を議論すべきだったのではなかろうか。また、機械のCPUの数の解釈もわかりにくい。220個(諸説ある)のチップが並行して思考するディープブルーは「一台の機械」だったのだろうか。1秒に二億手を評価するというが(諸説ある)、実はチップ各々が同じ局面を読んでいる部分もあったのだ。人間に当てはめれば、あれは220人の棋士を集めたチームとカスパロフの対戦だったのではないか。やはり、我々の望んだ対局設定とは思えない。
データベースの位置づけもわからない。私が最初にFritz5.32を買ったとき、序盤定跡のデータを入れ忘れた。そしたら私が勝ってしまったのである。似た経験をした人は多いのではないか。Fritzが強いのは、序盤定跡のデータベースによるところが大きいと思う。本当に私たちが知りたい機械の強さは思考プログラムの強さであり、データベースの威力ではないはずなのだが。しかし、1997年の対決では、これがカスパロフの戦い方を大きく規制する重要要素になった。彼は自分の実力を発揮するよりも、データベース対策に神経を費やした。だから、あの棋譜はカスパロフらしくない。最近では基礎的な終盤のデータベースも完成し、機械が思考するのは中盤だけというという対局設定も可能なのだ。データを適当な量に抑えるべきだろう。
まだある。コンピュータを人間が助言できないようにしなければならない。ディープ・ブルーの悪手を棋士が修整していたのでは、とカスパロフ側は疑惑を抱いている。もし本当なら、機械チームは極めて強力になる。一般的には「助言は無かった」とされるが、私は疑っている。後のディープ・フリッツやジュニアとの対戦では疑惑の余地は完全に除去された。しかし、一局ごとのプログラム調整までも許されなくなってしまったのである。人間同士での試合では、対局方針の修整は重要な要素なのに。つまり今度は人間のほうが過度に有利になったのではないか。
要するに、「どちらが強いか」の議論が意味を持つためには、ある程度妥当な対局設定を考えないと、機械と人間の何を比較しているのか、わからなくなる、ということである。
2.
ディープ・ブルーと、後のディープ・フリッツそしてジュニアは、性能や計算方法がかなり異る機械だ、という印象で、思考の量や深さの比較を数字で出すことは、多分出来ない。たとえば、ディープ・ブルーの弟たちはCPU2個だけで動く。思考速度も一秒間に350万手を読む程度だ(諸説ある)。だが、20世紀と21世紀のCPUを同列に比べることがもうおかしい。また、何より棋譜だ。まず、最近の「人間対機械」の結果をいくつか並べるが、
2000年、ドルトムント大会にジュニア6が2勝2敗5分で六位。
2002年、クラムニク対ディープフリッツが2勝2敗4分。
2003年、カスパロフ対ディープジュニアが1勝1敗4分。
注目すべきは03年の第五局である。機械が序盤で、ものすごい捨て駒を敢行したのだ。そんなことは出来ない、というそれまでの「機械の棋風」の常識を覆した。この例だけでも、ディープ・ブルーとディープ・ジュニアでは、私は後者の方が強い、と思う。対局設定でも、カスパロフの納得できるものだったようだ
では人間と機械では?ある強豪の面白い意見をご紹介すると、「人間は最初から引分けを狙うことができる。だから、すくなくとも、人間は負けない」。無論、これは原則上の話しだが、一理ある気がする。しかし、機械の棋風は人間と異なる。昔からチェス・コンピュータの指し手は予想困難だったが、最近はますますわけがわからない(02年の第2局もそうだ)。チェスの名人が人間同士の対局で培ってきた形勢判断は役に立つのだろうか。私は否定的だ。しかし、それで人間が負けたからといって、人間が充分に力を発揮したうえで負けたとは考えにくい。機械に慣れる余裕があれば、人間が勝つかもしれないではないか。最近はある程度、そんな配慮もされるようになってきた。が、反面、わざわざ、私の大好きな棋士たちに、日頃の感覚を壊してまで、そんな訓練してほしくないのである。
そう、私の意見はここに行き着く。ここまで述べたように、人間と機械の強さの比較はとても難しく、とても答えは出せないだろう。私には人間対機械の催しに意味があるとは思えない。我々が人間性ではなく機械の時代に居ることは確かだ。その意味は、人間対機械の催しにではなく、別の場面で考えられるべきだ。
火薬の発明について、ヘーゲルが『歴史哲学講義』で興味深いことを述べている。「どんなに勇気のある貴族でも、遠くの片隅にいる卑劣漢の一発でたおされてしまう」、つまり、火薬は「階級の上下をなくす主要な手段となりました」(長谷川宏訳)。同じことがチェス・コンピューターに言えはしないか。特に通信戦やネット対戦の場合、どんなに優れた棋士でも、卑劣漢のワン・クリックが発見した一手でたおされてしまいかねない。戦争で火薬を使うことが仮に卑劣だったとしても、その流れは止められなかったろう。チェス・コンピューターも同じである。機械と人間のどちらが強いか、というより、グランドマスターと私の階級差の意味が、これからどうなっていくか、を考えるべきだろう。
2003/09/06