平成16年8月19日


法務省入国管理局長 ○○○○殿
法務省入国管理局 警備課長 ○○○○殿
法務省入国管理局 難民認定室長 ○○○○殿

ロバート・ジェームス・フィッシャー氏(米国籍)に関する申し入れ

社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 寺中 誠


拝啓 時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

 現在、東日本入国管理センターに収容されている米国籍難民申請者、ロバート・ジェームス・フィッシャー(Robert James Fischer)氏の難民申請につきまして、公平かつ慎重な審査を行うよう社団法人アムネスティ・インターナショナル日本は要請します。また、万が一、難民不認定処分となった場合はフィッシャー氏が裁判に訴える権利を尊重し、異議申出の却下とともに強制送還を執行することがないよう要請します。

 フィッシャー氏は平成16年7月に日本を出国しようとした際に無効な旅券を所持していたことを理由に拘束されたとのことですが、8月2日に難民申請を行い4日に正式受理されました。受理された翌日にはインタビューが行われるなど、異例ともいえるスピードで難民申請手続きが進行しています。フィッシャー氏担当弁護士の鈴木雅子氏によれば、出身国情報に十分にあたらないままに調査が行われたほか、申立人の許可を得ずに退去強制手続きの記録を読んでインタビューにあたるなど、公正性・中立性が十分に保障されていないと聞いています。2度目のインタビューも8月12日に東日本入国管理センターにて行われたそうですが、難民問題に精通していない担当官による形式的ともいえるインタビューであったと聞いております。

 アムネスティ・インターナショナルは、1951年難民条約を日本が批准した1981年より、日本における庇護希望者や難民に対する日本政府の対応に注意を払ってきました。しかし、残念ながら、十分な対応が行われているとは言い難いことは、これまでも度々申し入れてまいりました。1951年難民条約でも明らかなように、ある人が出身国以外の国から強制的に送り返されないかどうかは、その出身国でその人が直面するかもしれない危険の程度によって判断されるべきであって、出入国管理政策や外交政策に影響されるものであってはなりません。また、この判断には慎重さをつくすべきであり、その手続きも、申請者にとって公正な事情聴取を受ける権利を保障するものであるべきです。

 これまでのフィッシャー氏への対応を見る限り、一連の手続きが公正かつ慎重とは言えず、むしろ恣意的かつ政治的で日本の国際的な義務にかなっていないと判断せざるを得ません。冒頭で申し上げた通り、フィッシャー氏の難民申請を十分かつ慎重に審査し、公正な判断をされるよう重ねて要請いたします。

敬具