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パウル・クレーに寄す
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海原に凪の帆船所在なく八年越しのカレンダ−の絵
沈魚落雁羞月閉花沈思黙考は朽ち葉色のグロテスク
魚飛翔必要なものは不可視みるべからず拡手して待つ透明な午後
紅顔を万華に染めて咲き定め心さはさは天使胸騒ぎ
月光一盞盗飲の科とがはピエロ憑依理不尽極まりての破顔
散々に手垢塗れの詞も歌もからからの砂で洗へば真新まつさらになる
唾棄すべき未練は止せと言ひながら口惜し涙の後悔日記
中心は始点同時に終止点渦巻き状の花の華麗さ目の回る程
神話誕生真実の嘘を語る花々彼女等に酒酌ませ吾に幸くませ
「海ぞ坩堝るつぼ」原子ら均し並に撹拌され粒立つ就中魚は
風ならば凡て許さむ裏切もまして薔薇の風とならば失神も辞さじ
窈窕たをやかなあの女身の裡にさへ熱き血潮の迸ほとばしるかと思ふ終日
植物の緑に透けし葉の恨み知れば観客蒼ざめる他無し
回り道が最短コ−スSt.Kは夜明けまでに辿り着くだらうかR荘に
紅旗はためき黄旗ときめく冒険者の船は山に登り月へ星へ向かふ
主題は常に欄外に書かれ周辺は存在を強調しつつ拡散す
暖色のオ−ラを纏まとつた楡木立ち夢はいつも静謐な公園を巡る
単眼ひとつめの鬼二本の鉄棒かなぼう見知らぬゴング碌でなしのハ−ドロック
異口同音の安らぎは点描主義と構成主義の超政略的結婚
定着液紛失に因る残像の美 形骸は追はれて多重世界にワ−プ
青灰色はいいろの夕暮れの階調風ポエジ−立ち木は孤独でなく孤高
時として残酷は素敵に美しく囀さへづり機械の廻し手は君自身
時は春花も小鳥も人も魚も常春とこはるの世で退行的快楽に酔ふ
分割はより不可解に分くる技本末転倒の田園交響楽
見ること即ち奪ふこと深海では盤上の魚頑強かたくなに愛を拒み
ダビデの星椅子櫛眼鏡鮭ヨ−ヨ−石膏で塗り潰す少年期の絵本世界
サンボ通信第十号(1988/09/20)所収。パウル・クレーの愛好家は多いと思いますが、Morris.もご多分にもれず、子供の頃から彼の世界には親しみを感じていました。 冒頭の歌にあるとおり、クレーのカレンダーを手に入れ「海と船」(たしか8月)が気に入って、破ることができず、そのまま8年間壁にかけたままになっていたのも事実です。 クレーの絵そのものも詩的ですが、その作品名が詩のタイトルみたいでもあります。そういうことから、クレーの画集の中から、好きな絵とタイトルを借りて、彼へのオマージュとしての歌集を試みたのですが、これは結果的にMorris.の完敗だったようです。イメージとタイトルに圧倒されて、説明的すぎたり、詰め込み過ぎたりで、よれよれになってしまっています。 今さらこういうのをお見せすることは、恥の上塗り以外の何物でもありませんが、サンボ通信80年代の歌集で、これ一つだけ省くというのも気がひけるので、公開することにしました。 発行時は表紙に引用した線画「忘れっぽい天使」だけで満足していました。歌集タイトルはクレーの職業にひっかけています(^_^;) 歌はともかく、クレーの作品は素晴らしいので、是非画集をご覧ください。
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