行いを正すサタンの話

 まったくもって、妙な夢を見たものだ。
 夢の中の私は、くたびれた白いシャツに長めの黒いトレンチ・コートを着た男の姿をしている。
 まるで映画かゲームの主人公のように、困難に立ち向かいながら「人生」という物語を進めていく
 その途中、私は(どういう条件でかはわからないが)サタンと交信できるスキルを手に入れた。
 そうそう何度も使える力ではないが、紳士的に接するサタンは親切で魅力があり、博識で、いつまでも話をしていたい欲求に駆られた。そして、サタンは私に「未来へのヒント」をくれる心強い味方でもあった。
 だが、不思議なことに、サタンは私が間違った行いをすると姿を消してしまう。
 うそをついたり、ほんの些細な悪行でさえ見逃すと、二度とコンタクトが取れなくなってしまうのだ。私は何度も何度も人生をリプレイして、サタンを逃さぬように正しい行いだけをして生きていた。
 何度目かの人生で、私はぽつりとつぶやいた。
「正しい行いとはなんであろうか――」

 そこで、目が覚めた。