Chigorin-Steinitz,1892,Havana


18...Nh6-f5まで
c 棋譜再現 s

世界選手権が無い当時の通信戦最強者としても認められている。
 Botvinnikにはロシア・ソビエト派のチェスを論じた有名なエッセイがあるが、この派の始祖として彼が挙げているのがChigorinである。いくつか図を掲げて感覚や独創性を称えており、その一つが上の局面だ。1892年のマッチの第一局。次の一手はなかなか当たらないと思う。19.Nxf7!だ。Botvinnikがこの手に注目したのには理由がある。この捨て駒は確かに効果的なのだが、それを具体的な手順で証明するのは難しい。つまり、読みよりは優れた陣形把握の産物であり、そこにChigorinの現代的な感覚がうかがえる、というわけである。
 もう一点、Chigorinの並外れた才能を示すエピソードを挙げておこう。彼がチェスを覚えたのは16歳の時で、しかも、その後7年間はこのゲームに興味を持たなかったというのだ。神童よりすごい、と私は思う。