Marco-Maroczy,1899,Vienna
32.Kf2まで
m 棋譜再現 m
黒の方が形が良い、とはわかるだろう。しかし、ここから白の投了まで47手もかかるのである。Maroczyは白が身動きできないことを知っていて、ゆっくり仕上げに取りかかる。相手はじっと耐えるだけだ。が、実際はところどころ、はかない抵抗を試みつつ白王も退いている。静かなようで、最後に一手違いのきわどさが閃くのだ。そこに秘めたる官能性がある。私はこの一局しかMaroczyを知らないのに、じゅうぶん人柄を知った気になってしまう。
MaroczyにはLaskerに挑戦するチャンスがあった。1906年のことである。契約書のサインまで交わしていた。しかし、対局地の政情が不安定になり、すべて流れてしまった。ややこしい交渉が続いたと想像されるが、現代のチェス棋界と異なり、MaroczyとLaskerの友情は変わらなかったという。