Samisch-Nimzowitsch,1923,Copenhagen


25...h6まで
s 棋譜再現 n

これぞ、かの"Immortal Zugzwang Game"、しばりの美学。
 たぶんさりげなく、でも、わりと気取って、彼は端っこのポーンをつまみ、一つだけ押した、それが25...h6。おそらく、相手は一瞬意外な表情を浮かべ、次第に深刻に考え始め、最後はあきれてしまった。動かして良い駒が一つも無いのである。かくて、史上最も驚嘆すべき投了図が焼き上がった。
 Nimzowitschは煙草が嫌いだった。有名なエピソードを。性格だけでなく棋風までわかる。1927年のニューヨーク大会。対戦相手のVidmarがついうっかり卓上に煙草入れを出してしまった。禁煙の大会だったのである。これを見るや、Nimzowitschは審判長のMaroczyのところまで猛ダッシュ、「許せんぞ!」。鷹揚なMaroczyは答えた、「でも、あの人、吸ってはいませんね」。これでNimzoはぶち切れた、以下、怒りの三段論法。「あんた棋士だろ、わかっとるはずだ!」、そして、「狙いを持った局面の方が、狙いの実現した局面より、ずっと脅威が大きい」、ゆえに、「けむを出してる煙草より、"出しそうな煙草"の方が怖いんだ!」。Q.E.D.