Schlechter-Marco,1904,MonteCarlo


13.Nf6-h5まで
s 棋譜再現 m

『ドローへの愛』の主人公のモデルは彼である。
 1907年のOstend大会。SchlechterはTarraschとの対局で優勢になった。そのとき、Tarraschが放った勝負手は、医者にあるまじきというか、医者らしいというか、、、。
 「う」「どうしました? Tarraschさん」「具合がちょっと」「まあ」「す、すまんが、対局を続けると危険のようだ」「そんなにお悪いので?」「ああ、どうだろう、ここで引き分けにしてはくれまいか」。Schlechterの答えは「もちろんです、お大事になさいませ」。そういう人なのだ。大会が終わってみると、優勝したのはこの重病人。Schlechterは半点差の二位だった。
 Laskerとのマッチの最終戦、あの敗局こそSchlechterの最高傑作かもしれない。その折の有名なエピソードはいずれ触れることもあるだろう。ここではMarcoとの一局を採り上げたい。図が黒の敗着。それを突く白のコンビネーションは珍しいものではない。しかし、その先、無理なく事を運んでとどめを刺す感じが良いのだ。事典でこれを紹介したDivinskyは言う、「Schlechterの勝局は彼自身の如く紳士的に穏やかだ」。