Spielman-Rubinstein,1909,St.Petersburg


40.Rxc2まで
s 棋譜再現 r

終盤、特にルック・エンディングの権威だった。
 チェス棋士と数学者には奇人が多いことになっている。棋譜をいくつか並べた程度で私が抱いていたRubinstein像は、哲学者カントの如く同じ時間に同じルートを散歩する「堅物」だった。それはそれで変人かもしれぬが、Rubinsteinの残したエピソードはもっと痛ましい感じがする。たとえば、対局中の頭にはハエが止まっていて、それが思考の邪魔をする。彼はそう信じていた。また、握手は病原菌をうつす恐ろしい挨拶だ。小説『ドローへの愛』には、手袋をしたまま手を差し出す棋士が登場するが、モデルが誰かは明らかだろう。
 図は敗者さえもが「ルック・エンディングのあらゆる本に載るだろう」と称えた一局。白のポーンがバラバラだから、黒が負けることは無さそうだ。といって、白のaポーンが強力そうだから、黒が勝つことも無さそうだ。しかし、Rubinsteinは駒得をあせらず、確実に好位置を占め、ここから35手をかけて勝利をもぎ取るのである。白も黒も完璧に指せば引き分けだったらしいが、Spielmanの小さな疑問手を責める解説者は一人も居ない。