紹介棋譜 別ウィンドウにて。
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早指し世界選手権、コステニュクのインタヴュー、詩、本、CM。

03/11/26 
 労働組合の仕事で理事と話していたら、あんまり馬鹿馬鹿しくって一人で笑い通しだった。美々卯でうどんをすすりながら深く反省。明らかにモンティパイソンの見すぎである。
 若島正のページが8/23の日記にVuckevichという人のスピーチを紹介している。冒頭は、「チェスは消滅するか、もっと複雑なものへと進化することになるでしょう。進化を推進する力は、私たちの子孫が持っている、増大した知識です。彼らの生活習慣は異なりますし、主な教育機器はコンピュータで、私たちよりもすばやくそしてうまく生きています」。最後まで読んでいただきたいが、若島氏いわく「これはほとんど感動的な言葉である」。この予言が当たりそうだから感動する、というのではない。
03/11/25 
 いやーな予感がしてChessBaseのページのカレンダーを見たのだが、案の定、年内はもう高額賞金の大会が無さそうだ。これは棋士の生活のみならず、本欄の存続にも関わる危機である。本来は試合結果のメモが主で、ムダ話はつなぎのつもりなのに。ちなみに、武者野勝巳の掲示板で教わったのだが、こないだのカスパロフは17万5千ドルをもらったとか。勝てば20万ドルだった。コンピュータに関する話題が若いファンを熱狂させるのは確かだから、正当な報酬だと思う。ただどうだろう、私のようにこの時勢についてゆけない古いファンも多いのではないか。
03/11/24 
 畏友よりメール。将棋NHK杯で中井広恵が青野照市に勝ったのだ。公式戦で女流がA級九段を破ったのは初めてだろう。林葉直子に歯が立たなかった頃から彼女を見ている私としては、「継続は力だなあ」としみじみ。林葉は一時チェスを始めたと聞いたが、続かなかったんだろうな。私は彼女の将棋が好きだった。女モロゼビッチだった。
 私はこの一戦を見損なった。知人に誘われてバトントワリングの公演なんて見に行っていたのだ。いや、これも素晴らしかった。世界大会では日本が12年間ずっと連覇してるのだとか。世界チャンピオンが五人も揃って華麗な演技。稲垣庄司・橘千春コンビのラベル「ボレロ」とかすごかった。高橋典子さん!応援します。シルク・ド・ソレイユとも契約したそうだ。
03/11/23 
 なんだ女の準チャンか、くらいに思ってたコステニュクの魅力を教えてくれたのも、実は畏友である。でも今は私だって"How I Became Grandmaster at Age 14"を持っている。素敵な入門書だ。5歳の棋譜が載っていて、白の彼女は1.e4. e5, 2.Qh5!。無論、狙いはこころざし高くBc4からQxf7#。で、コメントがいい。要約すると、「いきなりルイ・ロペスなんて教え込まれたら、"2.Qh5は楽しいな"ってことも知らずに終わってしまうわ」。
 自分の説教に酔いしれる教え魔はどんな分野にも多いが、生徒を楽しくできる教師はごくまれである。
03/11/22
 コマーシャルと言ったら、傑作はペプシにとどめを刺す。鑑賞の手順は、@「2001年宇宙の旅」を観る。AQuickTimeをダウンロードする。Bここをクリックする。以上です。折も折、旬の話題と言えましょう。一分間の大作です。いま試したら、見られるまで5分くらいかかりました。でも数秒で済む場合もあるなあ。
03/11/21
 どうやって探してくるのか、コステニュクが出演してるコマーシャルを畏友が教えてくれた。声は出してないのだけど、私のサーシャが動くのだ。30秒。
03/11/20 紹介棋譜参照
 「カスパロフが機械とまた戦う」と聞いて私が思い浮かべたのは、我ながらひどいことに、ジェシー・オーエンスが機関車や馬と走らされる姿だった。見るに忍びないくらいの気持ちでいて、畏友が話題を振ってくれても私の返事は「無視だ」。ところが始まってみると、ChessTodayなんかも詳しく取り上げており、自分の不見識にようやく気づいた次第。とにかく終了。1勝1敗2分だった。
 わかったのは、カスパロフのポカ癖がますますハッキリしてきたこと。第二局はそれで負けた。来年の王座統一戦の相手が誰になるか楽しみである。名局は無かったがカスパロフが勝った第3局を紹介棋譜に。人間にはあまり通用しない序盤で勝った。6.c5は人間界ではとても珍しく、勝率も白が悪いくらいだ。
03/11/19
 畏友が私に隠れて楽しんでいたのが、Robert Briegerの"The Joy of Mate" (Thinkers Pr, 1985)。簡単な手筋を並べた問題集らしい。Amazonで探すとたったの218円だ。何かのついでに買うにはいいだろう。もっとも、在庫切れだったから他の書店で見つけたい。畏友は6ドルくらいで買ったとか。前にも軽いプロブレム集を彼からもらったことがあったが、しばらく私の外出には欠かせぬ愛読書になった。きっとこの本も良問が揃ってると思う。
03/11/18
 タラッシュの書いた1914年のサンクト・ペテルブルグ大会の本。前から欲しくて、でも微妙に高くて、Amazonには無いし、悩んでいたのだが、とうとう買った。で、今はご機嫌です。彼の本では"300 Games"や"The Game of Chess"が有名だけど、それよりもっと私は好きだなあ。言葉による棋譜解説が中心だから、一世を風靡したタラッシュ理論がわかりやすい。ニムゾビッチの新戦法に文句言ってる記述も時代を感じさせる。この本を使って「64 Shots」欄のLaskerとTarraschの序盤部分をちょっとだけ書き足した。彼の人柄がわかると思う。私が買ったのはCaissa版でBrandreth編集。注が非常に詳しくて、古典とはこうやって復刊されるべきだ、という見本でもある。
03/11/17
 四位も。ようやく持ってる本が出てくるので。Nunn、Understanding Chess Move by Move(Gambit、2001.2)。二人の方が詳細な評を寄せている。ナンの読者はナンのように、とことん書き込むなあ。一手一手に解説を付けた本にはChernevの好著がすでにあるが、両者の違いは大きい。初心者にわかりやすく説明するため一手ごとに解説するチェルネフ。対してナンのは、初心者がわからなくなってしまうまで解説し抜いた本だ。
 前はChernevのCapablanca's Best Chess Endings (Dover)が長く上位にいた記憶があって、カパ・ファンとしては嬉しかったのだが、すげー下位に落ちてしまったようだ。500位まで調べたのに見つからない。彼のシンプルなチェスは初心者には参考になると思うが。そういえば、むかし「Chess Beat」という最高の日本語サイトがあって、そこで"My Chess Career"の翻訳が連載されていた。二年くらいで途絶えたのが残念である。
 私が採り上げたアンデルセン本は先週の266位から128位へ。本欄の影響ならうれしい。ちなみに私のページは四年くらいは粘って続けたい。
03/11/16
 何年か経つとこんな記録も面白いから残しておこう。Amazonの洋書Chess書籍部門の今日の売り上げベスト3。
 一位。Jeremy Silman、The Amateur's Mind(Scb Distributors、1998、2ed)。知らないなあ。渡辺暁が好意的な評価をつけている。素人の思考に沿いながら、その陥りやすい考え違いを指摘してくれる、どうもそんな本らしい。
 二位。Chris Baker、A Dynamic Black Opening Repertoire(Batsford、2004)。予約受付中。Bakerも著書は多そうだがまったく知らない。
 三位。Garry Kasparov on My Great Predecessors(Everyman、2003)。これは例のやつの第二巻。エイベからタルまでを採り上げている。もう少しで発売、待ち遠しい。
03/11/15
 NHK土曜特集「脳の力」を見た。今年の全日本チェス選手権の優勝者の一人、塩見亮が出演したのだ。記憶力に関する番組で、世界選手権の模様などが面白かった。名棋士の度外れた記憶力にはいろんなエピソードがある。私が好きなのはタル坊やのだ。夕餉のひととき、父が軽く訊ねる、「ミーシャ、今日は学校で何を習った?」。天才児は「あのね」以下、先生が言ったことをそのまま語りだしたという。これを読んだ本にはたしかに「word by word」とあった。
03/11/14
 今日は神戸で遊んだNo Chess Day。大好きな観音屋のデンマーク風チーズケーキ、古屋の餃子、で、最後、帰りに寄ったJamJamというジャズ喫茶が素晴らしかった。「いまどきジャズ喫茶?」と笑うなかれ。一見貧相なビルの地下室に思いっきり広々とした空間をとって、そう、テニスコート2面か3面くらいに感じたな、ゆったりと、椅子もふかふか、数時間くつろいでしまいました。店内の雰囲気、コーヒー、選曲、音質、いずれもマスターのセンスの良さがうかがえます。ホームページあり。
03/11/13 紹介棋譜参照
 NewInChessは最後のページをアンケートに近い簡単なインタヴューに充てている。最新号はコステニク。初めに「好きな色は?」と訊かれて「赤。それは愛の色ですから」。うーん。『虐げられた人びと 』やロダンが好き、ってのも宮内庁に指示されたような答えだが、まあそれが彼女らしい気もする。好きな棋士はアリョーヒン。影響を受けた本として、彼の『ニューヨーク大会;1924』なんかを挙げてる。
 自分のベストゲームには諸宸との第一局と答えている。私の考える彼女はもっと直観的な棋風なんですが、せっかくだからこれを紹介棋譜に。
03/11/12
 今日は会議、会議、そして会議。いま帰ったところです。本欄の連続更新記録があやうく途絶えるところでした。おとといのアンデルセンの解答を。1.Qa5+. Kxa5, 2.Ra4+. bxa4, 3.b4#まで。詰将棋の感覚ですよね。
03/11/11
 私のコステニュクは詩も書けるのだ。彼女のホームページにいくつか載っている。短くてわかりやすいのを訳してみよう。「秋」を。誤訳してるでしょうが、「意訳なんだ」と思ってください。
  自然の女神は静寂に心うたれたかのように、
  その声がしずまって、言葉の届かぬ夢の国に沈んでいった。
  ただ、細く若く、そしてこずるいポプラだけが
  顔あからめたナナカマドに何事かささやいている。
  私の足元にはカエデの葉が散り広がって、
  不思議の秋のカーペット。
  そして木々は私をいざなうようです、
  この大いなる美はすごいでしょうと。
 1999年8月27日の作とのこと。神秘的な領域への志向みたいなものは、彼女に強いのかなあ。棋風はたしかに計算高いとはいえませんね。私も自信があればもっと訳すんですが。
03/11/10
 若い頃はプロブレム作家として知られていたアンデルセン。昨日ご紹介した本には、彼の作品が80題も収録されているのがうれしい。簡単な作品で、しかもいかにも十九世紀前半、ロイド以前のプロブレムという趣のあるのをご覧にいれたいです。左の図がそれ。3手詰み。答えは後日。
 一昨日述べたように、ChessTodayの記事をどこまで「横流し」していいのか、悩むところで、私は漠然と、皆さんが「もっと読みたいなあ、ChessTodayを講読しようかなあ」と思うようなところまで、に決めてます。が、世の中にはこれをプリントアウトして道で売ってる人もいるんですね。私みたいな人間には思いもよらぬ発想でした。ChessTodayは苦笑まじりに伝えてます、「こんなことされちゃ、正確な購読者数がわかんないよ」。
03/11/09
 いま読んでいるのは、Pickardという人が編集した"The Chess Games of Adolph Anderssen"。これが面白い。全897局、とても並べきれないから、局面図のところだけを飛ばし読みするのだが、さすがアンデルセン。全349ページ、一冊が妙手を詰め込んでふくらんでる感じだ。たとえば左の図は1851年のロンドン大会から、白アンデルセン、黒スタントンである。次の一手は28.Nd4。もし28...exd4なら29.e5、で、黒ナイトが逃げれば30.e6である。まだ読みきってないが、たぶんこの本、ずっとこの調子だろう。ファインが古今の名局集を編む際、「アンデルセンだけで一冊全部使ってもいいくらい」と言ったのは誇張では無かった。明日も、もう一例。
03/11/08
 ChessTodayが会議について詳しく伝えてくれてます。そのまんま書き写すのは気が引けるので止めますが、財政難はますます深刻で、イリュムジノフの懐もあてにできなくなってる様子。オリンピアードの参加費は、従来の値段を知りませんが、選手一人あたま一日につき25ドルになるとか。また、世界選手権に関しては、ベスト4からはもう少し重みのある試合形式になるかもしれない、とのこと。
03/11/07
 FIDEが会議を招集していて、無論、「世界選手権をどうするか」が重要な議題だ。ようやく内容が伝わってきたが、どうもはっきりしない。場所も時期も未定で諸説あるが、例のごとく大量の棋士によって争われる。そこで選ばれた世界選手権者は引き続き、カスパロフとのマッチに臨む。これはアテネ・オリンピックに合わせて行われるかもしれない。
 クラムニクとレコは黙殺され、干された形になった。まあ、03/10/07にちらっと触れたが、クラムの言動からして仕方ない。対して、失冠したままのカスパロフが優遇された形だ。八月のキャンセル騒動に関して、大人しくFIDEの出方を見る、という態度を取ったのが正解だったのだろう。
 ついでに。欧州選手権の組合闘争から始まったACP (The Association of Chess Professionals)はなかなか有力なメンバーをそろえて113人、ほとんどがGMやWGMだ。もっと増えるだろう。クラムニクやポノマリョフもいるが、アナンド、レコ、イワンチュクなどはまだだ。
03/11/06
 三日に載せた「トルコ人」の写真について、畏友よりメール。実際の「トルコ人」はたいてい黒番を持ち、しかもPawn & Move のハンデを相手に与えるのが普通だったとか。ちなみにこの写真、カスパロフとディープルーの対戦を撮影した映画「Game Over」からのものだ。題材は六年前だが映画は新作である。
 「トルコ人」に関して畏友が「資料豊富で良いかも」と言うのはLevitt著の"The Turk"(McFarland, 2000)。
03/11/05
 写真で見るティンズレイは言い出したら引きそうにない頑固爺だ。彼とChinookのマッチ、まずは1992年。米英ふたつのチェッカー協会は対局を禁じてしまった。で、ティンズレイは両協会で得た王座を引き払い、機械と戦う道を選ぶのである。結果は4勝2敗33分、老雄の勝利に終わった。それでも、この2敗というのはチェッカー界に衝撃を与えたに違いない。
 Chinook陣は再戦を望み、ティンズレイもそれに応じた。1994年、彼は、さらなる重装備を固めた機械と戦うことに。最初の6戦はまったくの互角で、すべて引き分け。が、ここでティンズレイが崩れる。体調が悪くなったのだ。やむなく試合放棄。かくて歴史では「人間が負けた」ことになった。翌年、ティンズレイは亡くなる。ガンだった。
 Chinookのスタッフとティンズレイの間には友情が成立していたようで、これが救いだ。開発者のJonathan Schaeffer が"One Jump Ahead"という本を書いている(Springer,1997)。書評も悪くない感じだから、興味のある方はぜひ。
03/11/04
 ChessBaseのページで最近おもしろかった記事といえば、Marion Tinsley (1927-95)である。ティンズレイは史上最強のチェッカー棋士だ。1950年以降、参加した大会に片っ端から優勝し、ライバル達には同点優勝さえ許してない。1991年まで5局しか負けたことが無く、とうとう全盛期のまんま寿命が尽きてしまった。人々は彼と決戦するのを避け、最初からドローを狙うしか無かったという。ティンズレイもこれにうんざりし、晩年は引退同然だったようだ。
 だがしかーし! この超爺は飢えていた。新たな敵に燃えたのだ。それはChinook。誰って、これはコンピュータである。そして、ついにティンズレイはこの機械に破れ去るのだ。と、ある程度は私も知っていたが、話はそう単純ではなかった。
03/11/03
 とうとう一ヶ月やすまず毎日更新してしまった。いい大人が、なんかみっともない気もしてくる。しかし、人間ふしぎなもんで、道楽に熱中できてる方が仕事は却って快調だ。ただ、夜更かしの観戦のおかげで、会議の居眠りは甚だしい。許されよ。
 八月に話題にした「トルコ人」の写真をChessBaseのページからもらってきた。毎度の無断転載だが、我が同胞の役に立つ可能性は大きいと思う。許されよ。ところで相変わらず畏友の御世話になってしまうが、彼によれば、「トルコ人」とナポレオンは実際に対局したのか、どうも疑わしいらしい。これはポーについても言える。
03/11/02
 大差の対戦成績で私のお気に入りはカルポフのものだ。対戦相手は人ではなく定跡で、シシリアンのドラゴン。公式戦で17勝0敗2分である。この先どんなにカルポフが弱くなっても、この全勝記録だけは残ってほしい。
03/11/01 紹介棋譜参照
 早指し戦は面白い割りに感動が薄い。でもせっかく見続けていたのだから紹介棋譜を選んでおこう。アナンドが優勝を決めたのと、ポルガーがアナンドに勝ったやつを。ポルガーといえば、ICCのギャラリーのチャットで知ったのだが、クラムニクにぜんぜん勝てないらしい。私のデータで調べたら、たしかに1993年の初顔以来1998年まで18敗で勝ちは無し。その後はどうにか持ちこたえていたのだが、今度の大会で0勝19敗14分に。本当は20連敗するところだった。一時はICCやChessToday、ついでに私までそう伝えた。が、実は最後にクラムはとどめを刺すのに興味を失ったらしく、ドローを提案していたのだ。シロフの対カスパロフ16連敗の上があったとは。
03/10/31
 クラムニクは順当な感じでグリシュクを倒した。アナンド対スヴィドレルは、延長までもつれてアナンドの勝ち。かくて決勝は申し分の無い顔合わせとなった。対戦成績はクラムの13勝12敗73分。最近は3連勝。ただし早指しとなるとアナンド乗りも多いだろう。
 さて第一局。白クラムニクが選んだのは何とも懐かしい80年代前半のスヘヴェニンゲン。a4を突いて、クィーンをe1からg3に出すやつ。でもあっという間にドロー。
 二局目は打って変わって、21世紀のシュベシニコフ。これは白アナンドがしっかり勝って優勝。ちょっと悔しいが、おめでとう。どこで勝敗が分かれたか、私にはわからない。
03/10/30
 スヴィドレルがトパロフを破った。寝付かれなかった私は払暁のこの試合までも見てしまったが、さすがに仕事がつらかった。今も眠い。それでもクラムニクの準決勝は見ておきたい。見たらすぐ寝てしまおう。で、今日はここまで。
 月に一度はムダ話を。この一年で見た映画から一本を選ぶ。「TUVALU」だなあ。監督はファイト・ヘルマー、1999年、ドイツ。これが初監督作品というからたまげる。セピア調の画面で、台詞もほとんど無く、実際、字幕が無い。おもちゃ箱のガラクタをかき混ぜたような奇怪な舞台設定で、さすが「カリガリ博士」の国の映画だが、不気味なところはまったく無い。不思議の国のファンタジーである。何より、女優のチュルパン・ハマートヴァが最高に可愛いのだ。敵か味方か、童女か不良娘か、わけわかんない気まぐれな存在を、あどけない顔で演じてくれる。
03/10/29
 二日前のクイズの答えは「黒」。予選落ちが決まっていても、粘りに粘ったカルポフには敬服。
 バクローとグリシュクのダークホース対決。初戦は乱戦、二戦は膠着状態、いずれもドロー。持ち時間3分で一手3秒追加の延長戦へ。初めて見たが速い!私がぽかーんとしてる間にグリシュクが連勝で決めた。
 ギャラリーの馬鹿話で面白かったのを一つ。事実かもしれない。1962年、キュラソーでの世界王座挑戦者決定大会でのこと。フィッシャーが「おうおう、おめーらロシア人なんざ、おいらがひとまとめに片付けてやらあ」。これに困惑したケレスは「でもねえ、ゲレルはウクライナ人だし、タルはラトビア人だし、ペトロジアンはアルメニア人だし、それに私だってエストニア人なのさ」。が、こんなことでひるむフィッシャーではなかった「気にすんな、おまいらがどっから来ようと、おいらにはみんなロシア人さ」。
03/10/28
 グループAはなんとゲルファンドが予選落ち。同点のトパロフと再試合になって、それに負けてしまったのだ。順当の勝ち上がりはクラムニクとポノマリョフ。頑張ったのがバクロー。
 準々決勝、まずはクラムニク対ポルガー。前者の勝ち。まったく危なげ無し。アナンドもポノマリョフを下して準決勝進出。こちらも危なげ無し。
03/10/27
 ICCのギャラリーには常連の発言者というのが居る。その中の「daisuke」という人はなかなかしっかりしたことを言うのだが、名前からして日本人ではなかろうか。生真面目な英語だから、かえって、日本国内の日本人に思える。
 グループBは全7Rが終了。決勝進出は好調のスヴィドレルの他、グリシュクとポルガー。アナンドは危なかった。6Rで白番ながら、黒スヴィドレルにあっさりドロー。なぜ?と思ってると、最終戦が最下位のカルポフ戦だった。勝つ自信があったんだろう。が、それが大熱戦に。シロフもレコも追い付いてきて、アナンドはドローなら、彼らとの生き残りをかけた再試合になるところだった。
 図はその問題の一戦から。52.Ke6に52...b4まで。さて、勝った方がアナンドです、白?黒? Web中継はこのあたりで不通になってしまったんですが、ICCのギャラリーにグランド・マスターが居て、彼はアナンド有利と述べてました。98手で決着。
03/10/26
 早指し世界選手権。AとB、二つのグループに分かれて8人づつが戦い、上位4人が決勝に進む。Aの3Rを観戦。トパロフの連勝をクラムニクが止めて混戦だ。
 Bは3Rと4Rを観戦。アナンドが鋭いマーシャル・アタックをレコにお見舞いしたが、ポルガーに強烈な平手打ちを食らってしまう。彼のキングが吹っ飛ばされてb1からK翼までよろめく様は壮観だった。不調のレコもシロフ戦で意地を見せる。c7に居たクィーンが連続8手で、b8、e8、a4、a2、b1、f5、h3、h2に動く大活躍。シロフは予選落ちの危機。
03/10/25
 早指し世界選手権が始まった。カスパロフとモロゼビッチが居ないだけの、最高の顔ぶれ。持ち時間は25分で、一手につき10秒加算。初日、仕事を早目に切り上げて帰宅し、クラムニク対バレーエフに期待したのだけど、あっさりと駒を交換、ドロー。他もこれという好局は無し。レコの不調がはっきりしていたのが気になる。2Rは見なかった。
03/10/24
 ChessCafeで本を注文したら4日で届いてしまった。AmazonはもちろんJCAよりも速い?買ったのはカスパリヤンのスタディ全集(Russell Enterprises, 1997)。Roycroftという人の編集。良く出来てると思う。局面の分類が精緻で、また、他の作家に類似作があればそれも載せてくれている。もう一冊、"Damaged Book"からも試しに選んだ。すごく安い。しかもきれいだ。これは傷物というよりは在庫処分の意味で安くなったのだろう。内容はしょうもない本だった。
03/10/23
 更新したばかりの「64Shots」を見てくれた畏友よりメール。ピルスベリーの「死因はホントは梅毒だったようです」。へえ。私もピルスベリーの梅毒を疑ったことがありますが、彼の症状は「原因不明の激しい頭痛」と聞いてました。なら、梅毒と関係ないだろ、と勝手に思ってたんです。でも、さっき調べたら、頭痛は梅毒の症状なんですね。さっそく訂正。そういえば、ニーチェやシューマンの精神を崩壊させたのも梅毒でした。「梅毒だけが理由なのか」と考えだすと難しいですが、「それだけだ」と答えるのを私は好みます。
03/10/22
 畏友に教わったのだが、03/06/29にご紹介したギルバート・コレクションの展覧会には、ヨーコ・オノの作った白一色だけのチェス・セットも出ていた。彼女はそんなのを何度か作ってるようで、敵味方に分かれることの無い平和のチェス、あるいは、どちらも白駒で紛らわしいながらも相手を信頼して指し続けるチェス、そんなコンセプト。彼女はチェスが好きらしい。では、夫ジョン・レノンは?家の資料をさらってみたら、ほんの数秒、夫婦でチェスを指している映像を見つけた。ジョンが先手で1.e4まで。映画「イマジン」からのワンシーンかもしれない。畏友に問い合わせたら、さすがの彼も記憶が薄れていた。

戎棋夷説