紹介棋譜 別ウィンドウにて。
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将棋の先手勝率、サンルイFIDE世界選手権トパロフ優勝。

05/10/18
 いつからだろう、NewInChessを日本のアマゾンで注文できるようになっている。四年前の6号と今年の5号、どちらも表紙がトパロフの顔であるが、前者の生白いひ弱さと、後者の自信にあふれた表情が対照的だ。何が彼を変えたのか。ところで、今年の6号を昨日になって初めて封を開けたが、誌面がカラー化していて驚いた。
 NewInChess社の本も注文できるので、カールセンの伝記(早っ)とか何冊か買った。第二回のサムバ杯が二年前と同じスカナボアで開催されており、カールセンが出場している。意欲的なチェスを見せてくれており、観戦が楽しいが、なかなか勝ちにつながらない。試練の年だ。明日は休みます。
05/10/17 紹介棋譜参照
 Informant92の話をしておきます。前巻の好局の第一位に選ばれたのはレコがクラムニクをマーシャルで倒したマッチの第八局。ドルトムントのアナンド対ルブレフスキーが四位というのは可哀想。三位はヴォロキチンの猛攻。昨年の彼を無視したのは私の大失態でした。一番驚いたのが五位で、聞いた事も無いKadziolka。1986年生まれのポーランド女性で黒番、図からRxc2+ですよ。ChessToday配信のデータベースは白Qxc2を推奨してますが実戦はBxc2、これに対し、黒はf8のルックまでc8に運んで再度のRxc2+。投了した時、白王はh4でした。これと三位を紹介棋譜に。
 巻末の棋士特集はヒュブナーです。彼は『完全チェス読本』で史上47位の評価を受けた偉大な棋士。でも、実はかつてInformantの好局ベスト10に選ばれた事が無い。地味な棋風なんですね。それだけに本巻は彼を理解するための貴重な資料になりました。
05/10/16
 大好きな映画「青い春」の監督豊田利晃は奨励会に在籍していたことがある。新作「空中庭園」は前評判も良く、楽しみにしていた。ところが、豊田が覚醒剤所持で逮捕されてしまい、上映をやめた映画館も出ている。しかし、大阪ではシネ・ヌーヴォが急遽この作品を引き受けてくれることになった。ありがたい。
 今月みた映画は「チャーリーとチョコレート工場」。ジョニー・デップのイッちゃった様が面白く、これと「シザーハンズ」と「ニックオブタイム」がぜんぶ同じ役者の顔だとは思えない。
05/10/15
 サンルイ最終ラウンド。勝負が着いたのはレコ対カシムジャノフだけで前者の勝ち。トパロフは後半戦すべてをドローで優勝したことになる。そこがちょっと物足りなく、紹介棋譜も少なくなってしまったが、ChessTodayは最高の賛辞を贈った。「長年たくさんの大会を見てきたが、これが最高である。大会を開催し演出したFIDEも高い評価を受けるに相応しい。無論、参加棋士達も敢闘精神と創造力あるチェスによって称賛されるに違いない」。
 公式サイトやChessBaseでショートが詳しいレポートを送ってくれ、世界のファンを楽しませた。日本のファンにはロレン氏の徹夜のブログがありがたかった。氏の総評は、「Topalovは強かった。有利不利どちらの場合でも、エンドゲームでの強さが印象的だった」。
 明日からどうなるんだろう。FIDEには昨年までの貧弱な世界選手権に戻ってほしくない。イリュムジノフ会長はカルムイキヤの大統領を辞めてチェスの会長を続ける意向であるが、これが良い報せかどうかは判断しかねる。クラムニクとトパロフのマッチの実現可能性もわからない。いまのところ会長の発言は一言で言うと「やりたければやるがよい」。付記これはかなり不正確な要約でした。すいません。05/10/23参照。
05/10/14
 第13Rはすべて引き分け。カシムジャノフ対トパロフは、後者のサクリファイスが面白かったが、前者が駒を捨て返して引き分け。最終日を前に優勝が決まった。
05/10/12
 第12R、トパロフ対スヴィドラーはトパロフからどんどん駒を交換して21手のドロー。これがこの日で唯一気合の入らぬゲームだった。まあこんなもんだろう。勝負が着いたのはレコ対アナンド。レコは昨年のクラムニクとのマッチの第一局と同じ局面から、玉頭のgポーンを譲るという思い切った作戦に出た。これで十数手は主導権を握れたが、慣れないことはすべきでないというべきか、最後は53手で投了。アナンドは同点二位に上がった。
05/10/11
 第4Rからずっと二位だったスヴィドラーが白番でモロゼビッチを70手かけて倒した。もたついたそうだけど勝ちは勝ちで、首位に1点半。明日は黒番ながらトパロフ戦、どうにか形を作ってくれたわけだ。アダムズ対トパロフは前者がよく攻めたけどドロー。アナンド対カシムジャノフは前者勝ち。
 私が気になってるのは盛り上がり。公式サイトは現在アクセス129万。どうなんだろう。はっきりしてるのは会場の写真だ。昨年のトリポリほどではないにせよ、空席が目立つ。ちなみにアルゼンチンは昨年のオリンピアードで29-35位だった。
05/10/10
 昨日の17手でサンルイは終わったというべきだろう。朝の五時まで起きていたのだが観戦気分ではなくて、久しぶりに升田幸三の自伝なんて読んでいた。何度か触れてきたGHQのくだりは、木村義雄の戦争協力や巣鴨の戦犯が話題になっていて、04/12/15で述べた仮説がまた気になりだしてきた。升田自身は、なぜ自分が呼び出されたかわからない、と繰り返してる。
 第10R。決着が着いたのはカシムジャノフ対ポルガーで前者勝ち。ポルガーは現在単独最下位。不調とは思えぬ頑張りを見せているだけにつらい。初手e4に対する彼女の黒番レパートリーが、このハイレベルの大会では危険すぎるのだ、とショートは忠告している。ほか熱戦はトパロフ対モロゼビッチ。2ポーン損のモロゼビッチがトパロフのミスを見逃さず、その後もしっかり受けてドロー。
05/10/09 紹介棋譜参照
 第9R、ショートの報告によると、アナンドは決然とした面持ちで登場、片やトパロフは落ち着いた風に見せていたが、「彼もまたナーバスになっていると確信した」。戦いはK翼で起こった。トパロフが玉頭のポーンを突き越し、アナンドがナイトを見捨てて敵陣に切り込もうとする。そこでアナンドが長考。攻めが続かないのだ。千日手にするしかなく17手でドロー。
 勝負が着いたのはモロゼビッチ対レコの一局。ショートの言うとおりで、モロの相手はしばしば持ち時間を使い果たす。レコならなおさらか、それが敗因になった。39手の段階ではまだ引き分けの筋があったという。Fritzで確認したらほんとにそうだった。あと一手で持ち時間が増えたのに。
 観戦していて一番どきどきしたのはスヴィドラー対カシムジャノフのドロー。図は24...Bc3で、これを取れそうにない雰囲気はわかる。けど、このビショップは29...Bxd4になるまでここに居座ったのだ。そして、無駄駒を捨て切ってメイト寸前まで追い込んで見せた幕切れも素晴らしい。これを紹介棋譜に。
05/10/08
 囲碁将棋ジャーナルを流しながら書いている。羽生が三連勝で佐藤康光を下し王座戦十四連覇を果たした一局を見たいのだ。ひとつのタイトルを十四年も守り続けるというのは大山康晴でさえ出来なかった偉業だが、佐藤の将棋も素晴らしく、これが今年一番の名局かもしれない。
 さてサンルイ第8R、トパロフ対レコはがっちり組み合ったあと、手続きを踏むように駒を交換してドロー。白を持ったアナンドはポルガーをねじ伏せた。次も白番でトパロフ戦だ、意地を見せてくれるかも。サンルイは時差がでかくて観戦せずにいたが、今夜は徹夜してみるか。ほかモロゼビッチがカシムジャノフに勝って成績を五分にもどした。
 もう話す機会も無いだろうから芦生の魅力をもう少し。新築の家のような清々しさがおしゃれで、女性客を連れてゆくと喜ばれる。見つけにくい場所にあり、開店してかなりのあいだ私以外の客を見ない日が続いたが、店は高級感を崩さなかった。オーナーの美意識がしっかりしてるのだろう。店員さんも気さくで機転の利く気持ち良い人だ。ただ、店内は靴を脱ぐ必要がありブーツは感心しない。そして当然ながら禁煙。さて、王座戦の解説が始まる、では。
05/10/07
 芦生という河内長野の蕎麦屋さんに週に一回は寄るのだけど、ここはうまい。飛龍頭や茄子のお浸しといった料理もとても上手に作る。芸風の異なる職人さんが二人居て、どちらも名人だ。片方は、蕎麦の栽培や石臼の製作も極めたいと思って修行してるうちに一時行方不明になったほどのモノマニアで、もう片方は常識人に見える分、途方も無い狂気をひた隠しにしてる凄みがある。滅多にわかるものではないが、前者はふわっとしたメレンゲのように縹渺とした珍しい蕎麦を打ち、後者は香り高くキレの良い蕎麦を打つ。何を言いたいかというと、今日は常連のよしみで、手に入りにくいお酒を飲ませてもらったのだ。私は強くない。帰宅して気持ちよくぐっすり。知人の電話でさっき目が覚めたところである。十一時。いまさら棋譜を並べる気分ではない。明日のサンルイは対局が無いので、結果報告は日が変わってからにさせていただきます。でわ。
05/10/06 紹介棋譜参照
 また四局すべて勝負が着き、白の四勝だった。そして、"ボビー・トパロフ"は白番だった!6勝0敗1分で前半を終了、こうなるとアナンドとのドローが惜しまれるが、本人にはどうでもいいことだろう。ところでアナンドは黒番だった。相手はモロゼビッチ。優勝を狙うには黒でも勝たねばならない状況である、それがアナンドの無理につながったんだろうか。内容は面白かったので紹介棋譜に。とにかくアナンドは今日であきらめたはずだ。トパロフがペースダウンして後半を1勝0敗6分で終わったとしても、もうアナンドは並ぶことさえできないのだから。
 トパロフの相手はカシムジャノフ。30手近く続いたルック・エンディングが興味深かったが、図はそのもっと前、31...Be7の局面。ここでトパロフは32.Qd1。もし、32...Bxb4ならどうなるのかよくわからないが、Fritzで調べたら33.g5以下、白が優勢になるのだった。無論、紹介棋譜に。
05/10/05 紹介棋譜参照
 ソフィアの対ポルガー戦でトパロフがベルリン定跡を使ったとき、「彼らしからぬ」と書いたが、調べてみると騒ぐほど珍しいわけではなかった。「彼らしいベルリン」だって無いではなく、他ならぬソフィアのがそうだった。そして本日の第6R、トパロフはポルガーを相手に再びベルリンを採用。諸解説は、ポルガーが無理をして形勢を損じた、と伝えている。勝負は、ポーン得したトパロフが横綱のようにがっちりと寄り切って64手の勝利。他の三局はドロー、これで首位と二位は二点差になった。大会はまだ半分も済んでないが、もう優勝は決まった観がある。
 ただ、この日から一局選ぶならアナンド対スヴィドラーだろう。これを紹介棋譜に。マーシャル・アタックの本定跡でアナンドが新手を出している。
05/10/04
 すごすぎるよ、サンルイ。熱戦が多すぎて、もう私の処理能力では追いつかない。スヴィドラー対トパロフにしぼります。図からトパロフは勝負に出た、15...Nf3+。狙いは16.Qxf3に16...Bxc3+。以下、この黒ビショップはb2ポーンとa1ルックを取る、そしてそれを白がNxa1と取り返した結果、駒割は白がBB、黒がRPPというわかりにくい状況。実情はどうあれ実戦的には、ポーンを多く持った方が自陣をまとめるのが大変である。が、ショートが指摘したとおりで、白のa1ナイトが愚形で働かない。ピースの少ない黒の方が私の目にも活動的に映った。さらに言ってしまえば、私はあんまりスヴィドラーの終盤を信用してない。案の定、44手で白投了となった。他の四局はすべてドロー。かくてトパロフは二位に1点半もの大差をつけた。ここまで4勝0敗1分の猛進である。
 昨日のChessTodayは、第5R以降を予想する基準の一つに「白番があと何局あるか」を挙げていた。なるほど。すると、レコの優勝はもう無く、アナンドは希望を残している。それだけに、本日のトパロフの黒番勝ちと、アナンドの白番ドローは意味が大きい。
05/10/03
 第4Rもすべて勝負が着いた。この調子では後半にバテる人が出るのでは。レコ向きの流れでなくなったのは確かである。それでも彼はポルガーに勝って最下位脱出。投了図が高級で意味がわからない。Fritzでチェックしてようやく感心できた。
 この日で単独首位に立ったのはトパロフである。アダムズを破った。イギリス定跡からカタロニア風になるごちゃごちゃした戦いで、これもよくわからない。両者が得意そうな試合運びだが、もみ合ってるうちに白トパロフが良くなったのだろう、駒得したポーンが成れそうになり、そこで効果的な駒清算を強要する技が決まった。
 さらに難解だったのがモロゼビッチ対スヴィドラーである。対局者も時間を使っていたようだ。諸解説ではモロゼビッチが指し易かったらしく、ポーン得にもなった。けれど終盤が進むにつれポーンがバラバラになってしまい、最後はポーン損で負けた。
 しかし、一番の事件はカシムジャノフがアナンドを倒したことだ。図からの33.Bh5が豪胆だった。アナンドは33...Ng6と応じたが、狙っていた33...Rxg2+を実現させても34.Kh1のあと黒は手が続かないのである。
追記05/10/02
 ロレン氏に教わりました。ショートの解説は大会のオフィシャルサイトでは「十年前」になっており、しばらくして、ChessBaseでも「七年前」が訂正され、件の手はカムスキーとのマッチに用意された手だとのこと。類似局面を調べてみると、わかる気もする。アナンド本人の発言なのかな。過去のエピソードでは、ピルスベリーが8年間も同一局面を待ってラスカーに雪辱した話、カルポフが20年も機会を待ってリナレスの優勝に華を添えた話がありますね。カスパロフなら、我慢できずに感想戦や自戦記で披露して「どうだ何でも知ってる俺様だ」って胸を張るところでは。
05/10/02 紹介棋譜参照
 ロレン氏のブログに、氏の他Ohtakeさんのコメントも入って、第3Rが詳しく講評されている。今日は私も時間があるのでゆっくり棋譜を楽しもう。それに相応しく、四局すべて勝負が着いた日でもある。
 紹介棋譜にすべき一番の名局はアナンド対アダムズだろう。図は22...Ne5-d3まで。ここでアナンドに新手が出た。23.Qd2である。ChessBaseでショートの解説を読むと、アナンドは七年前にこの手を考えたとのこと。FIDE選手権でカルポフとの決勝に使うつもりだったのだろう。本局で予想された定跡というわけでもないので、アナンドは脳髄の押入れの奥から短時間で記憶を引き出したことになる。相手がとてもその場で対応しきれない手だ。ChessTodayは23...Nxe1からの難解な手順を正着に挙げていたが、アダムズはナイトをd3に置いたままQxf2+を可能にする順を選んで強く23...Bxd5。アナンドも負けずに24.Nxh6+、すごいことになった。火花の散らし合いはアダムズが粘り損ない、その瞬間アナンドの玉頭強襲が決まった。
 ポルガーがカシムジャノフのナイドルフを破った猛攻撃も90年代を思い出させるものだった。イングリッシュアタックのようにPf3からPg4に組み上げず、いきなりPg4を突き出すあれだ。六年前に彼女はこれでアナンドを攻め倒したのを覚えてるファンも多かろう。互いにミスをしたようだが、彼女の勢いが勝利を呼んだことを寿ぎたい。
 レコは天敵スヴィドラーに負けて二敗目。モロゼビッチも黒のトパロフに序盤から圧され気味になってしまい負けた。
05/09/30
 昨日の更新は23時59分。危なかった。今日は職場の女の子と"王将"でわいわい飲んで、やはりすでに23時30分を過ぎている。簡単に。サンルイの第2Rはすべて引き分けだった。注目されたのはトパロフ対アナンド、互いにミスを連発した97手の泥試合だったようである。最後の36手はトパロフがポーン2個得の簡素なクィーン・エンディングで、これを勝ちきれなかった。
05/09/29 紹介棋譜参照
 サンルイが始まった。意外にも、様子見のドローはスヴィドラー対アダムズのペトロフだけで、他三局は勝ち負けを争うチェスになった。意外なことが多く、モロゼビッチ対カシムジャノフはドローに終わったものの、後者が勝ちそうな場面があった。さらに意外なことにレコが白番で負け。勝ったのはトパロフ。レコが得意な型だったのも痛い。05/06/15でも触れたタイプで、ポルガー・レコ式イングリッシュ・アタックとでも本欄では呼んでおこう。8.Qd2にすぐ8...b4と指し、Nd7-b6を考えないのがトパロフの対策で、ソフィアでクラムニクを倒した一局で現れた。
 初日、一番の強さを見せつけたのはアナンドだった。図は白ポルガーが34.Bh6と攻め合いに出たところ。対する黒アナンドの34...Nc3+が強烈で、白陣は一気に崩壊した。トパロフとアナンドを紹介棋譜に。
05/09/27
 欧州クラブ選手権はTomsk-400が優勝。NAOは三位。クラムニクが復調しているかどうかが気になるところだが7戦中4戦に出て1勝3分、ざっと並べたが、1勝は相手のポカ、2分は短手数、アローニアンとの85手のドローだけが大変な試合だった。もの足りないが相手も強豪だったから、可も無く不可も無くという感じか。
 FIDEは12月にも大きな大会を予定している。こうなるとACPマスターズの日程が気になるが、規定では9月から12月の間に開催せねばならず、すると11月しか残ってない。どうなってるんだろう。
05/09/26
 土屋アンナが「茶の味」で囲碁を、まづ五子置いてからしっかりした布石で打ち始める。あのワンシーンだけで私は彼女に好感を抱いてしまう。「将棋を打つ」と書いた蓮實重彦よりも知性的ではないか。図は昨年の四月にも触れた「第七の封印」に出てくる局面で、白がアントニウス、黒が死神だ。特別製の高級駒を使ってるので、別の見方で図を作る人がいるかもしれないが、私の目には白の両ビショップが同色である。しかも手番は黒で、この直前の一手で白は何かの駒を「退却」させている。まあいい。十字軍の時代に現代と同じチェスを指すのも許す。が、盤の置き方が白黒逆なのはやめてよー。ちなみに、図から死神はBxb3と指す。アントニウスは「まんまとワナに落ちたな」と笑ってRg1+。どこがワナなんだ。死神はKh8。とにかく、ここから負けたアントニウスは死んで当然だろう。何より口惜しいのは、にもかかわらず、「茶の味」よりも「第七の封印」の方がやや名作度が高いことだ。
05/09/25
 欧州クラブ選手権はNAOが史上初の敗戦。大金星を挙げたのはTomsk-400だ。アローニアンとボロガンが居る。
 九月のムダ話は音楽で。ハイドンの弦楽四重奏曲と交響曲の全曲制覇を成就した。数え方にもよるが、単純に前者は六十八曲、後者は一〇四曲。何年前に発心したか忘れたが、三、四年では済まない。弦楽四重奏曲はほぼすべてが傑作で何度も味わったものの、交響曲がしんどかったのである。同じ曲をできるだけ多くの演奏で較べる必要もあるから、百枚はCDを聴いたろう。一曲選ぶなら弦楽四重奏曲第五十九番ホ長調作品54の3を。なんてことのない経過句がいきなり舞い上がるのがたまらない。演奏はアマデウス弦楽四重奏団で。何曲も聞くならフェステティーチ弦楽四重奏団が好きだ。
05/09/23
 久しぶりに「七人の侍」を見たが、「赤影」はなんと台湾製だった。見れない。
 地図を見るとサンルイは山の奥。インカローズという可愛い色した石が採れるそうだ。Betssonの掛け率ではアナンドとトパロフが人気だが、私はレコの優勝とみた。ドローが多い大会だろうから向いてるはずだ。また、タイトルがらみの重苦しい大会となれば三年前のドルトムントが思い出されるのである。あの時の彼は迫力があった。
 王位戦第七局は羽生が後手番を引き、一手損角換わりで勝った。恐れ入りました。
05/09/22
 ローザンヌはヴォロキチンが決勝でナカムラを2勝0敗で破って優勝。順当だと思うが、捨て身の二局目でナカムラが1.e4. c5, 2.Qh5と指したのが彼らしかった。
 来週からいよいよアルゼンチンはサンルイでFIDEの世界選手権が始まる。FIDEがまともな世界選手権を開催するのは実に15年ぶり。参加者はアナンド、トパロフ、レコ、アダムズ、スヴィドラー、モロゼビッチ、ポルガー、カシムジャノフ。プラハ合意を断念してカスパロフが引退したおかげでこの顔ぶれが実現した面もある。プラハ合意にこだわったクラムニクが参加しない事情は以前に述べた。現状では已むをえまい。
05/09/21
 奇遇と言うべきか、それともみんなが気にしてるのか。昨日の読売新聞の観戦記も先手勝率の話題だった。今期の竜王戦の先手勝率は58.2%で、矢倉なら62.5%なんだそうだ。筆者はプロ棋士で、彼の主張は、こんな統計では測れない「棋士一人一人の個性」が「ファンに求められている」。閉鎖的な団体の人間が言いそうなことだ。都合よく外部を内面化した好例である。
 いかん、こんな奴に腹を立てても空しい。戦型の話が出たが「週刊将棋」によれば、昨年度の一手損角換わりは先手勝率64.4%で、横歩取り8五飛戦法は58.3%である。現在の流行戦法と、かつての後手の有力戦法がこの結果だ。これが先手の高勝率を招いた、という藤井猛の説が紹介されていた。「四間飛車の責任じゃない」と言いた気で、こちらは微笑ましい。
05/09/20
 羽生善治対佐藤康光の王座戦第二局が素晴らしかったので、地元で「週刊将棋」が売られるのを待ちきれず、難波まで南海電車で買いにいってきた。改札を出ると香港製のDVDを売っている。ときどき見かける。「七人の侍」と「赤影」を購入。後者には麻生久美子が出ているのだ。実は私は麻生久美子も畏友に教えてもらった。
 ちょうど「週刊将棋」にも先手の高勝率を話題にしている連載があった。私が思うに、先手番ならさしあたり優勢で始まる、というのは過半数の棋士にとって悪くない状況である。スポンサーの意向が無い限り、将棋連盟が自発的にルールを変えることは無かろう。韓国や中国という外部を有する日本囲碁界との違いでもある。
05/09/19
 先月の新聞将棋欄で読んだことなのだが、昨年度の将棋界は先手の勝率が55.4%で、すさまじい高勝率だった。チェス並みである。森内俊之は先手で69%、後手で34%。トッププロ同士の対戦になるほど先手の勝率が高くなるとか。これじゃあ多くのタイトル戦で挑戦者が公平に決まってるとは思えない。ちなみに囲碁は五年間の先手の勝率が51.9%だったことを理由にルールを改正した。将棋も何かすればいいのに。先手棋士に軍手の着用を義務付けたらどうだろう。
05/09/18
 ローザンヌでは十代の強豪八人を集めた勝ち抜き戦をやっている。カールセンも出ているが、残念ながら一回戦でハリクリシュナに負けてしまった、1敗1分。引き分けの一局は面白かったが、まだ力に差がある感じ。ほか勝ち上がったのはヴォロキチン、ナカムラ、マメデャロフ。順当といったところ。また、今日から欧州クラブ選手権が始まるが、これはNAOが連続優勝だろう。クラムニク、バクロー、グリシュク、ラジャボフ、カリャーキン等が所属している。

戎棋夷説