紹介棋譜 別ウィンドウにて。
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Mexico City でAnandが優勝。第十五代世界チャンピオンに。

07/10/01 紹介棋譜1・2・3参照
 最終日はみんなさっさと握手して閉会の宴で和むものだ(訂正。閉会式は翌日でしたね)。まづ、アナンド対レコがマーシャルで、アナンドは第5Rで見せたよりもさらに低く構えた。そして早速20手で引き分けた。レコは彼らしい四位を得た。ところがである。他の三局はどれも大変な戦いだったので驚いた。三局とも紹介棋譜に。
 クラムニク対アロニアンは07/08/31で紹介した定跡になった。やっと私の予習が役に立った。BB対RPPという駒割の難解な戦いだが、たぶん、クラムニクの研究範囲にはまると怖いことになるという実例ではなかろうか。クラムニクは三勝目をあげ、ゲルファンドと同点の二位に上がり、第十四代王者としての帳尻は合わせた。アロニアンは不本意な六位。
 スヴィドラー対グリシュクは05/10/04で紹介したサンルイのスヴィドラー対トパロフの"すごすぎる"ラインをたどった。これは経験者に有利だったようで、スヴィドラーはやっと千秋楽で初日を出した。最下位を脱出して五位である。グリシュクが最下位になった。けど、私は六局も彼から紹介棋譜を選んだのだから、凡退というわけではない。
 モロゼビッチ対ゲルファンドはペトロフ定跡の活発な戦いになった。駒を捨てたり捨て返したり、これこそあるべきペトロフである。最後はドローだった。六位に終わったモロゼビッチだが、3勝5敗6分という派手な戦績は、彼がこうした大会に欠かせぬ存在であることを証明している。ゲルファンドについては、エリスタの最終予選の始まるずっと前からの発言で、私は彼がこの大会に賭けているのを感じており、健闘は予想していた。けれど、二位になるほどとは思いもしなかった。インタヴューなどを見ても、とても充実した日々だったようだ。
 数え方に史家の議論が必要だが、かくてアナンドが第十五代世界チャンピオンである。おめでとう。九十年代は全盛期のカスパロフや下り坂のカルポフにまでマッチで破れる勝負弱さの目立つ人だった。今世紀はドルトムントに不参加を決めた後にプラハ合意が成るという運の悪さまで加わった。無敵だった早指し戦に最近はややかげりも見え、良き人に玉座は遠いという"ケレス律"の典型的な適応例に思えたが、今大会は堂々の勝ちっぷりであった。
07/09/30
 サンルイで二位から四位の三人は予選無しで今大会の出場権を得ることができた。でも、それってサンルイが終わってから決まったのである。げに恐るべきはFIDEの場当たり主義だ。優勝できなくても気は抜けない。賞金も順位によって決まるらしいから、頑張って損は無い。チェスドクター氏のブログによれば、優勝賞金は39万ドル(約4500万円)とのこと。マッチじゃないから安いのは仕方ないか。ちなみに、サンルイの優勝賞金は30万ドル(約3400万円)だった。
 前半とは順番が変わって第13Rにゲルファンド対クラムニクがあった。ゲルファンドは駒を捨て勝ちにいく。しかし、クラムニクは柳に風で26手のドローに収めた。アナンドは危なかった。グリシュクに主導権を握られてポーン損のルック終盤である。耐えに耐えて73手のドローに持ち込んだ。アロアニン対スヴィドラーはイギリス定跡である。激しい変化に突っ込んで面白かったが46手で引き分けた。もともとd4棋士が少ない大会とはいえ、スヴィドラーはとうとうグリュエンフェルドを一回しかやらせてもらえなかったことになる。レコ対モロゼビッチは、上がり調子の前者が荒れ調子の後者に勝った。
07/09/29 紹介棋譜4・5参照
 第12Rのスヴィドラー対アナンドは07/09/07で論じた形になった。ただし、期待の11.Nc3ではなく11.axb5だった。結果はつまらなかった。22手であっさり引き分けた。11.Nc3はすでに欠陥が発見されてるのかな。他の三局は勝負が着いた。
 モロゼビッチ対グリシュクは、黒がQ翼を捨てて白王に迫ろうとする。けれど、自陣にたびたび手を入れざるを得ず、なかなか攻めに徹しきれない。そのもどかしさに悩殺されそうな一局だ。モロゼビッチの芸なんだろう。最後はきわどい一手違いの即詰みで白が勝った。これは観戦したかった。
 芸といえばクラムニクのカタロニア定跡も魅せてくれる。レコ戦は白黒双方にミスがあったようだが、この定跡特有のよく動く長距離砲クィーンでクラムニクが勝負を決めた。図で23.dxe5と取る構想が面白い。23...Bg5からc1のルックを失うのだが、かえってそれで隅の在庫がさばけた感じになった。黒駒が隅でだぶついているのと対照的である。
 アロニアン対ゲルファンドは、玉頭のポーンを突き上げて白が無理気味に攻め込んだ。これを黒に落ち着いてとがめられ、白は通常兵器のQBRを左翼に温存したまま敗勢に陥った。ゲルファンドは3勝目を挙げ首位に1点差である。モロゼビッチとクラムニクを紹介棋譜に。
07/09/28 紹介棋譜6参照
 第11Rはゲルファンドもクラムニクもやる気を無くしていて、22手と13手で引き分け。アナンド対モロゼビッチも似た感じで、アナンドは淡々と駒を消去しているように見えた。そして、同一手順を繰り返す。ところが、そこでアナンドが手を変えたのである。急に激しく駒を取り合って、白は駒得を誇り、黒は昇格を狙うという局面になった。形勢は明らかに白が良い。最後のところを紹介棋譜にしておこう。モロゼビッチは負けと知った上で遊び心に楽しい形を作ってくれたに違いない。アナンドは4勝0敗7分で二位に1点半の大差をつけた。
07/09/27
 会議でへとへとである。気の合うスタッフとの会議はあきらめもつくが、ケリが着かなくって帰れない。今月みた映画の話でもしよう。「オフサイドガールズ」を。イランの映画は初めてだ。閉館する梅田のOS劇場にとっては最後の上映だった。
 イランでは女性は男子サッカーを競技場で観戦することが禁じられている。けれど、自国がワールドカップに出られるかどうかの決戦となれば、やはり会場に駆けつけ声を出し合い盛り上げ盛り上がりたいではないか。で、たくさんの女の子が男装してこのカタール戦にもぐりこんだのだ。でもすぐに逮捕されてしまう、そんな彼女らの思いを描いた映画である。
 実際のカタール戦の現場で撮影した臨場感の活きがいい。柵に押し込まれてもめげない彼女らの明るさは万国共通である。泣いたり笑ったり、感情の惜しげも無い発散を目の当たりにして、戒律と仕事で固まった男たちは気おされていく。「どうして女は見ちゃいけないの?」と問い詰められると、もう答えられない。
 最後、勝利に沸く群衆に紛れて全員が脱走する。花火をかざしながら散り散りに消えてゆく。解放的というよりは町を不安にさまようイメージだった。行く末を祈らずにいられぬ気持ちになるが、それが監督ジャファル・パナヒのメッセージでもあろう。
07/09/26 紹介棋譜7・8参照
 だんだん早起きがつらくなってきた。今日は七時前から観戦。ゲルファンド対レコが24手のドローで終わっている。レコが磐石だった。前ラウンド無しに見れば同じ棋譜でも緊張感が違ったろうに。クラムニク対アナンドは奇跡を求めて白が攻めた。けれど、シノギのアナンドを見るのも私は好きだ。これは紹介棋譜に。最後はR対NPPの駒割で41手のドロー。スヴィドラー対モロゼビッチはぜんぜん記憶に無い。スヴィドラーがチャンスを逃がしたらしい。
 勝負が着いたのはアロニアン対グリシュクだった。図は15.g4まで、白の狙いはNd2- f1- g3- f5である。黒はそれを防いで15...h5、しかし、これが悪かったらしい。以下、アロニアンのナイトがクネクネとよく動いた。17.Nh2から27.Ne6まで8手もナイトを使って勝負を決める。収束がまたきれいなメイトだった。紹介棋譜に。
 観戦三昧の生活はこれが私は最後だろうと思って予習し、時差と奮戦してきたが、この大会は今日で終りだという感が強い。明日からは事後の分析を見て更新することにする。
07/09/24
 明日が大勝負と踏んでいたのだけど、今日でたいがい決まってしまった。寝坊して八時前に局面を見ると、レコ対スヴィドラーとアナンド対アロニアンが29手と21手のドローで終わっている。イギリス式攻撃とマーシャルで、どちらも白が序盤にちょっと工夫を見せていた。残り対局中の二局は40手のちょっと前あたり。どちらも駒の損得が無いながら一見して黒が悪い。
 モロゼビッチ対クラムニクを最初から並べ直すと、黒が意欲的に動いているように見える。それが悪かった、ということらしい。最後は軽やかなフットワークで敵の駒を振ってから白が急所に攻め込み、48手でモロゼビッチが勝った。
 それよりさらにグリシュク対ゲルファンドは黒が苦戦に見えた。形の悪いポーンを守るために、ルックが二本とも身動きできずにいるのだ。ところが、こっちは十時まで長引いた。しかも、観戦者の意見はGMとIMに分かれて、前者はドロー、後者は白勝ちと言っている。GMの判断が正しかったようだが、ゲルファンドは正着を指せず、61手で投了した。
07/09/23
 第8Rはゲルファンド対アナンドだったが、よくあることで20手のドロー。スヴィドラー対クラムニクも29手のドロー。いづれも見所は無かった。アロニアン対モロゼビッチは、アロニアンが、パスポーンを駒得するという戦果をあげながら、勝てない形に自分から局面を固めてしまった。69手のドローに終わったが、40手になる前から私を含め多くの観戦者にはその結末が見えていた。アロニアンは体調を崩しているとのこと。
 レコ対グリシュクは再びマーシャル回避の8.a4型だった。アナンドと同じラインを目指すレコに対してグリシュクから手を変えたが、レコが力強い。前ラウンドあたりから、どんな抵抗も弾き返して寄せてくる「レコの壁」が見られるようになった。60手でついに初勝利。もう優勝に間に合わないと思うが、上位三人、アナンド、ゲルファンド、クラムニクとの戦いには注目したい。
07/09/22 紹介棋譜9参照
 結論から言うと昨図の26...Bd5は絶妙手である。実感しようとして、あれこれFritzをいじったが、私には無理だった。Chess Todayの解説を読んでも手順の意味がわからない。これを対局中に判断できたスヴィドラーはすごいし、その彼が最下位だという現実はもっとすごい。
 前半戦最後の第7Rは6時半からICCで観戦を始めた。スヴィドラー対アロニアンが20手のドローで終わっていた。モロゼビッチ対レコは、後者独特の圧力で白陣を押さえ込みかかっているように見えた。結果は60手のドローに終わっている。
 注目のクラムニク対ゲルファンドは難しい局面だった。専門棋士たちのカキコミは「黒の楽勝」「白が有利だ」「黒に決まってるだろ」と分かれていて、みな口ぶりが自信満々であるのが不思議だった。33手目にもなって黒がキャスリングしたのも珍しかった。黒が入城可能であることをクラムニクが失念していたほど珍しかったのである。義経のようにいきなり敵王が飛び去ってしまったのでクラムニクは追撃を諦め、40手のドローで手を打った。たった1勝で彼の前半は終った。
 アナンド対グリシュクはマーシャル回避の8.a4型だった。とうとう私の戦型予想は一局も当らない。苦労したのに、みじめである。局面は一見してアナンドが伸び伸び指していた。30手の段階で残り時間が40分ほど。グリシュクは10分ほどで苦しい。特に大技の必要も無くアナンドの駒が進んでゆくのを確かめて出勤した。紹介棋譜にしておこう。大きな3勝目である。
07/09/21 紹介棋譜10参照
 第6Rは寝坊してしまった。8時ちょっと前である。観戦よりも出勤を気にすべき状況であったが、迷わず電源を入れた。3局がドロー済みだった。レコ対アナンド、アロニアン対クラムニクは20手台で味気なく終わっている。グリシュク対スヴィドラーは大乱戦だった。図は駒を捨てまくってグリシュクが突っ込んだ26.Rd7まで。これって強烈なの?私には、つぎRxf7+が実現しても、犠牲となった白駒の霊は浮かばれないように見えた。が、スヴィドラーは26...Bd5と指していたのである。この狂乱譜はぜひとも紹介棋譜に残したい。
 勝負が着いてない一局はゲルファンド対モロゼビッチだった。白の勝勢である。07/06/27でふれたアンデルソン式ルーク切りが、ただの駒損で終わってしまったケースである。職場に着いて結果を見ると、やはり白勝ちだった。
 ゲルファンドがアナンドに並んで首位に立った。四時間後にはクラムニク対ゲルファンドが始まる。これは寝坊したくない。
07/09/20 紹介棋譜11参照
 おっしゃ!6時前に電源を入れて第5Rの観戦開始だ。レコ対クラムニクは、レコがペトロフを避けて2.Bc4からイタリア定跡に出た。結果は難なくクラムニクに処理されて24手ですぐ引き分けた。しかし、他の三局はすべて勝負が着いた。
 アナンドはスヴィドラーのマーシャルを避けなかった。その代わり、滅多に見ない型に組んだ。低く構えて籠城したのである。ポーン得をじっくり活かそうということか。駒を取らない陣形戦がしばらく続いた。ようやくアナンドがa筋をこじあけて侵攻する。ただ、攻めが続くとは思えない。他の対局が面白かったので、視野の余白に置くだけにした。すると、いきなり黒のK翼に火の手があがり、ポーンがふたつ抜かれるのが見えた。スヴィドラーがしくじったらしい。即座に彼は投了した。
 「他の対局が面白い」とはグリシュク対モロゼビッチである。クィーンズギャンビットのラゴージン定跡になった。勝率が良いとは言えないのだけど、白Nf3型でニムゾを拒否られた黒はしばしばグレてこう指すのだ。見所を図にしておこう。19...h5まで。これが玉頭を弱くしたことをグリシュクは見逃さなかった。Q翼をクールに捨てる。20.Qf2から21.Qg3がカッコイイ。紹介棋譜に。
 最後に残ったのがゲルファンド対アロニアンのベノニだった。白が勝ちそうだなと思いつつ出勤した。職場の機械で確認したら、やはりそうだった。アロニアンはきつくなったようだが、まだ勝ちの無いレコやスヴィドラーよりは見込みがあると思う。
07/09/19 紹介棋譜12参照
 第4Rはアナンドほど露骨ではないにせよ、クラムニクも勝ちを逃していたというのがもっぱらの評判である。ポカの負けより逸機のドローが目立つ大会だ。慎重派の流れが強いということか。
 日付が変わったばかりで、第5Rが始まってない。さきごろ終わった大会の話でも。シロフやアコピアンなど八人を集めたカールスバッド大会があった。モブセシアンとポノマリョフがともに2勝0敗5分で優勝した。けれど、本当なら3勝でナヴァラが単独優勝できたかも。モブセシアン戦がすべてだった。
 ナヴァラはアタリクの新工夫に興味を持ったようだった。マーシャル回避の8.h3に対して8...Rb8と応じ、9.c3なら9...d5でマーシャルの筋を復活させる。ナヴァラはこの手でアコピアンからドローを得て、モブセシアンとの決戦でも採用したのである。最近のマーシャル以上にマーシャルっぽい嬉しい集中攻撃なので紹介棋譜にしておく。左図まで白陣に迫った。黒優勢である。しかし、何が起こったか。
 ここまでくれば私にもナヴァラの構想が見える。38...Rh1+だ。39.Kxh1. Qh5+で40.Kg1. Bxg2、のはずである。ところが棋譜になったのは38...Qf4。やんぬるかな。即座に終わった。
07/09/18
 Chess Todayによると、第2Rのモロゼビッチは15...Ra7や16...Ra7で互角以上、第3Rはグリシュクが勝機を見落としていた。
 第4Rは観戦できなかった。クラムニクとアナンドは、それぞれグリシュクとモロゼビッチを相手に、60手61手で引き分けた。アナンドはP得で強力なパスポーンも持ち、勝てそうだったが。スヴィドラー対ゲルファンドはまたペトロフの穏健定跡だった。当然のように24手のドローである。相手が三度もこの定跡を選んでくれたおかげで、ゲルファンドは0勝0敗4分の大健闘だ。アロニアン対レコで勝負が着いた。レコがナイトを捨ててポーン2個を得るという受けの勝負手に出た。面白いと思うが、彼らしくない。ルックを捨ててポーン2個を得るという駒損に進んで負けてしまった。
07/09/16
 ちょっと寝坊して七時くらいに電源を入れると、だいたい20手くらいの局面であった。アナンド対クラムニクだけが40手あたりまで進んでいる。ペトロフの一番見慣れたやつだ。クラムニクが得したポーンをa2まで伸ばすルック終盤であるが、見るからにドローである。結果もそうだった。グリシュク対アロニアンは、マーシャル回避の9.d3に対し黒が意地で9...d5を敢行した。今年になってちらほら見かける「無理矢理マーシャル」である。私の予想はまた外れ。結果は引き分け。勝負が着いたのはモロゼビッチ対スヴィドラーのスコットランドで、なんかスヴィドラーの力負けであった。私の記憶でもこの顔合わせは意外に華々しくならない。
 レコ対ゲルファンドが最も長引いた。始まった瞬間からドローがちらつくような、ペトロフの中でも特に穏健な定跡である。第1Rでも見たやつだ。今回はゲルファンドが少しづつh2までポーンを伸ばす長い長いクィーン終盤になった。七時間以上も戦って結果は100手のドロー。もう十一時か、つかれたあ。
07/09/15 紹介棋譜13参照
 どうやら昨日はアマゾンに寄り道してる間に、大事な瞬間を見逃していたらしい。我が敬愛する且つ嫁が好奇心の対象たる原啓介師のブログで知ったのだが、ゲルファンドの優勢になる瞬間があったようだ。穏健定跡で私は油断した。ゲルファンドは苦手意識で好機を逸したのだろう。
 第2R、最初に終わったのはゲルファンド対グリシュクのクィーンズインディアンでBg2対Bb7型。また予想が外れた。23手のドローだが面白かった。最後に終わったのはスヴィドラー対レコのマーシャルアタックで43手のドロー。15.Qe2が実質的な新手であり、引き分けたとはいえ、白が悪いことはなかったと思う。苦手相手をドローでしのいだレコは満足だろう。私はまた予習を外された。要するに参加者はたっぷり新工夫を用意してきたということだ。
 最初に勝負が着いたのはアロニアン対アナンドのセミスラヴ。三日前に見つけたという新手をアナンドが披露して勝った。続いて勝負が着いたのがクラムニク対モロゼビッチのカタロニア。好取組である。これに集中して観戦していたらすごい手が出た。図は12...f6まで。クラムニクはカタロニア定跡で捨てるポーンを取り返さずに進めていたが、ここでさらに13.exd5と指したのである。ナイトは捨てた。そして、このポーンをc7まで突入させ、最後はみごとクィーンに昇格させたのである。これを紹介棋譜に。
 卓越した大局観と決断力と勝負度胸の勝利であった。おそらく正確に対処できればモロゼビッチは別の試合結果を得ただろう。しかし、20手の段階で三十分以上の持ち時間を確保していたクラムニクに対して、彼はたった四分しか残せなかったほど難しい局面に立ち向かうことを余儀なくされていたのである。よって好手21...Qd5を発見できず、これで形勢が決まった。
07/09/14
 時差があるので、日本では今朝からなのですね。試合開始から二時間ほどした六時に電源を入れると、だいたい20手弱進んだ適当な観戦タイムでした。さきごろ亡くなった阿久悠のヒット曲5枚組のCDとかをアマゾンで注文しているうちに七時になって、まづアナンド対ゲルファンドのペトロフが21手のドローで終わりました。アナンドの定跡選択が穏やか過ぎたかな。このドローは苦手相手を切り抜けたゲルファンドにとって大きかったでしょう。なんて書いてるうちにクラムニク対スヴィドラーのセミスラヴが23手のドロー。クラムニクの駒繰りにだんだん雰囲気が出てきた観があったところなので、やや意外でした。
 グリシュク対レコはアンチマーシャル9...d6です。でも、ブレイヤー応用型でもチゴリン応用型でもなく、10...Qd7でした。予想、はずれたなあ。レコの13...d5に工夫を感じます。いま七時半ですがこれも28手のドローに終わりました。ドローが多くなるというのも私には予想外です。モロゼビッチ対アロニアンはクィーンズインディアンになりました。でも4.a3型。これでは私の顔が立ちません。黒が7...g6から両翼でのフィアンケットを見せ、白は8.h4から9.h5でそれを崩しにかかる、というのがそれぞれの工夫だったと思います。ICCではアロニアンが良くなったという評価だったのですが、さっき七時四〇分頃に25手のドローで終わりました。
07/09/13
 はい、私がメキシコに備えて三週間も定跡研究を続けたという日本人です。今日から大会が始まるのだけど、疲れたので九月の無駄話でも。
 武満徹のピアノ曲が昔からよくわからなかった。集中して音を追ってもつながらない。といって、離れ離れの音の距離感に妙があるとも聞えない。でもたまたま、武満は休止符の時間をきわめて厳密にイメージして作曲する、という話を知った。それを無視して演奏されたレコードを彼は叩き割りさえするという。ふーん、と思って、ピーター・ゼルキンのCDを買ってきた。定評ある演奏である。それで、鍵盤の叩かれたあとの間(ま)とか余韻を聴いてみたら、音の風景が一変した。わかるのである。こんなふうに聴く音楽もあるんだなあ。大発見の興奮を味わったが、どうもこれって彼の曲を聞く初歩的な態度らしい。
07/09/12 紹介棋譜14参照
 左図が昨日の「本題」である。2005年モナコのレコ対ヴァレーホ戦からある形で、その時は22...Ra5だった。狙いは23...d5である。実戦ではこれが実現して、それまで窮屈だった黒駒がさばけていった。ほか、22...Ra5にはQa8からe4ポーンを狙う意味もある。昨日ふれたカリャーキン対アナンド戦がそうで、黒快勝だった。つまり、22...Ra5はなかなかの手だったのである。
 ところが、実はモナコの時点からChess Todayは23.Qb4が良いとコメントしていた。2006年になると実戦で採用されるようになる。23...d5でも23...Qa8でも24.Bb6で白が良いそうだ。しかし、黒もあきらめない。23.Qb4を許さぬ22...Ra4が好手として認められるようになった。黒はQa8の狙いだけでやっていけるらしい。そんなわけで23.Qb4は早々に賞味期限が切れた手になっていった。
 22...Ra4に対しては23.h5や23.Qg2や23.Bb5が試された。本題図に戻って考え直そう。カリャーキンのQc3やChess TodayのQb4に現れているように、白は本音としてb3のポーンを取り払いたいのである。ならば22...Ra4にどう応えればいいか?今年のフォロスでスヴィドラーがファンヴェリー戦に見せた手が素晴らしいと思う。23.Rh3だ。遊び駒の活用でもある。たとえb3を取れずともこのルックがQ翼に投入されるだけで戦況は一変するのだ。好例をひとつ紹介棋譜に。
07/09/11
 e5型は、白も黒もひとまづ入城し合うのが基本形です。次いで互いにgポーンとbポーンを突き上げると、いかにもシシリアンらしい攻め合いの局面になる。左図がそれで12.g5. b4まで。
 メキシコでは、黒が基本形にせずNbd7からNb6を急ぐ型の方が現れる気がする。でも、私のような初学者は左図から学ぶべきでしょう。13.Ne2. Ne8とナイトを逃げ合う。そして、互いに二の矢を放つ。白は14.f4から15.f5、黒は14...a5から15...a4。ここで白ナイトが16.Nbd4に跳ね捨て、16...exd4, 17.Nxd4となる。黒ビショップも逃げ場はないので駒損にはならない。これがとてもよく研究されてるんです。
 まだまだお話は序の口で、以下、手順が長くなりますが、代表局として06/01/15で紹介棋譜にしたカリャーキン対アナンドを御覧ください。17...b3, 18.Kb1. bxc2+, 19.Nxc2. Bb3, 20.axb3. axb3, Na3. Ne5, 22.h4 までがほぼ一本道と言ってよく、これでやっと前置きが終りです。本題は明日に。
07/09/10
 ナイドルフのイギリス式攻撃の分類でまづ考えるのは、黒がe6型とe5型どちらの布陣を選ぶかである。どちらも膨大な量の棋譜を生んでいるが、前者の方が少ない。こっちから調べよう。
 私がよく「手製の資料」と言っているのは主にThe Week In Chessから自分で集めた高段者同士の今世紀の棋譜集である。これで白が26勝8敗15分すなわち勝率68%とというすごい戦法を見つけてしまった。ナイドルフで6.Be3. e6のとき、7.f3から8.g4でなく、いきなり7.g4と突くのである。2006年からの統計ではなんと12勝1敗4分すなわち勝率82%にのぼった。
 メキシコではグリシュクとモロゼビッチがe6型を指すかもしれないが、やめたやめた、e5型を研究することにする。
07/09/08 紹介棋譜15・16参照
 9...d6の場合、白にはPa3型とPa4型がある。後者は昨年のソフィアで黒スヴィドラーがアナンド戦に見せた指し回しが印象に残った。紹介棋譜にしておこう。12...Bc8から13...Bd7に上がり、14...bxa4でb筋を開け、そこに15...Rb8を据える。駒のやりくりが巧みだ。結果は引き分けながら勝ち目は黒にあった。そんなわけで、私はPa3型を推す。
 黒にはブレイヤー応用型Nb8とチゴリン応用型Na5などがある。Pa3型に対し、メキシコ参加者では、アロニアンとグリシュクがチゴリン応用型をよく使う。手製の資料によると、二人はこの型になれば絶対不敗だ。いま世界中のe4棋士の頭を最も悩ましているのは、打倒Na5の手順が見つからぬことだろう。
 今年のチゴリン応用型からヴェイカンゼーのシロフ対アロニアンを紹介棋譜にする。この定跡に貢献した棋士としてLastinという名を覚えた。14...Qc7が2003年の彼の新手である。同じ年に出たLalicの"The Marshall Attack"によれば、15.c3が好手で白良しと書かれているが、結局はやはり同年のLastinの15...Nb8がまた最善のようである。
 昨年の酒井清隆に続き、大竹栄も通信チェスのグランドマスターに昇格することが決まった。お二人ともチェスの掲示板では私たち中級者の役に立つコメントをしてくださることがよくあった方です。お祝い申し上げます。
07/09/07 紹介棋譜17参照
 図は9.d3に9...Re8まで。黒はPd5の可能性を残した。新定跡8.h3の特徴は、白がPa3かPa4か形を決めず、後で適切な方を選べることだ。たとえば、図では10.a4がほとんどである。10.a3は当りが弱いので、黒にBc5からNd4の反撃の余裕を与えてしまうのだ。
 9...Re8の場合、黒陣はf7地点が弱い。だから白Ng5を防ぐために10...h6が多い。そこで私が気になっているのは11.Nc3の結論だ。11...b4に12.Nd5と飛ぶ。サンルイのスヴィドラー対レコはこれで白が快勝した。紹介棋譜にする価値がある。ただし、昨年のタリ記念ではレコが同じ局面に誘導し、スヴィドラーが手を変え、12.Ne2で引き分けている。メキシコではどうなるか。この駆け引きは楽しみだ。
 黒d5やBc5の反発を秘めた9...Re8ではあるが、私の目には上記の11.Nc3から12.Nd5で黒が危険な気がする。実際に多く指されているのは堅実な9...d6だ。メキシコでもそれが主流だろう。
07/09/06
 ロシア選手権の上級リーグが始まっているが、せっかくの機会だから流行定跡の勉強を続けよう。話をマーシャル対策に戻せば、良策が見つからぬ場合、白はマーシャル外しの手順を選ばざるを得ない。06/05/25にちょっと書いたように、8.h3. Bb7, 9.d3が今は主流である。この数日でたくさんの棋譜を調べた結果として言えるのは、ドローだらけの定跡ということだ。それでも指し続けられているのは、歴史の浅い定跡であるため、まだ未知の局面を多く残しているからだろう、とも感じた。
07/09/05
 やっと奴の問題が片付いた。これまでダナイロフは、昨年の王座戦でクラムニクがソフト指しをしている、と言いふらしてきた。これを世界チェス連盟の倫理委員会が、クラムニクに対する中傷行為であると認めたのだ。同様、強い警告がトパロフにも発せれらた。またやったら対局禁止になるだろう。当然すぎるし遅すぎるし軽すぎる決定である。
07/09/04
 森内の言っていることは、文化的かスポーツ的かの問題であるよりは、閉鎖的か開放的かの問題だろう。この閉鎖性は御城将棋と縁台将棋との階級的な問題でもある。閉鎖的な縁台将棋などありえない。森内は特権階級の将棋の特徴をもって文化的だと述べているにすぎない。
 チェスなら棋譜使用が開放されているので、私のようなファンでもメキシコ大会に現れる局面の予想を簡単に公開できる。しかし、将棋のブログでA級順位戦に関する同じ分析を行うのは不可能だろう。その理由をいまさら述べる必要があろうか?文化性よりは閉鎖性や階級性で論じた方が将棋界の特徴を幅広く深く扱えるはずだ。
 チェスがスポーツに分類される理由は07/02/06でふれた。歴史的な問題なのだと思う。
07/09/03
 メキシコ参加者のうち七人もニムゾインディアンを使えるけど、出現率はそんなに多くない。Bg2型と4.Qc2型が多いとだけ覚えておこう。カタロニア定跡もクラムニクのほか、アロニアン、レコ、グリシュク、ゲルファンドが得意にしてるけど、あまり分析の仕甲斐が無い手将棋である。
 ニッポン放送が配布している「SPOPRE」九月号を畏友が送ってくれた。開くと「棋士列伝」という連載インタヴューが始まっている。頭脳スポーツという切り口で将棋を考えたら、という企画のようだ。第一回は森内俊之で、チェスとの比較にも触れている。
 「文化的要素の強い将棋に比べて、チェスはスポーツ的な位置づけがされていて、大会も観衆に囲まれて公開で行います」。とはいえ将棋も「最後は一対一の勝負ですし、駆け引きなどスポーツと共通する部分は多いと感じます」。
07/08/31 紹介棋譜18参照
 スラブ以上に知らない私の苦手定跡がクィーンズインディアンである。ところが困ったことにメキシコ出場者のまた六人までがこれを指すのだ。この機会にちょっと勉強した。一番重要なのは4...Ba6 5.b3型である。30手近く研究されてまだよくわからない、という変化もあり、しかも、それをアナンド、クラムニク、アロニアン、レコが指している。四月のクラムニク対レコの早指しマッチの一局を使って調べた。久しぶりにChess Viewerを使ってコメントを入れてみたのでご鑑賞ください。使い方のわからない方は、HOMEに書いてありますのでそちらを参照してください。
07/08/30
 スラブを指す棋士は当然セミスラブも指せる。メキシコの六人もそうだ。よく見かける型は一通り出してくれるだろう。白の作戦でいくらか変わってるのは、アロニアンが6.Qc2から7.g4を得意にしてることだ。エレバンの早指しマッチでクラムニクを倒した戦法である。前はゲルファンドも指していた。
 東京大学が囲碁研究を始めた話は06/12/20に触れた。正式には「教養教育への囲碁の活用研究部門」というらしい。教育プログラムの開発だけでなく、教育効果の研究や様々なイヴェントも行う。日本棋院のほか日能研も協力しており、期間は昨年十月から再来年九月までだ。その一環として、先月14日から来月17日まで駒場博物館で「はじめて出会う囲碁の世界」という展示が行われている。入館無料のわりに充実してるようだ。畏友も行って教えてくれた。
 「囲碁を一から学んでいく構成になっていて、最終的には六路盤までいきつく。その間に用具やマナーなどの説明展示もあるわけです」。ほか、幽玄の間(日本棋院の最高対局室)を再現したり、「恐るべきことに、立派な入門パンフと紙製の六路盤を無料配布」してる。六路盤は裏返すと九路盤になる。ちゃんと使えそうだ。「会場にはデュシャンの大ガラスのレプリカが元のまま置かれてあって、前に立つとガラスの向こうに秀策書の囲碁十訣が透けて見えていました」。カッコよすぎるぜ東大。
07/08/29
 スラブには4...a6という手待ちもある。一手の遅れが黒の対応策を増やすのが面白い。4.Nf3 a6型と4.e3 a6型では微妙な違いがあり、メキシコ参戦者の多くは前者を指さない。どっちでもやるのがモロゼビッチだ。
 でも、モロゼビッチはa6型を指さなくなってきた。4.Nf3なら4...e6のセミスラブにする。4.e3なら間違いなく4...a6かと思うが、この手を指す白は少数派だ。何より、最近のモロゼビッチは1.d4にはK翼のフィアンケットを志向することも多い。
 4.Nf3 a6型と4.e3 a6型の違いは、前者なら5.c5が有効な点だろう。以下、5...Nbd7, 4.Bf4になる。4.e3では不可能だ。われながら勉強不足で、これだけ書くのに、ものすごく掛かってしまった。
07/08/28 紹介棋譜19参照
 スラヴについては07/07/29で6.Ne5から7.f3と8.e4という戦法に触れた。そのとき書ききれなかった変化を紹介しておこう。6.Ne5. e6, 7.f3.に7...c5と指す手だ。無論白は8.e4の一手で、左図になる。
 まづ、8...cxd4という手がある。先月のオタワ大会では三度も現れた。いまロシアと中国で若手や女流の団体戦が行われているが、そこでも使われたばかりだ。紹介棋譜にしておく。白アレクセーエフの新手12.Nxf7からの手順が鮮烈な研究の勝利である。これはどうも黒が悪そうだ。
 では、あっさり8...Bg6と引くのはどうだろう。パッとしない手だ。このビショップは窓際族になる。ところが実際は、クラムニクが昨年のマッチ第六局で使って以来、白の有効な手段が見つかってないらしいのだ。あのときは便所騒動に気を取られて、8...Bg6の意義には気付かなかった。よっしゃ、メキシコでは見逃すものか。今年はすでにアロニアン対クラムニクだけでも二度も現れている。
07/08/27
 マーシャルアタックに関してはNew In Chess本年3号の記事が面白かった。実質的な創始者からマーシャルは8...d5を知ったようだ、という研究の紹介である。
 メキシコに結集する八人のうち、六人までがスラヴを使うのは当然と言えば当然だが、これも気にしておきたい。
 テレビを見ない私に嫁が教えてくれた。いま放送中のドラマ「ホタルノヒカリ」にチェス盤が使われてるそうだ。それはどうでもいい気がするが、テレビを見ない私に彼女は「攻殻機動隊」も教えてくれた。これにはハマッタ。三本指をひねりながら彼女と会話するようになった私である。第3話のゴダールの引用とか良いじゃないですか。第8話で残念ながらタチコマはオセロなんぞに興じている。でも、決め手に「チェックメイト!」と言ってくれた。トグサに「ゲームが違うだろ!」と突っ込まれている。
07/08/26 紹介棋譜20参照
 この二年間でマーシャルもずいぶん形が決まってきた。図は15.Re4. g5, 16.Qf1まで。06/05/24から何度も触れてきた形である。ここで黒はQxf1+とQh5のどちらかを選ぶ。後者なら06/11/27、07/01/18、07/02/20などで私もよく扱ってきた形だ。ところが、ここ数ヶ月は前者が目立つのだ。
 16...Qxf1+はQ交換でパッとしないようだが、いやいや17.Kxf1. Bf5から面白い展開になる。18.Re1と引くようでは悪い。18.Nd2が現時点の常識である。対して黒もルックを取るようでは悪いらしい。実戦例を調べると、いろんな工夫が試されており、飽きなかった。今は16...Qh5より夢がありそうだ。
 ついこないだのマインツでアナンドがQxf1+を試しており、それを紹介棋譜にしておく。実は白23手まで前例をなぞった棋譜だ。それだけにまだ何かを隠してる気もするのだが、うがちすぎかな。
 もちろん、基本定跡の15.Be3も無視できないのは07/05/07に示したとおりだ。
07/08/25
 サンルイに関してはズシッとくる442ページの本が出ている。GershonとNorによる"San Luis 2005"だ。全局を詳しく解説してくれてる。一局の手抜きも無い。写真が豊富なのも特徴で、対局中の表情を中心にすべて美しいカラーだ。流行定跡の見本市であり、アナンド、モロゼビッチ、レコ、スヴィドラーが出ていた。メキシコ観戦の予習には最適だろう。
 メキシコ出場選手のうち、アナンド、アロニアン、レコ、スヴィドラー、グリシュク、なんと五人もマーシャルアタックを指す。今年はクラムニクまで感触を試している。どの棋士もマーシャル対策を練ってくるはずだ。その影響を一番受けるのはアロニアンだろう。上記五人のうち、彼は初手e4にe5しか指さないからである。これが有利か不利かはまた別の話だが。
07/08/24
 メキシコの優勝予想がちらほら出てきた。アナンド、アロニアンの名が挙がるのは当然として、クラムニクを推す人も多いのが意外だ。彼は総当り戦は得意ではないし、メキシコで頑張らなくてもたいして構わない立場にあることは07/04/08と07/06/25で書いた。それでも評価が高いのは近年の充実ぶりゆえだろう。クラムニク自身はレコを警戒している。レコはアナンドとスヴィドラーに分が悪すぎる、と私は思うが。この点、ゲルファンドを食い物にしているアナンドとクラムニクは確かに強そうだ。
 ドローの数が優勝を決めるのではないか。多ければクラムニク、少なければアナンド、勝ったり負けたりが激しければアロニアンやモロゼビッチにも運がまわってくる。サンルイを思い出そう。あのとき私はドローが多くなると読んだが、そうはならなかった。今度もきっとそうだ。すると、やはり本命はアナンドである。

戎棋夷説