紹介棋譜 別ウィンドウにて。
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2008,World Chess Championship Bonn, Dresden Chess Olympiad

08/12/01 紹介棋譜1参照
 皇帝掲示板もチェス五輪で盛り上がっていた。陛下御自身は頚椎ヘルニアで入院なさっている様子。たしかチェス歴ちょうど十年のはず。御快癒なさりますよう。私は四十肩が痛くて困っている。畏友のメールには「老」の字が出るようになった。彼との付き合いも十年近い。
 大会の総まとめをしておこう。優勝はアルメニアで二連覇だ。二位イスラエル、三位アメリカ。女子優勝はグルジアだった。中国が勝つと思っていた私にはすべて意外な結果である。ケレス65ブログの数え方に従うと、日本は一四六チームの七七位だった。前回トリノは八七位だった。
 個人ではサルギシアンが7勝0敗4分で金メダルを獲った。グリシュク戦を紹介棋譜に。八局指したトパロフは第9Rまで6勝0敗1分だったが、次の日にシロフにうまくやられてしまった。
08/11/30 紹介棋譜2参照
 第8Rはイゾリア対ショートが不思議だった。図で16...Rxg3 なのである。Re8 は悪いのだろうか。悪いらしい。白はRae1 からNe6 で好形だ。だが、本譜は17.Nde2 でルークが助からない。実際、17...Rxg2+, 18.Kxg2 で駒損になった。
 わざわざルークは死ぬために突っ込んだことになる。もちろんショートは意図してそうしたはずだ。でもその意図がわからないのである。このあと戦場はQ翼に移り、そこで優勢を築いた黒が最後は技を決めて勝ちきった。勝因はもちろんさっきの駒捨てに違いない。驚いたことにFritz の11や8までも16...Rxg3 を推奨した。当然の一手らしいのである。
 みなさんの大局観でどうだろう。黒の身で図を見て、黒Rが引いたら不利になる、だから、白Bと交換してQ翼で戦おう、と思えるだろうか。要点は、g2 ビショップが消えれば黒はPc5 を指せる、ということだろう。さらにPa6 からPb5 が可能になれば、g7 ビショップのにらみも利いてきて、黒がだんだん有利になる。実戦の流れは私にそう教えてくれた。
 とにかく最近の1.c4. e5 ってのは白の勝率が低いよなあ。手製データで13勝12敗26分である。
08/11/29
 十一月のムダ話でも。お題は「おいしい店」である。香川県で讃岐うどんを食べたい、という念願が私にはあった。車で行くべきだが、私は二十数年もずっと無事故無違反を続けており、いまさら運転はできないという事情がある。ところが、国会の都合で四月にガソリンが安くなり、この機に車で遠出しよう、というドライブ好きの嫁が香川遠征をかなえてくれた。
 田村、山越、松岡、をまわった。基本は製麺所であって、普通の飲食店とは違う。田村は、どーんとした重さと、微妙な複雑さがあって、田舎くさい味を楽しめた。店内のみすぼらしさも、巧まぬ演出である。山越は駐車場完備の観光地化がありがたい。麺のみずみずしさにはっとした。山かけが良く合う。松岡の麺はコシが強かった。かみしめ、ひきちぎる。味はここが一番洗練された正統派だ。値段は「小」(一玉)150円が相場のようである。こんな土地ではハンバーガーは繁殖できまい。
 帰りは金田一輝ブログで教わった栗林公園に寄り、一輝氏の御真影と同じ場所を探して写真を撮った。「あたしを出せ」と嫁が言うので、公開しよう。画像処理して牙と角は消してある。日本タンポポが多くて感激した。「また行こう」とはよく話す。大阪からの途上には、陶板複製を展示する風変りな大塚国際美術館がある。ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂が再現されているそうで、好奇心がそそられるのだ。
08/11/28 紹介棋譜3,4,5参照
 仕事の合間にちらちらと、「いつ7九歩を打つのかな」と思いながら竜王戦第四局のネット中継の画面を呼び出していた。それは85手目に現れる。羽生善治の四連勝を確信した。もっとも、相手は渡辺明だ。粘りに意地が感じられ、以下、△4三玉▲3五飛△4五銀は心を打つ抵抗だった。が、そこで▲5六金があるとのこと。羽生もそう指し、帰り仕度を始めた私であった。いやはや、これが逆転するとは。最後の最後、なんと打歩詰の筋で渡辺玉が助かるのである。
 カルアナは第7Rでも見せてくれた。紹介棋譜に。図から21.Rxe6 である。21...Kxe6 ならどうなるのか、Fritz の示した手順を変化に含めておく。なるほど白が勝つ、と私が納得できるまでにはかなり手数がかかった。本譜は21....Nc5, 22.Rxd6. Rxd6 である。そこで23.Bxd6 とは指さないので、また驚かされた。23.Qf4+ から寄せきったのである。
 今大会は7勝3敗1分だった。さらに二局を紹介棋譜に追加しておこう。とにかく面白い。びっくり箱のようなチェスである。カールセンと戦う日が来るのが待ち遠しいなあ。ちなみにソウは一日休んで4勝0敗6分だった。彼も気にしてゆこう。
08/11/26 紹介棋譜6,7参照
 第5Rでアダムス対カルアナがあり、後者が勝った。中央でがっちり噛み合うフランス防御で、こういうのはアダムスの方が得意そうなだけに、カルアナの強さが示された。
 第6Rの二局を紹介棋譜に。図はクラムニク対ショートで、白がQ翼で黒を押し込んだところである。黒はここに駒を集め、かろうじて支えている。で、クラムニクのすかさず目を転じた34.h3 がうまい。gポーンを突いて交換し、空いた筋へルークを回して手薄なK翼を突破しようというのだ。34...h5 にもかまわず予定どおりに35.g4 を進めた。積極的ではないか。08/11/16 の談話を思い出す。あとで勇み足のような手も出るが、ショートは勢いに押されて土俵を割った。
 もう一局はナカムラ対ブルゾンを。ナカムラが自陣の駒を見捨てて敵王頭に襲いかかる。最終的にはともにKQRPPP という損得無しの終盤になった。素人目にはポーンがよく前進している黒の方が有利に見えるのだが、手を進めるうち、実は白の勝勢であることがわかる。そこまで見越してナカムラが技をかけていたのだとしたらすごい。
08/11/25
 昨日の師の親心の話は何年も前の朝刊のコラムで知った。張栩は年少時から詰碁作家としても有名だった。後に舅となる小林光一にも作品を贈っている。小林は後になってから、それが娘と付き合ってる挨拶のつもりだったらしいことに気づいたそうだ。さきごろ、彼の詰碁が出版された。二冊目だろうか。三目ナカデくらいしか知らぬ私だが、よせばいいのについ買ってしまった。彼が好きなのである。でもやっぱりまったくわからない。第1問だけ紹介させてもらおう。難易度の星は最高で五つまである。「二の一」が急所だよな、だから、黒1は「b」だと思ったが、白2はツケでコウになってしまうらしい。正解手は意味がわからなかった。ちなみに私は『発陽論』も持っている。性分とはいえ本当に恥ずかしい。
08/11/24 紹介棋譜8,9参照
 第4Rにカルアナ対コルチノイがあった。後者は1931年生まれだから、六十歳以上の差がある。結果は前者の返し技が決まった快勝である。ボトビニクからカールセンまで勝っているコルチノイに頑張ってほしかったが。
 これともうひとつハリクリシュナ対スヴィドレルを紹介棋譜に。図で24.Rxe6 がすごい。取れば24.Bxe6+, Kh8 に追い込んで、27.Qf3 から28.Qh3+ 以下10数手かかるのだが、ほぼ詰んでしまうようだ。変化手順に含めた。
 序盤はグリュエンフェルドだ。3...d5 に対する4.Bg5 である。二年前のモレリアでこの手にスヴィドレルが二連敗したのを06/02/25 と06/02/27 に書いた。実際は良い勝率を挙げているのだが、この定跡の第一人者だけに負けると目立つ。
 私は学があるので「栩」を「く」と読めれる。夢で胡蝶になった荘子は「栩栩然」と飛び回る。もちろん張栩も「チョーク」だ。ところが、白墨と同じ発音がいぢめの種になりかねないのを心配して、師匠の林海峰が「ちょうう」と読ませるようにした、とのこと。立派に成長したのは御存知のとおり。こないだの名人防衛もポッキリとは折れぬしぶとさだった。
08/11/23
 ケレス65 ブログを読むと、函館チェスクラブのページに「現地からの詳報が出ているので見て欲しい」。どれどれ。本当に素晴らしい。快進撃の高揚がまるごと伝わってくる。日頃は日本選手に関心の薄い私でさえ胸が熱くなった。カタール戦について言えば、大会でのランクは相手が67位、こちらが107位だったとのこと。
 Chernev の名著Logical Chess: Move by Moveを紹介しているYamagishi ブログ「チェスの玉手箱」にも、上杉晋作選手の母親から伝わった大会情報が紹介されている。日本の躍進が世界の注目を集めているらしい。その反響を詳しく翻訳してくださった。
 もちろん「チェスドクターの日々」でも「どくぜんてきブログ」でも「ロレンの部屋」でもドレスデンが話題になっている。こんな盛り上がりはWindows 95 が出て以来、初めてのことではなかろうか。
08/11/22 紹介棋譜10参照
 第3Rではファンヴェリー対ラジャボフのキングスインディアンが注目される。07/08/01 で扱ったが、この二人は9.b4 から13.Ne6 という同じ型で何度も戦っているのだ。Fritz のデータベースではラジャの3勝1敗0分だから、ファンヴェリーがしつこいのだろう。ちなみにInformant には13.Ne6 が九局あり、うち六局がこの二人だ。
 今回も9.b4. Nh5 と進み七局目の誕生かと思われたが、分の悪い10.Re1 をついに諦めたファンヴェリーが手を変えて10.g3 を指した。彼は実は八年前に10.g3 を指しており、負けている。やっぱりしつこい。ただし今回は経験が活きる。彼はこの敗局をInformant で解説し、20.Rh2 ではなく20.fxe4 なら自分が良い、という分析を残していた。実戦も24手まで研究手順に沿ったのである。
 黒が強硬に白K翼になだれ込む激しいチェスで、BB対NPPP という難解な駒割になった。30手を過ぎるあたりまで、どっちが勝つかわからなかった。しかし、そこでラジャボフの攻めが息切れし始める。最後は大差でファンヴェリーが勝った。
08/11/21 紹介棋譜11, 12参照
 日本がカタールを破った。サッカーの話ではない。チェス・オリンピアード第2Rの事件である。もっとも、世界ランクは日本が92位でカタールは103位だが、小島慎也がグランドマスター(GM)に勝ったのが注目される。紹介棋譜に。
 図がそのAl Modiahki(あるモンジャ焼き?)戦で小島の20...Rd7 まで。黒はf筋を食い破られて絶望的に思える。ところが本譜は20.Qg3. Bf6 で虎口を脱せた。この後に白のポカが出る。その差を大切にして黒が勝利した。
 どうして20.Nxg7 を指さなかったのか。Fritz にかけると、21...Nd4 からNxc2 を狙う反撃があった。さらには、21...Nxg7, 22.Rxg7, Bh4 という大技も見つかった。変化手順に含めておく。小島がそれらを読み切った上で、白を図の局面に引き込んだとしたらたいしたものだ。
 小島は第6Rではローソンを破った。相手の終盤が下手くそすぎたが、107手の根性の逆転は賞賛に値する。彼だけではない。佐野富も第3RでGMを倒している。持久戦に組み合ってねじ伏せた。黒番である。これも紹介棋譜に。
08/11/20 紹介棋譜13参照
 名を列挙するのもめんどくさいほど錚々たる選手を集めてブリッツの世界選手権が行われた。ただし優勝したのは大穴のドミンゲス・ペレスである。8勝0敗7分だった。
 さてこれでやっと大会紹介が現在に追いついた。いまドレスデンでチェス・オリンピアードが開催されている。第1Rの棋譜をざっと見ると、カルアナがアロニアンに吹っ飛ばされていた。いいさ、勉強さ。
 フィリピンのソウ・ウェズレイが倪華のベルリン防御9...Ke8 を破っている。私が勝手に「中国流」と呼んでるやつだ。やはり10.h3 からPg4 の駒組みが有効らしい。紹介棋譜に。
 なんともしなやかな勝ち方で一目ぼれしてしまった。こないだ、カルアナを素晴らしいと思ったが、彼よりも若い1993年生まれである。図から18.e6 が「お?」と思わせる。取ったらNc3 で白の方が好形だ、という判断が良い。したがって倪華は取らなかったが、ソウはきれいな連続技を繰り出し、このポーンをe7 に進めて勝ちにつなげた。
08/11/18 紹介棋譜14参照
 カルポフは準決勝でナカムラに敗れた。一局目を黒番で引き分けたナカムラが、続く白番をたった13手の千日手で切り上げたのが嫌味だった。三局目からはブリッツになる。俺様が年寄りに負けるわけが無いというわけだ。実際、鮮やかに仕留めて見せた。決勝ではイワンチュクの判断ミスをとがめ、これは二局で優勝を決めた。
 ブリッツを紹介棋譜に残すのはためらわれるが、優勝者の栄誉をたたえてヴァシェ・ラグラーヴ戦を選ぼう。ベンコー・ギャンビットに対し、むしろ白から駒を捨て、展開と主導権を奪い返す序中盤が魅力的だ。
08/11/17 紹介棋譜15参照
 A組からカルアナが勝ち上がったのが目を引く。アメリカで1992年に生まれ、スーザン・ポルガー、パンドルフィニ、ベンコーなど一流の指導を受け強くなった。いろんな国に引っ越しているが、米国籍も持つイタリア人と述べておこう。今年のヴェイクではC組で優勝している。楽しいチェスを指す。今大会では卜祥志戦を紹介棋譜に。実に華々しい。序盤からずーっと、返し技には返し技という応酬が続く。この気合いはとても図ひとつで示せない。ぜひ並べてください。
 B組からはカルポフが抜けた。そして準々決勝でカルアナと当たったのである。結果は偉大な方の勝ち。カルポフをザイチェフに組ませたのだから無理も無い。そんなカルアナが無謀というか微笑ましかった。
08/11/16
 ボンの後日談がいろいろ。アナンドの苦労話として、「この一年、1.d4 の研究をしながら、実戦で1.e4 を指し続けるのが大変しんどかった」。ビルバオの惨敗はそういうことだったわけだ。クラムニクからは、「棋風をもっと攻撃的に改造したい」という談話が伝わっている。不可能ではなかろう。ロンドンでベルリンの壁を築く前の彼は、今よりずっと積極的だった。
 カップダグドの早指し大会があった。昨年同様多彩な顔ぶれでイワンチュク、カールセン、ラジャボフ、コステニウクなどなど十六人。まづはAとBのグループに分かれた総当たり戦で四人づつを選び、その計八人で勝ち抜き戦に入る。
08/11/14 紹介棋譜16参照
 欧州クラブ選手権の最終日第7Rも見ておこう。図はシロフ対フライドマンで、25.Ra1 に黒が投了したところ。クィーンが追い回されているが、まだ25...Qb4 へ逃げられる。諦めが早いような。そう思ってFritz にかけて驚いた。26.Nc6 から27.Ne7+ でキングが危ないのだ。27...Kh8 の後に妙手がある。紹介棋譜の変化手順にしたので、考えてみてください。その手自体よりも、こんな詰め上がりを想定して局面を整えていたシロフという人に感心である。
 畏友は日本経済新聞の記事をよく教えてくれる。9日朝刊は水村美苗が例の自著にまつわる亡母のエッセイを寄せていた。彼女の新刊についてもう一言つけくわえておくと、第五章で夏目漱石『三四郎』を論じてる部分が新鮮だった。登場人物たちは西洋語と日本語の二重言語者なのだ。すると「小説とは何か」という古い問題が新しく見えてくる。
 そして12日がWMSGである。日本はブリッジのシニア部門に優勝した。一員の山田敦彦が熱戦を振り返っている。決勝のアメリカ戦は前半3Rで43点も離されてしまったのを、後半3Rで逆転し、202対200で勝ったという。
 剣道の国が五輪のフェンシングで銀メダルを獲った。花札の国がブリッジで優勝できた。囲碁将棋の国のチェスは言い訳が無くなった。
08/11/13 紹介棋譜17, 18参照
 昨日は会議三つで済んだ。Informants 1-100 はPGNファイルで収まってしまう。ちょっと暇な時間が出来たので、職場の機械にも保存して遊んだ。
 一番気になる定跡はマーシャルだ。08/08/29 で整理したとき、17...Re6, 18.a4. f5 がなぜ滅びたのか、わからず仕舞いだった。しかし、新兵器は瞬時に解決してしまう。
 まづ、18...f5 を黒の立場で研究しつくしたエラントという通信選手が見つかった。棋譜番号76/(332) を紹介棋譜にしておこう。図は合意ドローが成立した場面である。ここまでの手順もすごいが、なぜここで黒が負けずにいられるのかも壮絶である。図から32...Rxf1 が絶妙なのだ。さらにビショップもクィーンも捨てる。すると、そう、ステイルメイトではないか。そこだけ変化手順にしたが、本当はそこに至るまでの研究にくらくらする。18...f5 の極北という称号を与えたくなる。
 だが、エラントの彫心鏤骨を湯気同然に蒸発させる手があったのだ。83/337 を紹介棋譜に。19.axb5. f4, 20.Bxf4、これで黒の攻めは続かない。PPPP対N という難しい駒割だが、白が良いという結論の覆ることは無さそうに思う。疑問にやっと答えが出た。
08/11/12
 サブプライムローン問題に端を発する金融危機で、一番ひどい被害をこうむったのはアイスランドらしい。それまではやたら羽振りが良かったそうだ。フィッシャー事件でアメリカにたて突くことが出来た事情もそのあたりにあったのかな。今なら違う結末が待っていたかもしれない。
 ポンドも下落した。昨年の今頃は230円くらいで、今は150円ほど。ロンドンチェスセンターで買い物をしたくなる。スポーツクラブに通って劇的に腹がへこんだので、自分に御褒美を与えてもいいんぢゃないか、と思っていたおりでもあった。注文したのはChess Informants 1-100 である。送料込みで約227ポンドだから、約1万8千円も安くなる勘定だ。
 昨日に届いた。さっそく全棋譜解説101,031局をChess Base で読めるようにする。手持ちの五十二冊を順々にたどっていく定跡研究は、もう終わった。実は嫌いぢゃない作業だったので寂しくもある。だからそれより、創刊号からすべて揃ったことがうれしい。今後は本欄のレベルも上がるはずである。もっとも、今年は遊びに金をかけすぎた。来年はきっと厳しい。暇も失われていく。些細なレベルより継続の方が心配だ。
08/11/11 紹介棋譜19参照
 第6Rにはまだ好局が残っている。図はサルギシアン対ナジェールで、黒の布陣にやや癖がある。もともとナイトがc6、ビショップがd7 に居たのを、12...Nb4, 13...Bc6 と展開したところだ。結果論かもしれないが、前例と比較すると、この二手でRc8 が遅れ、また、Q翼に駒が片寄った。少なくとも、サルギシアンはこれで「イケる」と判断した、とは言えそうだ。
 次の一手は14.Nxf7 である。14...Rxf7, 15.Bxe6 だ。似た局面でわりと誰でも思いついた経験があるはずの筋だが、R対BNの二枚替えなので、たいていは見送られているだろう。けれど、本局の場合はこの後の白dポーンの突き捨てがうまい。以下、Rad1 でd筋を奪い、白駒をすべて中央の攻撃に参加させて、優勢がはっきりした。
 こうなると黒はK翼に駒を固めて守ろうとする。すると、白は手薄になったQ翼に目を転ずるのである。a筋のパスポーンが7段目まで伸びて決まった。その流れも軽快だ。
 1983年生まれのアルメニア人である。これまで何度か本欄で名前は出ている。勝局の紹介はこれが初めて。
08/11/10 紹介棋譜20, 21, 22参照
 今大会ではマーシャルアタックが四局あった。うち三局が08/08/29 で整理した本定跡15.Be3 である。そして三局とも18.a4 を省いて19.f3 を突いた。07/05/07 で私が感心したクラムニクの新構想ではないか。結果は白2勝0敗1分という画期的な戦果だった。三局とも紹介棋譜に。
 図はその一局で第6Rバクロー対ヤコベンコの22.Bd1 まで。22...Qg6 が面白いと思った。当然の23.Bc2 に23...f5 だ。そして、さらに面白いことにバクローはルークを取らずに24.Bd2 だったのである。24.Bxe4 ならどうだったか。難しくてわからない。Fritz で調べた変化を載せておくにとどめる。黒の敗着は25手目のようだ。その直前ですでにやや白が指し易い、とFritz は申しておる。それが正しければ24.Bd2 は悪くない判断だったわけだが。
 そういえば、上記の本定跡整理の日に触れた水村美苗『日本語が亡びるとき』が書店に出た。さっそく買って第四章を読む。『福翁自伝』の紹介が無茶苦茶面白い。国語使用者として私もせめて英語から逃げぬよう心がけよう。
08/11/09 紹介棋譜23参照
 先日ついにジョットを見られたと思ったら、今朝の新聞によるとフラアンジェリコまで長崎に来てるらしい。これまで小さな板絵一枚しか見たことが無い。嫁に打診すると「雲仙!温泉!」と連呼を始めた。なんだか行けそうな気がする。
 第6Rの名局の中でもアロニアン対ヴォロキチンが圧巻だ。図は19...f4 まで。ここから猛攻が始まる。20.Ng5 だ。以下、駒を捨てまくり、最大時でRNPPP の駒損だった。最後はQとRの二騎だけで黒王を追い回し、f2地点で仕留めて見せた。投了まで一歩も動く暇の無かったa8 の黒Rが、白の呵責ない攻撃を象徴している。
 トパロフとカムスキーの対局地が決まったように08/06/24 に書いた。ところが、今月下旬に始まるはずのマッチがどこで行われるのか、誰も知らないのである。いろいろあったゴタゴタを私は書かずにいたが、とにかく、金はいくらでもイリュムジノフが出してくれる、という雰囲気は無くなっている。全世界の金融不安はFIDE会長も直撃したらしい。その処理に追われてしまい、彼はアナンド対クラムニクのマッチに顔を出す暇も無いほどだったのである。
08/11/08 紹介棋譜24参照
 更新が遅れてきた。ギリシャのカリテアで欧州クラブ選手権があって、先月下旬に終わっている。優勝はURAL Sverdlovskaya で、選手はラジャボフ、カムスキー、シロフ、グリシュクなどなど。準優勝はOSG Baden Baden で、スヴィドレル、バクロー、ナイディッシュ、ヴァレーホなどなど。他クラブからもイワンチュク、アロニアン、カールセン、カムスキー、カリャーキン、ヤコベンコなどが揃い盛況だった。
 全7Rの第6Rで急に面白くなった。まづはクラセンコフ対ベリャフスキーをどうぞ。手堅いQ翼インディアンで始まったなあ、と思っていたところ、白がポーンを捨てて黒クィーンを中央に引き出した。図の22.Rad1 で手順よく駒の中央終結を果たそうとする。
 「好き勝手させるか」と、ここで80年代の「第三の男」は22...Nxe5 を見せた。クィーンを取られても23...Nxf3+ でKR両取りである。こういう時の駒割計算はわかりにくいが、本局は黒が良いらしい。ベテランの大技はうれしい。
08/11/06
 またもや会議が五つあった。棋譜並べの気分ではないので、無駄話を続ける。
 ちょうど新聞の観戦記が竜王戦第1局を扱っている。大局観の勝利と称えられた後手羽生の名局である。52手6五歩までの局面を見ればわかるだろう。先手渡辺に穴熊を許し、自陣は53手2三角で二筋が崩れるのに、羽生は「指せる」と踏んでおり、事実、勝つのだから。佐藤康光のコメントは「昔ながらの右玉に洗練された発想と深い読みを加え、新しい指し方を確立している」。四字で言えば温故知新というやつだ。角換腰掛銀の後手右玉は、たしか、山田道美と若手棋士の研究会から生まれた戦法である。
 三月も前の記事だけど、坂田栄男の回想が、名棋士と古棋譜の出会いを伝えて味わい深い。全文を書き写しておいたから、渡辺君も読むといい。これを機にせめて「中原米長百番勝負」くらいは並べたらどうかな。
08/11/05
 『ジョットとその遺産展』のジョットは、ずっと見てきた画集とあまりに違うので戸惑うほどだった。ポスターとも違う。遠征の甲斐があった。また、弟子やら後継者やらの名品がぞろぞろ並んで、イタリアのゴシック絵画史をざっと見渡せた。七百年も昔の絵なのだから、現代人の目には表情や陰影のつけ方が稚拙だけど、筆遣いの生々しさから伝わる感動はレンブラントやフェルメールの技巧と変わらない。これは囲碁やチェスでも言えることで、ファンや専門家は古棋譜に敬意を払って鑑賞してきた。最近でも、畏友に教わった依田紀基『並べるだけで強くなる古碁名局集』が素晴らしい。対して、将棋は江戸や明治に冒涜的である。詰将棋しか評価しない。天野宗歩を一局も知らぬ者も多いのではないか。前に触れた『イメージと読みの将棋観』でわかったが、渡辺明にいたっては昭和にさえ冷淡である。06/12/03 で紹介した羽生善治の文章が英語でしか読めない、というのは恥ずかしいことだ。こんな現状で将棋は伝統文化だと称しても実体が無い。
08/11/03 紹介棋譜25参照
 ベテランや若手や女性の四人で争うホーヘフェーンは、ソコロフが4勝0敗2分の圧勝だった。そのうち2勝を挙げた図の5.g3 が印象に残った。技も見事に決まったスミーツ戦を紹介棋譜に。
 5.g3 はペトロシアンが何度か使ってるくらいだから古くからある。最近ではロマニシンが多用しており、カールセンもたまに見せる。黒陣はセミスラブ、白のQ翼はスラブ、K翼はカタロニアである。試したら?クラムニク、君に合いそうだ。白はc4 の駒損をなかなか取り返せないが、今大会の二局を見る限り、黒は駒がさばけず苦労している。
 大好きなんだけどまだ本物をほとんど見てない画家を挙げろ、と言われれば、ジョットとフラアンジェリコである。前者がたった四点ながら来日しており、今なら東郷青児美術館で見られるとのこと。あそこには「ひまわり」もあって、久しぶりに奴とも会いたい。ここ土曜も日曜も仕事だったし、いささかイーーーーッという気分なので、相変わらず忙しいながら、逃避を敢行いたします。もしこれを読んでる同僚が居たら、ごめんっ。そんなわけで明日の更新はお休み。
08/11/02 紹介棋譜26参照
 アナンドの勝因は序盤研究だ、というのがやはりカスパロフも含めた多くの意見である。同感だ。でも、この分野でクラムニクが劣ると事前に予想した者は居なかろう。
 いろんな大会が終わっている。ロシア選手権のプレーオフから見ようか。三人の早指し戦でスヴィドレルが優勝した。五年ぶり五回目である。一日六局ってのは疲れたろうなあ。
 ヤコベンコをマーシャル回避で破った最終戦で決まった。これを紹介棋譜に。8.h3 ではなく古い8.a4 だった。これにはいろんな対応がある。本譜は8...Bd7だ。昔は少なかったが、今年はよく見かける。
 図は10...Na5 まで。スヴィドレルは11.Ba2 だった。調べると、たいていの人はc2 に引く。a2 は昨年にカールセンのセコンドのリー(Lie)が似た局面で指した例くらいしか、私には見つからなかった。二局とも白が勝ったので、これから流行るかもしれない。本局のBa2 は、12...h6 に乗じた13.Nh4 が機敏で、Ng6 を見せ13...Kh7 を強要する効果があった。
08/10/31
 アナンドが初手を変えてくる気がしていた。第9局10局と流れが良くないからだ。果たして、第11局は1.e4 だった。クラムニクは1...c5 で応えた。ディープフリッツに敗れて以来久々であるが、勝つ気ならこれしか無い。04/03/03 のような成功例もあり、ちょっと私は期待もしていたのである。でもまあ、世の中そんなに甘くはなく、24手のドローに終わった。かくて3勝1敗7分でアナンドがタイトルを防衛した。かつてカスパロフやカルポフに敗れ、マッチでの自信の無さを公言していた弱虫の影も無い。三十八歳でも人は成長できるんだ。
08/10/30 紹介棋譜27参照
 第10局、引き分けならアナンドの勝利でマッチが終わる。そしたら過去百年でラスカー対ヤノウスキーと並ぶほどつまらぬ王座戦になるところだった。しかし、クラムニクは名局でひとつ粘ってみせたのである。
 Chess Today の解説が面白かった。昨年のW杯チェパリノフ対カールセン第2局と似ている、という指摘である。「似ている」でなく「ほぼ同じ」の方が白は指しやすい。知ってか知らずか、クラムニクはそのように局面をしつらえた。
 図は20...Be2 まで。上記のW杯ではe筋の黒ポーンがe5にあり、クィーンの横利きを遮断していた。さて、本譜は21.Bf4. e5, 22.Be3 である。一見、出て引っ込んだだけの無駄な動きだが、意味はおわかりだろう。Q翼まで利いていた黒女王の睨みが無くなった。クラムニクはそれを利用し、Q翼で優位を固めてゆく。
 ここからが見せ場である。22...Bg4, 23.Qa6 だ。どちらもc5ポーンを欲しがらない。それは正しい判断だったが、特に白の構想が優れていた。譜を進めるにつれ明らかになる。まづ、24.a4 から27.a5 で黒馬を追いb筋を空ける、そして、26.Rab1 から28.Rb7 で敵陣へ侵入する。これで勝負が決まった。正着の話を付け加えておくと、21...Bf3 や22...f6 と指すべきだった、とのこと。
08/10/29
 第7局8局9局は引き分けが続いた。アナンドの序盤の多彩さが目立つ。第8局の黒番ではQ翼ギャンビットのウィーン変化を見せた。何度かクラムニク戦で使った定跡ではあるが、要するに安全勝ちを狙わないという姿勢が鮮明なのだ。八局中五局もキャスリングをしないという布陣にも現れている。クラムニクと戦うには不安定な局面が有効と考えたのかもしれない。
 ただ第9局は危なかった。私の目にもクラムニクが優勢になったことがわかった。終盤は互いに時間切迫でミスを出し合って終わったらしい。第10局まで終えた目で見れば、クラムニクにとって非常に残念なドローだった。さて、6.5点でマッチに勝てる。アナンドは残り三局を半点で良い。
08/10/28 紹介棋譜28参照
 アナンドに読み負けるクラムニクが居ても不思議はないが、第6局のような組み負けは意外だった。6戦して3勝差の異常事態である。序盤はニムゾで、クラムニクは4.f3 対策を用意していたろうが、アナンドは4.Qc2 だった。4...d5, 5.cxd5. Qxd5 という、引き分けの多い型に進む。
 図の9.h3 が早くも新手で、アナンドばかりが研究を活かせるマッチだ。狙いは10.g4 である。黒Qは10...Qa5 に逃げるより無く、そこでアナンドはRを11.Rc1 にまわし、12.a3 からc3地点でBNを交換して消す。これでc筋は白が握った。
 新手に対してクラムニクは9...b6 から11...Bb7 で構えた。Pc5 の反撃をうかがう。ところが、すでにc筋で優位のアナンドはこれを自然に封じてしまった。18.Bb4 が私でも指せるような好着だ。
 そして、前局に続き再びクラムニクが焦る。18...c5 を強行した。それは駒損にしかならない。あとはズルズルと敗北した。名を伏せられたら白がクラムニクだと思うし、少なくとも絶対に黒ではない、と私は言い切るだろう。
08/10/27 紹介棋譜29参照
 レコやトパロフとのマッチでいづれもクラムニクは相手にリードを許している。だから第3局は前哨戦が済んだ程度に私は思っていた。第4局は普通のドロー。第5局を紹介棋譜に。アナンドは再びメランに組んだ。かつて彼がカスパロフとのマッチで同じ定跡を繰り返し、痛い目を見たのを思い出したが、もうあれから十三年も経っている。早めに自分から手を変え、相手が待ち受ける局面を現さなかった。問題はクラムニクだ。それまでのマッチとは違って、勝ちを焦り技を決めにきた。そして、わりとあっさりした返し技を食らい、瞬時に敗勢に陥ってしまったのである。一本道の変化だけに読み落としとしか言いようが無い。不調時の欠点が出た。第2局以降、アナンドが序盤の選択で揺さぶった効果かもしれない。
08/10/26 紹介棋譜30参照
 第3局は難しかった。クラムニクは黒をメランに組ませて流行から外れた。二十年前に私が丸暗記していた定跡だ。しかし、アナンドはこれをよく準備していた。図で14...Bb7 が実質的な新手である。ここからクラムニクが考え始める。そして15.Bxb5 を取って相手の研究手順に挑んでいった。黒は15...Bd6, 16.Rg8 で白王の直撃を狙う。予定通りだ。
 このあとクラムニクは18.Bf4. Bxf4 という非常手段の捨て駒に出る。さらに19.Nxd4 から20.Nxe6 まで捨て、ついに主導権を奪った。やっとそのあたりで研究が尽きたらしく、アナンドも長考を始めた。
 難解な駒のやり取りが続き、駒得はクラムニク、主導権はアナンドに移って終盤に入った。たがいに時間切迫し、好手と小ミスを出し合うわかりにくい流れだ。33.Bd3 が敗着で、正着は33.Kb3 からクィーンを捨て引き分けを狙う手順とのこと。変化手順に加えておいた。黒の正着も難しく、両者最高の選手とはいえ、これが盤上に現れた可能性は考えられない。そうした分析でわかることより、アナンドの積極的な棋風が勝因だったと思う。
08/10/25
 仕事帰りに駅で弁当箱を忘れたことに気がついた。疲れてるらしい。「引き返すから遅くなる」と嫁に電話しようとしたら、番号を思い出せない。忘れ物は駅員さんが確保してくれており、取り戻せたが、受取書類に住所を書こうとすると、またこれが思い出せない。
 元気の出る話でもしよう。増田忠彦という人を畏友に教わった。囲碁史の研究者だ。古代から幕末にいたる膨大な文献を調べて、すでに十年、毎週こつこつと二十冊以上を閲して、日記や古史、物語などに現れた囲碁の記述を片っ端から記録し続けている。それを『囲碁語園』という雅な名前の本としてまとめたい、という思いを抱いておられる、とのこと。実現すれば偉大な資料集になる。
 江戸期の囲碁将棋について畏友にいろいろ聞く。彼がよくこぼすのは、史家を名乗る好事家たちの提示する資料のいい加減さだ。彼らは原典にあたっているのか、古文書を読む能力があるのか、有名な者でも疑わしい。我々はそうした本を楽しまされているのである。
 もし『囲碁語園』が出版されたらどうだろう。誰もが信頼できる基礎文献を座右に置けるのである。開かれた議論が形成されるに違いない。畏友が著者の許しを得て原稿の一部を私に見せてくれた。どれどれ、『日本三代実録』によれば、804年の遣唐使に「碁師」が加わっている、「伴宿禰少勝雄は奕碁を善くするを以て、延暦の聘唐の日に使員に備へり。碁師を以てなり」。プロ棋士は平安時代から居たのか。しかも国費をかけて留学させるほどの価値があったとは。専門棋士の意義、国家との関係、江戸の御城碁や現代とも絡めたいろんな想像が湧く。
 ただし「碁師」の語には注意が必要だ。そんな点については、資料を殺さぬほどの簡潔で的確な解説が付いている。それもありがたい。仕上がれば約1650 ページの大著になるらしい。すごい人が居るものだ。出版社が見つかりますよう。
08/10/24
 いつもの仕事のほか一日に会議が五回なんてことがあった。おまけにちょうどいろいろ忙しい時期で、更新できずにいる。そのうちボンはほとんど終わってしまった。いま全十二局の第7局まで済んでアナンドの3勝0敗4分だ。両者の何をどう比較すればよいのかわからず、予想しにくいマッチだったが、こんな大差がつくとは。序盤対策のちょっとしたあたりはずれで決まったように思える。
 夕飯を食べて寝てしまい、朝四時に目が覚めたところ。何かしようと、前回で触れた三七二一局の棋譜集も圧縮した。819KBである。
08/10/22
 棋譜データを失った話は前にしたけれど、あれからある程度は回復した。そのうちふたつをサーバーに置いた。また同じことがあった場合の軽い慰めになろう。他人にはあまり意味の無い棋譜集だけど、興味ある方はどうぞ。PGNファイルをZIP形式で圧縮したものである。ひとつは本欄で扱った紹介棋譜全六二五局だ。158KB。もうひとつはNew In Chess 1999年最終号から本年7号までに載った全棋譜三三一四局である。790KB。日々の更新で過去の記事を調べるときに役立つし、近年の名局ほぼすべてが簡便に網羅されてもいる。
 ボンのマッチはどちらも白番で通常兵器を使わずに始まった。第1局のクラムニクはスラブに3.Nc3 だったし、第2局のアナンドは1.d4 だった。いづれも32手のドローに終わっている。違いは、前者は退屈な交換型で、後者はニムゾインディアンに対する攻撃的なゼーミッシュ4.f3 だったことだ。ゼーミッシュとは珍しいようだが、私が大急ぎで作った過去一年の強豪同士の棋譜集三七二一局のうち、3.Bb4 までは一三七局で、うち4.f3 は一四局あった。しかも白の6勝0敗8分である。意外性で勝負したというわけではなさそうだ。ちなみに4.Qc2 は七三局である。昔は常道だった4.e3 は二二局まで減っていた。

戎棋夷説