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中村高寛「ヨコハマメリー」

 主人公と反目し、若い頃には怒鳴りつけたこともあるという、かつての芸者さんが、気合の入った本物の「野毛山節」を聴かしてくれる。そんな、出てくる人たちのプライドが良い。人生は険しく、壮絶なユーモアさえ漂う。
 最後の場面で、私は動揺した。その時の映画館の観客全員も頭や肩を固定できなくなり、みんなで揺れていた。考えてみれば自然な流れの映像なのだが、あまりに映画的な不意打ちであったのである。映画はどうしても「過去」の表現である。そこに「現在」が露出してしまう奇跡を見たとでも言うしかない。