HOME
戎棋夷説
- グレゴリオ聖歌、聖母マリアの祝日
ドン・ジャン・クレール、サンピエールソレム修道院聖歌隊(1985年発売CD)
ソレム唱法で聴くのが一番良いに決まっている。
- ぺロティヌス、四声のオルガヌム、地上のすべての国々は
ポール・ヒリヤー、ヒリヤード・アンサンブル(1988年録音)
聞いたことの無い不思議な和音が立ち昇る。そこを特に強調した幻想的なヒリヤー盤を。
- アルフォンソ十世編纂、聖母マリア頌歌集
死者の谷の聖十字架聖歌隊、アトリウム・ムジケー古楽器合奏団、他(1968年録音)
このCDから一曲だけ選んでも仕方ない。古拙の味わい、薄暗い異教の香り。
- デュファイ、もし私の顔が蒼ざめているなら
デイビッド・マンロウ、ロンドン古楽コンソート(1973年頃録音)
不思議と頭に残って繰り返すことの多い旋律である。ミサ曲版も素敵だ。
- ジョスカン・デ・プレ、主よ私はあなたに期待した
ポール・ヒリヤー、ヒリヤード・アンサンブル(1983年録音)
お祈りしたのにどんどん悲しくなる。それでもまたお祈りを続ける人の哀切な歌。
- ジョスカン・デ・プレ、ミサ曲、エルクレス・ドゥクス・フェラリエ
ポール・ヒリヤー、ヒリヤード・アンサンブル(1989年録音)
内省的な落ち着いた旋律が絡み合って緊張する多声音楽の魅力にあふれる。
- ジョスカン・デ・プレ、ミサ曲、パンジェ・リングァ
ピーター・フィリップス、タリス・スコラーズ(1986年録音)
華やかな宗教曲。歌声が昇りつめて天に届く。
- ピエール・ド・ラ・リュー、レクイエム
ボー・ホルテン、アルス・ノヴァ(1985年86年録音CD)
聴きながら昇天してしまいそうなほど清らかに響く。
- トーマス・タリス、エレミアの哀歌
ポール・ヒリヤー、ヒリヤード・アンサンブル(1986年録音)
張り裂ける憂国の悲しみは抑制の利いた演奏でこそ。
- 作曲者不詳、恋人よ行こう(ロンサール)
エマ・カークビー、アントニー・ルーリー(1985年録音)
飾らぬ歌声が素晴らしい名盤の最後に収録された、十六世紀パリの流行歌。
- トーマス・ウィールクス、太鼓をたたけ
キングス・シンガーズ(1981年録音)
十六世紀から十七世紀の英国マドリガルを集めた一枚から。のほほんリズムです。
- テレマン、無伴奏フルートのための十二の幻想曲
ジャン・ピエール・ランパル(1972年録音)
現代語における「幻想曲」のイメージだ。このCDは録音がまた素晴らしい。
- バッハ、トッカータとフーガ、ニ短調、BWV.565
マリー・クレール・アラン(1970年録音)
わんわん鳴る。CD14枚のオルガン全集から選ぶならやっぱこれに尽きまする。
- バッハ、無伴奏チェロ組曲第一番、ト長調、BWV.1007
ヨーヨー・マ(1994-97年録音CD)
とてもやさしい。
- バッハ、無伴奏チェロ組曲第四番、変ホ長調、BWV.1010
アトム・エゴイヤン、ヨーヨー・マ、他(1997年収録)
短編映画「サラバンド」。命、芸術、愛、運命、他、強く静かなメッセージが溢れる。
- バッハ、ブランデンブルク協奏曲第二番、ヘ長調、BWV.1047
パブロ・カザルス、マールボロ音楽祭管弦楽団(1965年録音)
グスタフ・レオンハルト、クロード・リッパース、他(1977年録音)
高らかにまた悲愴に吹き渡るトランペット。しかし速いよカザルス。
- バッハ、ブランデンブルク協奏曲第六番、変ロ長調、BWV.1051
パブロ・カザルス、マールボロ音楽祭管弦楽団(1964年録音)
アムステルダムギタートリオ(ギタートリオ、1985年録音)
おなかを揺すりながら朝のジョギング。これってバッハの基本でしょう。
- バッハ、カンタータ、神なしたもう御業こそいと善けれ、BWV.99
リフキン、バッハアンサンブル、他(1988年録音)
リフキンの清清しい、どこかルネサンスぽいカンタータはもっと評価されて良い。
- バッハ、フランス組曲第五番、ト長調、BWV.816
グスタフ・レオンハルト(1975年録音)
出だしの優しさは泣ける。なぜか出勤途中によくガボットが思い出される。
- バッハ、カンタータ、われは満ち足れり、BWV.82
リフキン、バッハアンサンブル、他(1989年録音)
誠実そうな男の声が低くおだやかに信仰を語り始める。
- バッハ、バイオリンとオーボエのための協奏曲、ニ短調、BWV.1060
ホリガー、クレーメル、アカデミー室内管弦楽団(1982年録音)
やすらかな第二楽章が特に好きだ。ふたつの楽器が相性よく溶け合う。
- バッハ、イタリア協奏曲、ヘ長調、BWV.971
アルフレッド・ブレンデル(1976年録音)
ブレンデル先生、そんな鬼気迫ってこんな曲を弾かないでください。感じてしまいます。
- バッハ、音楽の捧げもの、BWV.1079
カール・ミュンヒンガー、シュトゥットガルト室内管弦楽団(1966年録音)
G・レオンハルト、M・レオンハルト、S・クイケン、W・クイケン、コーネン(1974年録音)
酷評されることの多い「王の主題」が神秘的で好きだ。トリオソナタは無論すばらしい。
- バッハ、ゴールドベルク変奏曲、BWV.988
グレン・グールド(ピアノ、1981年録音)
曽根麻矢子(1998年録音)
禍々しいグールド。チェンバロで聴きたくなったら曽根。
- スカルラッティ、ソナタ、ホ長調、K.380,L.23
ディヌ・リパッティ(ピアノ、1947年録音)
ウラディミール・ホロビッツ(ピアノ、1968年録音)
スカルラッティを曲で、しかもひとつだけ選ぶなら、この典雅を極めた宮廷舞曲風のを。
- スカルラッティ、ソナタ集、K.247, 2, 132, 35, 193, 386, 519, 322, 87, 515, 437
クララ・ハスキル(ピアノ、1950年録音)
このままではクララを一枚も入れることができないことに気付いたので、急遽これを。
- C.P.E.バッハ、交響曲第四番、イ長調、Wq.182
クリストファー・ホグウッド、エンシェント室内管弦楽団(1977年録音)
天馬が空をゆく感じ。キラキラしてて綺麗です。
- ハイドン、弦楽四重奏曲第五十九番、ホ長調、作品54-3
アマデウス弦楽四重奏団(1972年録音)
イザイ弦楽四重奏団(2003年録音)
なんてことのない経過句が第三楽章でいきなり舞い上がり、第一バイオリンが凱歌を上げる。
- ハイドン、弦楽四重奏曲第六十四番、ロ短調、作品64-2
モザイク弦楽四重奏団(2002年録音)
完成度の高いこの曲は、無用に高性能な暴走カルテットで聴きたい。
- ハイドン、弦楽四重奏曲第六十五番、変ロ長調、作品64-3
ウィーンコンツェルトハウス弦楽四重奏団(1954年録音)
アマデウス弦楽四重奏団(1974年録音)
笑える一楽章。情の濃い二楽章。品の良い三楽章。娯楽の四楽章。作曲者バレバレ。
- ハイドン、弦楽四重奏曲第六十八番、変ホ長調、作品64-6
フェステティーチ弦楽四重奏団(2002年録音)
わかってくれる。でも最後は肩をぽんと叩いて、「さ、仕事だ、お行き」。大人だねハイドン。
- ハイドン、弦楽四重奏曲第七十六番「五度」、ニ短調、作品76-2
クイケン弦楽四重奏団(1995年録音)
緊張と節度をわきまえた名演はとても少ない。ハイドンの孤高面を今に伝えている。
- レオポルド・コジェルフ、交響曲、ト短調、P.I:5
リボル・フラヴァーチェク、プラハ室内管弦楽団(1975年録音)
疾風怒濤期の音楽というと、他のすべてを押しのけてこれを思い浮かべる。
- レオポルド・コジェルフ、ピアノ三重奏のソナタ、イ長調、P.IX:14
トリオ1790(1994年録音)
ピアノをガンガン鳴らす輝かしい室内楽である。
- モーツァルトかなあ、交響曲、ヘ長調、K.75
カール・ベーム、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(1968年録音)
躍動感ある第一楽章にわくわくする。いかにもモーツァルトという楽章が続く。
- モーツァルト、ディヴェルティメント、ニ長調、K.136
バリリ弦楽四重奏団(1955年録音)
さわやかに風が吹き抜けて何ごとも無し。
- モーツァルト、オーボエ協奏曲、ハ長調、K.314
ホリガー、ワールト、ニューフィルハーモニア管弦楽団(1970年録音)
良い思い出がある。他の良い思い出まで付着して、いま不幸でもないのに泣けてくる。
- モーツァルト、ミサ曲「戴冠式」、ハ長調、K.317
クーベリック、バイエルン放送交響楽団、放送合唱団、他(1973年録音)
圧倒的に豪華で罪深さのかけらも無く、聴いてる人の方が後ろめたくなってくる。
- モーツァルト、セレナーデ第十番「グランパルティータ」、変ロ長調、K.361
オルフェウス室内管弦楽団(1986年録音)
木管の柔らかい中間色の味わいだけで作ったような純粋モーツァルト。
- モーツァルト、オーボエ四重奏曲、ヘ長調、K.370
ハインツ・ホリガー、オルランド四重奏団員(1984年録音)
モーツァルトのオーボエには人間の届かない、でも記憶の親密な幸福感がある。
- モーツァルト、交響曲第三十六番「リンツ」、ハ長調、K.425
イシュトヴァン・ケルテス、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1962年録音)
荘厳な序曲とたたみかけるスピード感の第一楽章。
- モーツァルト、ミサ曲、ハ短調、K.427
ガーディナー、ボニー、オッター、モンテヴェルディ合唱団、他(1991年収録)
でかい。こんな音楽を作りかけただけでモーツァルトは尊敬に値する。
- モーツァルト、二台のピアノのためのソナタ、ニ長調、K.448
マレイ・ペライア、ラドゥ・ルプー(1984年録音)
華やかでワクワクさせてくれる曲調に加え、二人の息が合うところがスリリング。
- モーツァルト、ピアノ協奏曲第二十三番、イ長調、K.488
ゼルキン、アバド、ロンドン交響楽団(1982年録音)
丁寧に最初の二楽章を聴かしてくれるから、軽快な終楽章にじわっとした幸福感が満つ。
- モーツァルト、ピアノと木管のための五重奏曲、変ホ長調、K.452
ルプー、ポラード、サルソ、フリース、ピーターソン(1986年発売)
絹のような手触りとはまさにこの曲。ルプーの音がまたやわらかい。
- モーツァルト、弦楽四重奏曲第十八番、イ長調、K.464
エステルハージ弦楽四重奏団(1979年80年録音CD)
クイケン弦楽四重奏団(1992年録音)
対位法が織り込まれて、あてどない優雅な浮遊感が続く。なぜか朝飯によく似合う。
- モーツァルト、弦楽四重奏曲第十九番「不協和音」、ハ長調、K.465
エステルハージ弦楽四重奏団(1979年80年録音CD)
クイケン弦楽四重奏団(1990年録音)
悪魔も天使もとりあえず分別せずに飛んでゆくスピード感。
- モーツァルト、歌劇、フィガロの結婚、K.492
ベーム、ポネル、プライ、カナワ、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1975年76年収録)
生き生きと愛すべき登場人物たち。最後の最後、あっけないほどの和解の尊さ。
- モーツァルト、交響曲第三十九番、変ホ長調、K.543
イシュトヴァン・ケルテス、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1962年録音)
どこか中途半端な「リンツ」を補筆して仕上げたような完成品。
- モーツァルト、交響曲第四十一番「ジュピター」、ハ長調、K.551
ジョージ・セル、クリーヴランド管弦楽団(1963年録音)
誰が演奏しても聴ける曲だから、一番好きな指揮者を挙げておこう。
- モーツァルト、クラリネット五重奏曲、イ長調、K.581
カール・ライスター、ウィーン弦楽四重奏団(1981年録音)
このたび久しぶりに聴き返して思った。究極至高の室内楽曲はこれである。
- ベートーヴェン、交響曲第三番「英雄」、変ホ長調、作品55
ジョージ・セル、クリーヴランド交響楽団(1957年録音)
いま聴いても奇怪でカッコいい。当時の人はあいさつの仕様が無かったでしょうね。
- ベートーヴェン、交響曲第四番、変ロ長調、作品60
カルロス・クライバー、バイエルン国立管弦楽団(1982年録音)
迫力満点の前進前進また前進。いいぞカルロス、文句無し。
- ベートーヴェン、交響曲第五番「運命」、ハ短調、作品67
カルロス・クライバー、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1975年録音)
スケールも可能性も三番にはかなわないけど、音楽史上有数の緊張感である。
- ベートーヴェン、ピアノ協奏曲第五番「皇帝」、変ホ長調、作品73
バックハウス、イッセルシュテット、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1959年録音)
ポリーニ、ベーム、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1979年収録)
クラシックばかり聴くようになったきっかけ。狂喜乱舞。ポリーニはイッちゃってる。
- ベートーヴェン、交響曲第八番、へ長調、作品93
ジョージ・セル、クリーヴランド交響楽団(1961年録音)
気楽な交響曲。三番や五番のような別格の迫力は無いけど好きだ。
- ベートーヴェン、ピアノソナタ第三十一番、変イ長調、作品110
エミール・ギレリス(1985年)
音楽が始まるよ、という出だし。そして、音楽が音楽から抜け出ようとするクライマックス。
- ベートーヴェン、弦楽四重奏のための「大フーガ」、変ロ長調、作品133
ブダペスト弦楽四重奏団(1961年録音)
精緻を極めて狂気に到ったか。演奏は堅実無比の人たちにお願いしたい。
- ベートーヴェン、弦楽四重奏曲第十六番、ヘ長調、作品135
バリリ弦楽四重奏団(1952年録音)
バルトーク弦楽四重奏団(1969-72年録音CD)
いろんな曲想が奇怪に詰まっている。四十過ぎてよく聴くようになった。
- シュポア、バイオリンとハープのためのコンチェルタンテ、ニ長調、作品115
ソフィー・ラングドン、ヒュー・ウェブ(1998年録音)
あまーい。夫婦でむつまじくしてる感じが、聴く者をして赤面させる。
- メンデルスゾーン、弦楽八重奏曲、変ホ長調、作品20
ゲヴァントハウス弦楽四重奏団、ベルリン弦楽四重奏団(1985年録音)
春になると聴きたくなる。カール・ズスケゆかりの名四重奏団が組んで好演を生んだ。
- シューマン、謝肉祭、作品9
アリシア・デ・ラローチャ(1987年録音)
シューマンを三曲も入れる自分が不思議ですが、輝かしいラローチャを落とせない。
- シューマン、ピアノ五重奏曲、変ホ長調、作品44
イェルク・デムス、バリリ弦楽四重奏団(1956年録音)
いかにも「おクラシック」という優等生的な格調がこの名演だとめでたく聞こえる。
- シューマン、詩人の恋、作品48
ディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウ、クリストフ・エッシェンバッハ(1974-76年録音CD)
ハイネは高校生の頃に大好きだった。
- ワーグナー、楽劇、トリスタンとイゾルデ
ベーム、ニルソン、ヴィントガッセン、バイロイト祝祭管弦楽団と合唱団(1966年録音)
これだけは聴く。しかもいつも第一幕だけで死ぬほど興奮してしまい、先が聴けない。
- ブルックナー、交響曲第八番、ハ長調
カール・ベーム、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1976年録音)
夜道で聴いた。第四楽章の始まりに陶酔して指揮して歩いた。
- ブラームス、ピアノ三重奏曲第一番、ロ長調、作品8
マリア・ジョアン・ピリス、オーギュスタン・デュメイ、ジャン・ワン(1995年録音)
バイオリンソナタの頃はピリスとデュメイのブラームスに違和感を感じたものだが。
- ブラームス、ピアノ四重奏曲第一番、ト短調、作品25
イェルク・デムス、バリリ弦楽四重奏団員(1956年録音)
どんよりした情熱がぐつぐつわきたつ。バリリと組むとデムスはいい。
- ブラームス、弦楽六重奏曲第二番、ト長調、作品36
ベルリンフィルハーモニー八重奏団員(1968年録音)
三十台前半まではブラームスの室内楽や協奏曲が大好きだった。
- フォーレ、ピアノ五重奏曲第一番、ニ短調、作品89
ジャン・ユボー、ヴィアノヴァ四重奏団(1969-70年録音CD)
か細いところからだんだん厚く盛り上がる第一楽章が名演たる所以である。
- マーラー、歌曲集、亡き子をしのぶ歌
ルートヴィヒ、ボールト、フィルハーモニア管弦楽団(1958年録音)
詩は男親の言葉なのだけれど、ルートヴィヒで聴いてしまうと、もう男の声ではつまらない。
- マーラー、交響曲第九番、二長調
レナード・バーンスタイン、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(1979年録音)
指揮者とオケが一期一会で完全燃焼した。聴き終ってしばらく茫然自失でした。
- ラフマニノフ、チェロソナタ、ト短調、作品19
ヨーヨー・マ、エマニュエル・アックス(1990年録音)
映画『外科室』で、誰にも言えない追憶に寄り添った、まさにあの甘美なる名演。
- シェーンベルク、弦楽四重奏曲第二番、作品10
ラサール弦楽四重奏団、マーガレット・プライス(1968-701年録音CD)
第四楽章で印象が変わって途方に暮れる。無知だったおかげで実感できた。
- シェーンベルク、月に憑かれたピエロ、作品21
シクライ、ミハーイ、ブダペスト室内管弦楽団(1987年発売CD)
幻想的な曲。聴きながら歌詞がわからないのがとても残念である。
- ラヴェル、弦楽四重奏曲、ヘ長調
イタリア弦楽四重奏団(1967年録音)
生真面目だ。三楽章で終りでいいなと思うと、律儀に第四楽章が始まる。
- リョベート編曲、聖母の御子、カタロニア民謡より
ジョン・ウィリアムス(1969年録音)
寒い日、それっきり帰ってこなかった猫を思い出す。安らかな最期でありましたよう。
- ストラヴィンスキー、春の祭典
ピエール・ブーレーズ、クリーヴランド管弦楽団(1991年録音)
弦も管も身勝手な打楽器と化して暴れる。それを計算づくで振る指揮者が恐ろしい。
- ストラヴィンスキー、プルチネルラ
レナード・バーンスタイン、ニューヨークフィルハーモニック(1960年録音)
いつか映画で効果的に使われて通俗名曲になるのでは。典雅で切なさもある。
- ウェーベルン、管弦楽のためのパッサカリア、作品1
ヘルベルト・ケーゲル、ライプツィヒ放送管弦楽団(1977年録音)
ピチカートの出だしから荒れ狂うクライマックスまでオーケストラを堪能できる。
- ウェーベルン、ゲオルゲ「第七の輪」による五つの歌曲、作品3
ドロシー・ドロウ、ルドルフ・ヤンセン(1986年発売CD)
どこまでも着地することのない無調の歌がけだるく延びてゆく。
- ウェーベルン、弦楽四重奏のための五つの楽章、作品5
ウィーンアルバンベルク弦楽四重奏団(1975年録音)
アルデッティ弦楽四重奏団(1994年発売CD)
鋭いベルク四重奏団か、ずんっと踏み込んでくれるアルデッティ四重奏団で。
- ウェーベルン、管弦楽のための六つの小品、作品6
ジェイムス・レヴァイン、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(1986年録音)
クラウディオ・アバド、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1990年録音)
一丸となって脅威の盛り上がりを見せるレヴァインと、それぞれのパートが自由なアバド。
- ウェーベルン、バイオリンとピアノのための四つの小品、作品7
アイダ・カヴァフィアン、ピーター・ゼルキン(1977年録音)
バイオリンというよりはガラスをこすってるような。
- ウェーベルン、弦楽四重奏のための六つのバガテル、作品9
ゲヴァントハウス弦楽四重奏団(1985年1986年録音CD)
かさかさっ、こそこそっ、音が伸び、ふくらみ、とりとめもなく終る。全六曲で四分程度。
- ウェーベルン、管弦楽のための五つの小品、作品10
ヘルベルト・ケーゲル、ライプツィヒ放送管弦楽団(1977年録音)
音楽というよりは音の色遊びだろうか。軽くうしろめたいひそやかさがある。
- ウェーベルン、ラテン語の歌詞による五つのカノン、作品16
シクライ、ミハーイ、ブダペスト室内管弦楽団(1987年発売CD)
音の跳躍が激しい時期。旧全集の演奏は大急ぎで叫んでいるだけだった。
- ウェーベルン、弦楽三重奏曲、作品20
ラサール弦楽四重奏団員(1983年85年録音CD)
音が奇怪な動きをする。カフカのオドラデグを思い浮かべるのは私だけでない。
- ウェーベルン、サキソフォン四重奏曲、作品22
クリスタール、ゼルキン、カヴァフィアン、ストルツマン(1977年録音)
つくりがわかりやすく芸の無い曲と思っていたけど、タッシの演奏で目が覚めた。
- ウェーベルン、ピアノのための変奏曲、作品27
マウリツィオ・ポリーニ(1976年77年録音CD)
つややかなポリーニの音色がたどたどしく音を並べてゆく。何度聴いたことか。
- ウェーベルン、弦楽四重奏曲、作品28
ジュリアード弦楽四重奏団(1970年録音)
大学の視聴覚室で初めて聴いた。最初の四音で私の美意識は歓喜した。
- プーランク、フルートソナタ
パトリック・ガロワ、パスカル・ロジェ(1988年録音)
おふらんすを聴きたいなあ、という時はこれです。
- リゲティ、手廻しオルガンのためのコンティヌウム
ピエール・シャリアル(1995年録音)
南洋民族打楽器のように始まり、「オルガンかいな」とわかり、電信音のように終わる。
- フェルドマン、弦楽四重奏曲第二番
アイヴスアンサンブル(1999年録音)
CD四枚で300分近い。でもその間、ゆっくりとまばらに音がするだけだ。
- 武満徹、ノヴェンバー・ステップス
横山勝也、鶴田錦史、小澤征爾、サイトウキネンオーケストラ(1989年録音)
たった二丁の邦楽器がオーケストラを食い止め、さらに二丁だけで秘術を尽くして渡り合う。
- 武満徹、ディスタンス
ハインツ・ホリガー、多忠麿(1972年録音)
東西の異なる楽器が、その違いゆえに遠ざかり、そして呼び合う。
- 武満徹、ブライス
小泉浩、篠崎史子、木村茉莉、山口恭範、吉原すみれ(2001年録音)
本人は東洋的音楽として聴かれるのを嫌がっていたけど、それで良いのでは。
- 武満徹、鳥は星形の庭に舞い降りる
小澤征爾、ボストン交響管弦楽団(1980年録音)
縹渺と立ち昇るタケミツ・トーンが最も効果的に響く。題名の美しさも音楽のうちだ。
- ペルト、フラトレス
シャハム、カールソン、ヤルヴィ、エーテボリ交響管弦楽団(1997年録音)
重い運命を静かに受け入れる男性的な曲。
- ペルト、タブラ・ラサ
シャハム、アンソニー、リスベルイ、ヤルヴィ、エーテボリ交響管弦楽団(1997年録音)
プリペアードピアノが民族楽器ぽいので、バイオリンもちょっとジプシーぽい人が欲しい。
- ライヒ、18人の音楽家のための音楽
スティーヴ・ライヒと音楽家たち(1976年録音)
素早い楽句が無限複製の中でじわじわ音形を変えてゆく時間経過が好き。
2007.5.21.作成。