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フィッシャー、ドルトムントとバイエル、フィッシャー。
04/08/22
 畏友に教わったのだが、スパイ事件で知られるゾルゲはチェスが指せた。大使との対局が情報収集に役立ったそうだ。昨夜「スパイ・ゾルゲ」が放映され、そんなシーンがあるか期待せず待ったら、あった。
 記者会見の話を続けてボスニッチの発言を紹介したかったが、事態は進んでいる。強制退去に関する東京地裁の判断が下ったのだ。フィッシャーの申請は却下された。畏友の調べでは却下の理由は、「退去命令はまだ出ておらず、手続き停止の緊急性はない」(菅野博之裁判長)。次は難民申請の結果に期待しよう。先は長い。
 記者会見では資料がいろいろ配布された。昨日ふれたアムネスティの申し入れを、数名の名を伏せたうえで全文紹介しよう。特に私のお気に入りの一句には下線を私が付した。そこだけでも読んでください。他に紹介しておきたいのは、アメリカ大使館が入国管理局に送った書類で、パスポートの「取消しは国務省の決定時に効力を有する」、そして、「取消しの前に告知することは義務ではない」とある。ただ、「個人は取消しについて通知されなければならない」ともある。取消し後の通知は必要、ということだろう。パスポートの失効は昨年だが、この書類も、7月までフィッシャーに「適切に告知することができなかった」ことを認めている。逆に言えば、7月になって告知したのだから、告知に関する問題は無い、ということではなかろうか。そして、フィッシャーは告知内容に不満がある旨を申し立てればいいのである。こう書きつつ思うのだが、パスポート問題の線ではフィッシャーに勝ち目は無いのではないか。だから今日はここまで。
04/08/21
 今年は長く取れた夏休みも終わってしまい、帰りの新幹線ではフィリドールのCDの英文解説を頑張って読んだのですが、これが興味深かった。でも当然、私の話は今日も記者会見です。
 最初に説明をしたのは鈴木弁護士で、まず、パスポートをめぐる問題の現状を話してくれた。フィッシャーを日本から強制退去させる手続きを停止するよう求めていた件には、今週か来週に結論が出るとのこと。パスポートの失効について、救う会が何度も指摘してきたのは、アメリカの法律では、失効を知らなかった者からパスポートを取り上げてはならないはずだ、という点である。鈴木の説明では、成田の入国管理局はこれを確認せずにフィッシャーを拘束してしまったらしい。そこへアメリカ領事がやってきて、パスポートを破棄してしまったわけだ。これまで私は話さずにきたが、この男が胡散臭くて、疑惑を強める一因にもなっている。疑惑とはもちろん、アメリカ政府はフィッシャーを法を曲げてでも罰したいのではないか、ということだ。そのためフィッシャーは自分を政治難民として認めるよう申請していたのは、すでにお伝えした。今回の記者会見で、アムネスティ日本がこの申請について入国管理局に対し公正な審査をするよう求めたことがわかった。
04/08/20
 私が19日に「近いうちに必ず聞ける」と書いた「近いうち」がまさかその日のうちだったとは。救う会の三人と鈴木弁護士による記者会見があったのである。畏友は多忙ながら会見があることを知って駆けつけてくれた。場所は再び外国人記者クラブだが、日本のメディアも来ており、集まった数も熱気も以前よりずっと増していたそうだ。一時間程度の会見で、畏友が伝えてくれた内容は濃い。たとえば、スパスキーの手紙は渡井の依頼に応えて書かれたそうだ。でも、今日は結婚問題だけにしぼろう。
 役場は婚姻届をやはり受理していない。前にも述べたように書類が足りないのだ。それより問題は結婚が偽装かどうかである。渡井自身が、畏友の言葉を借りれば「とくに緊張もない様子で淡々と」語ってくれた。まず、日本チェス協会へ寄せられた声への感謝を述べ、次のように、状況を説明し、記者たちの質問にも答えた。
 2000年2月にフィッシャーが渡井の家を訪れ、そのままずっと一緒に暮らしていた、とのこと。結婚してるのと同様の生活だったことを証明するについては自信を持っているようだ。なじみのホテルやレストランの従業員から証言を取れるはずだし、二人の写真もたくさんある、という。フィリピンの妻子の存在も否定した。鈴木弁護士も同意している。あるフィッシャー伝がフィリピンの妻子について言及しているらしいのだが、それによると子供の誕生は2000年だ。しかし、渡井の言ではこの年にフィッシャーがフィリピンに渡ったのは8月だそうだ。なら、2000年内の出産は不可能である。渡井がいま願うのは、法律的にも結婚することで、元の生活に戻りたい、自分達の生活を守りたい、ということである。「これまでの幸せで静かな生活がすべて破壊されてしまった。私たちの生活を守るため結婚の手続きを取ることにした」(共同通信)。
 まだ十分な説明ではないと思う。しかし、信じるのが自然だ。無論、私は自然な解釈を好むし、もっとはっきり言えば、二人の結婚を強く願い支持する。
04/08/19
 横浜の中華街へ行った。先日お話した羅経盤の簡略なのがわずか五百円強。それに、いわゆる風水メジャー(魯班尺)が千円強。これは面白いもので、たとえば、自分の家の入り口をこれで測り、その目盛に「富貴」とか書いてあれば、金がたまる可能性が高いことがわかるという代物だ。私はこれで自分の身長を測ったら「離郷」、たしかに神奈川出身だが今は大阪府民である(こんな使用法は定跡外だ)。ちなみに食事は萬珍楼の飲茶。うまかった。ボードゲームと関係無い話をしてるが、要するに、象棋の用具はほとんどどこにも売ってなかった、という意外な事実を報告したかったのである。
 とにかく様相は一変した。渡井美代子がボビー・フィッシャーの親しい知人であることを優先させて発言するのを私は批判してきたが、それはもう意味が無い。問題はこの結婚である。外国人労働者が日本に滞在するのを容易にするため、日本人と偽装結婚するのはよく聞く話だが、私の理解では違法である。無論、鈴木雅子弁護士は専門だから心配ないだろうし、渡井の声明にも「私たちの結婚は本物であり」云々とある。
 とはいえ、本当に「本物」であったとしても、疑念を持たれては結婚が成立しづらくないか、とそれが気になる。現状では、婚姻届が正式に受理されたわけではないらしい。たとえば、渡井は声明で、自分達が結婚することで「幸せな生活に戻れる助けになるかもしれません」と述べている。まるで結婚はビザ無しで日本に残るための手段にすぎない、と白状してるように解釈されそうだ。それから、結婚はこれまでの救う会の方針とも矛盾しないか。フィッシャーはモンテネグロへの亡命を望んでいたのではないか。渡井も付いてゆくつもりだったのだろうか。また、渡井自身の発言からも、フィッシャーは日本に居たくない、ということがわかっている。様相は一変したとはそういうことで、結婚はこれまでの情報と並ぶもうひとつの話題というわけにはゆかないのだ。むしろ、フィッシャーや救う会の真情がどうなのか、疑念さえ招きかねないのである。
 私はかなり前に渡井の本でフィッシャーとの交友を書いたエッセーを読み、恋愛感情が存在する可能性をちょっと考えた。そして、ありえないと思った。その後、フィッシャーが日本に居ると聞いて、同じことをまた考えた。やはり突飛だと思った。今は、本当かもしれないと思うほどに信じている。たとえば、私はフィリピンの女性の存在は無視しようと思う。しかし、無視はできても否定はできない、という程度には疑わしいのだ。私が望むのは、私たちがすこしでも安心して結婚を願えるような、そんな気持ちにさせてくれる渡井の言葉である。英文でいい、近いうちに必ず聞けると信ずる。
04/08/18
 渡井がいくつかの報道機関にファックスを送っている。日付もサインも無い代物だが、まあいい。英文と和文のものがあり、後者の日本語がお粗末なので、あきらかに前者が原文で、後者はその翻訳だ。
04/08/17
 16日分の更新を済ませた私に畏友からまた驚きの報せ。昨日、フィッシャーと渡井の婚姻届が提出されたのだ。これがアメリカ送還を免れるのにどのくらい有効なのか、私にはわからない。素人なりに考えると、これが送還阻止の手段と解釈されれば偽装結婚である。鈴木弁護士によれば、二人は2000年から暮らしていたとのこと。それが実質的に夫婦生活であったことを証明できたとしても、すでにフィリピンにはフィッシャーの妻子が存在するという話が本当なら重婚である。素人であるだけでなく事情もわからぬ私の考えを言えば、「救う会」はよほどの自信をもってこの計画を進めているか、裁判に勝つ見込みが無いと判断して性急な賭けに出ているかだろう。
 もう少し続けると、二人の結婚の手続きには、有効なフィッシャーのパスポート、あるいは、フィッシャーが米国の市民権を持つことが必要らしい。前者はいまのところ無い。後者はフィッシャー自身は放棄しようとしている。ただ、放棄の希望がかなうかどうかはまだわからない。
04/08/16
 「メトロポリス」によると、ボスニッチがジュニアの世界チャンピオンだったこと、石井がチェスクラブを持っていることなどがわかる。もっとも、そのクラブは会員二千人とかで、チェス専門のクラブとは思えない。また、当初はボスニッチと渡井は個々に行動していて、ボスニッチからJCAに連絡をとったようだ。
 フィッシャーが日本に来ていた理由として挙がっているのは、まず、彼が日本を愛していて、特に、電車で居眠りできるほど治安が良いこと、それから温泉がお気に入りだったようだ。もちろん、日本でフィッシャーは無名だから静かに過ごせることも大きい。で、あー、もうひとつ、正直に彼の言葉をお伝えするが、「日本にゃユダヤが居ねえしな」。そして、さらに気になるのが、セイコー社から秋に出る予定の対局時計の開発に彼が加わっており、そのための日本滞在だった、という話だ。ただし、セイコー社はこのプロジェクトの話を否定している。
 とにかく「メトロポリス」の記事は長くて紹介しきれないが、ChessBaseも取り上げてくれたので、詳しくはそちらの英語でご覧下さい。
04/08/15
 念のため補足するとルノワール監督は画家の息子である。畏友が次々とフィッシャー情報を送ってくれる。老いた山猫が牛久に護送される写真を教えてくれた。かわいそうだ。「メトロポリス」の記事の最後に渡井が言っている、「彼はもう日本に居たくないんです。残念です。日本が大好きな人だったのに」。早く好きな山にお逃げ。
04/08/14
 畏友は目が広い。神田で彼に会った日、「メトロポリス(METROPOLIS)」の8月6日号をくれた。外国人向けに発行されてる英字のフリーペーパーで書店なんかに置いてあるらしい。件の号は表紙が、破棄されたフィッシャーのパスポート、記事もたっぷり6ページ、重要な資料だ。とはいえ、extraditionとか、相変わらず苦手な単語ばかりで読める気がしない。
 身を椅子に固定しなければ読みきれないと思う、そんな時は電車に乗るのが良い。渋谷まで一時間強、原啓介さんの日記で教わった、bunkamuraのグッゲンハイム美術館展に行くことにした。タンギーが私は好きで、良品が珍しく日本に来ていて嬉しい。複製ではわからなかったこと、気づかなかったこと、いろいろ発見したし、他に名品も多く満足だった。売店でダリのタロットも買って、次はタワーレコードへ。おお、ルノワール「ピクニック」のDVDだ、なんて素晴らしい日だ。この勢いで、と期待してCD売り場へ行くと、見事にあった。ええ、フィリドール、無論ほかならぬチェスのフィリドールが。
04/08/13
 結局、フィッシャーの話題を続けるよりない。牛久にあるのは東日本入国管理センター。畏友の調べでは、ここに送られると何年も出られなくなるケースもあるらしく、その場合は難民申請の提出と却下、支援者の嘆願書の提出と却下、その繰り返しになるそうだ。難民になったら強制送還はなくなる。また、保釈(仮放免)に必要な保証金は最高300万円、当然のことながら「逃亡の恐れが無い」というのが条件だ。フィッシャーは逃亡するような人間ではないが、放浪してしまうからなあ。
04/08/12
 昨日の話には続きがある。帰宅してChessBaseのページを見ると、スパスキーがブッシュ米大統領に宛てた手紙が公開されていた。最後のところが感動的で、畏友に知らせようとメールを開けると、彼もとっくに読んで泣いていた。が、「泣いたあと、さすがはプレイボーイとも思った」。例によって私には読めないところもあるのだが、無理して全部ここに訳してみた。ちなみに、畏友によるとフィッシャーは茨城県の牛久に移送されたとのこと。長期戦である。
04/08/11
 神田の古本屋街へ。田村書店で『風に燃す』を。04/07/22に触れた「金の鬣」の歌集だ。見ると馬の歌が多く、私の解釈で正しいかもしれない。二時間ほど回って4時に畏友とアカシヤ書店で待ち合わせ、次に占いの本や道具を置いてある原書房へ。実は私は天才タロット師なのである。風水の道具で羅経盤を買った。小さな漢字や記号がびっしりで、習得するのは難しそう。他にもあちこち回ったが、最後に軽く一杯、というわけでランチョンへ。
 関根名人の記念館に行きたいね、という話になり、私「倉敷の大山康晴記念館って何があるんだろう」、畏友「使ってたメガネのレプリカとか?」、おお、あの丸メガネ、私「それしたい」、畏友「ヅラと合わせた"大山セット"なんてどう」。はは、「忍」の扇も付ければ無敵の土産品だ。
04/08/10
 帰省の新幹線にレイモンド・チャンドラーを持っていこうと思ったら見つからない。代わりに87分署シリーズなんてのを初めて読んだ。『命果てるまで』。読みつつ、テレビで見た記憶がした。個性ある刑事が一人しか出ないのが欠点だが、行き詰まった捜査が急に成果を挙げてゆくところは面白かった。
 先月だったかの「新潮」で柄谷行人と福田和也が対談していて、その中で、「村上春樹の本はロシアでは駅の売店なんかに並んでる」という話があった。NICの最新号はいろいろ言いたい事があって、たとえば巻末のインタヴュー。今号はイワンチュクだったが、ウクライナ人の彼が好きな作家も村上春樹だった。昨年の記事には、彼がレンブラントを鑑賞して大会の休日を過ごす話もあったと思う。粗野なエピソードも多い人だけに意外だ。"チュッキー"自身もそんな視線を意識してのことだろう、好きな女優にはシルヴィア・クリステルと答えているところがまた面白い人だ。カスパロフの他、シロフと彼がACPに所属してない代表棋士である。
04/08/09
 6日の会見はChessBaseもChessTodayも取り上げてくれた。たしかに29日のとは出来が違う。一方、デモの打ち合わせ会は中止になった。カッコ悪いが、それだけに賢明な決定をしてくれたと思う。行くかどうか迷っていた畏友もホッとしたのでは。救う会の活動が大きな支持を得る上での困難は二点あって、ひとつは日本チェス協会の信用の無さ。もうひとつはフィッシャーの容認しがたい政治信条である。前者に関しては、信頼度の現状を踏まえて、それを越えるよう渡井に活躍してもらうよりない。後者に関しては、フィッシャーの発言を一番の根拠にして彼を理解しないでほしい。少なくとも、それを送還の理由に含めるのは明白な誤りだ。
 今日からしばらく夏の休暇に入ります。メールの返信が出来ないのは悪しからず。本欄の更新も軽めにします。失効とか法務省とか、正直、私は初めて書く言葉ばかりで、ここずっと苦労してました。信じてくれないかもしれませんが、今日のこの数行も実は何時間も掛けて書いたものです、、、。
04/08/08
 フィッシャー。処分の取り消しを求め、6日に入国審査官らを告訴した。記者会見には日本のメディアを集めた。良し良し、と思っていると、読者Kさんからメール。これも6日だと思うが、日本チェス協会のホームページがやっとこの問題を紹介したという。協会として行動するというのではなく「救う会ができました」というお知らせに過ぎないが、立派な内容だ。何年も会員を続けて初めて、協会から発信されるまともな文章を見た。畏友は「これは価値観を共有できる」。私も同感だ。それやこれやまとめてここに。新聞記事は畏友が集めてくれた。
 さらに、救う会はアメリカ大使館と首相官邸へのデモを考えていて、積極的だ。打ち合わせ会の告知までして参加を求めている。いまデモすることが有効な抗議活動かどうかも含めて考えてほしい。私はデモの前に支持者を増やすべきだと思う。たとえば、フィッシャー・ファンの羽生善治に協力をお願いできないものだろうか。一言もらえるだけでもいいのだ。協会から追われた形になってる東公平にも頼んでほしい。また、一般のファンやクラブへの働きかけが、現状では無さ過ぎる。
04/08/07
 渡辺-森内の王座戦挑戦者決定戦(後手勝)がすごく面白かったが、そんな話もできずにいる。
 ChessTodayのフィッシャー情報はJapanTodayの引用が多い。その6日の記事はとても長くて読むのに苦労したが、事情を整理できた。フィッシャーが拘束されたのは失効したパスポートを所持していたからで、それも空港で廃棄されてしまった。この失効と廃棄に正当性が無い、というのがフィッシャー側の主張だ。当然ながら、フィッシャーは反米的行為や発言によって拘束されたのではない。しかし、パスポートの扱いが不当だったとすれば、反米的行為が問題の本質だった可能性が濃くなる。その政治的な事情から、パスポートに難癖を付けられ、アメリカに送還されようとしてるわけだ。テロに関するフィッシャーの発言が人道に反するのは確かだ。しかし、その発言が反米的だったことが理由でアメリカ政府が彼に目を付け、不当に拘束したなら、これは政治的迫害である。フィッシャー側はこの線で救出の可能性を探っているようだ。話が政治亡命になってくると、決着が数週間で着くことはまず無い、とのこと。何とか保釈を認めてほしいものである。
04/08/06
 マインツで早指しやフィッシャランダムの催しがあるのですが、私はトリポリ以来の観戦疲れが溜まっていてパス。棋譜だけ確認すると、アナンドがシロフのマーシャルを破っているのが目に付いた。
 ボスニッチはカナダ人で10年前にベオグラードで独立系ニュース通信団体IMC(インターメディアセンター) を作った人とのこと。ChessTodayのフィッシャー情報、私には読めなかったので、とりあえず畏友に見せるとざっと訳してくれました。モンテネグロのアメリカ領事が「フィッシャーは自分の国で裁判を受けるべきだ」と発言し、これを受け、モンテネグロ大統領ジュカノビッチもラジオのインタヴューでその立場を尊重すると述べた。アメリカの許しが無い限り、亡命させてくれないようだ。
04/08/05
 1834年から1989年までのチェス年表は前から作っていて、新局の更新に合わせて少しづつ見せてゆくつもりだったのですが、どうも、現在の更新ペースでは、そんなことしてたらとても終わりそうになく、一気にUPしてしまいました。チェスの歴史を考えるうえで、最小限の知識は並べたはずです。ただ、いくらか、年代の確定に不安のある事項もあり、間違いがあれば、ぜひお知らせください。出来栄えに畏友は結構よろこんでくれて、うれしかったです。大変な作業でしたが、誰か一人やっておけば、続く人がどんどん立派にしてくれると信じます。
04/08/04
 今日は朝から梅田で遊んでました。映画「真珠の首飾りの少女」は悪くなかったです。さて、モンテネグロが「フィッシャーを受け入れても良い」と言っている。旧ユーゴスラビアの国の一つであり、1992年の責任を感じてるようだ。フィッシャーもそれを望んでいる様子。ようやく話がまともになってきた感がある。
04/08/03
 カールセン(カルセン?)はトリポリを去ったあと、先月の三日から十日にかけてのノルウェー選手権に出場し、6勝1敗2分でトップの成績だった。同点のオステンスタッドと今月、マッチで決着を着けるそうだ。また、ポリティケン杯が終了、同点首位が3人で、カールセンはそれに続く4位だった。特に面白い棋譜は伝わっていない。
 読者Kさんよりメール、29日の元議員は日本チェス連盟からチェス七段をもらった人だった。彼のホームページを見ても趣味欄にチェスは無い。ルールさえ知らない七段かもしれぬが、政治家がテロの支持者を擁護してくれてる。感謝である。原啓介さんの日記が、テロに関するフィッシャーの発言を訳したサイトを紹介してくれていて、読むと、、、いやはや。
04/08/02
 ドルトムント最終日。アナンドはシシリアン・ポールセン、これはクラムニクも予想できたはずだ。20手あたりで白がa筋を支配し、さらに27手目でポーン得、そのまま35手からルック・エンディングへ。しかし、勝ちきれない。47手でドロー。黒ルックに二線を制されたところで、クラムニクも諦めた。私の目には淡々とした終盤で、トップクラスのルック・エンディングらしかった。これで勝負あり。続く早指しでアナンドが勝ち、優勝を決めた。おめでとう、やっぱ、あなたが最強だ。三位はスヴィドレル。早指しでレコに勝った。活気のある試合だった。
04/08/01
 アナンドとブリッツになったら勝てない、普通はそう思うし、レコもそう思っただろうが、いまさら工夫もできないのが彼である。自分に素直な敗退、そんな準決勝だった。しかし、決勝のクラムニクは何かするかも、顔はインテリ好青年だが、奴は勝負師だ。持ち時間の長い最初の二局で勝負を決めようとするのでは。そう期待して第一局を観戦した。案の定、黒番にもかかわらず、盤上をかき回し、事件を起こした。不発に終わって危なかったが、土壇場の一手が決まってドロー。今夜の白番がすべてだろう。今年の大一番だ。
 ChessTodayは連日フィッシャーの情報を伝えてるが、ここも29日の会見を黙殺。今日は、弁護士がようやく雇われたことを伝えた。名は移民問題の専門家、鈴木雅子。JapanTodayの引用である。
04/07/31
 ドルトムント、準決勝の第二局もふたつながらドロー。さらに早指しでも勝負がつかず、とうとう5分のブリッツ(一手3秒追加)で決着を着けた。対局者よりは、対局設定の問題である。こうなることを予想できた人は多いはずだ。
 ChessBaseは29日の記者会見を黙殺している。意外な結果だが、渡井たちが強いメッセージを出せなかったのも確かだ。一方、アイスランドのチェス協会は1972年を支え抜いた誇りを失っていない。フィッシャー救済を求めるネット署名を募っている。本当は日本チェス協会にやってほしかった。半角英数で署名して自分の国名を選んでクリックするだけです。ふざけた署名とかのチェックもしてる様子。畏友に先を越されたが、私も参加しました。皆さんにも協力おねがいします。
04/07/30
 ドルトムントは準決勝の第一局。ふたつともドロー。
 さすがである。畏友は有楽町へ外国人記者クラブの会見に行った。写真を送ってくれた。左から、元参議院議員石井一二、日本で報道に携わるジョン・ボスニッチ(John Bosnitch)、そして我らの渡井美代子。「フィッシャーを救う会」みたいなものが出来た、と聞くが、いまのところ実質的にはこの三人だけだろう。写真のもう一人は司会。保釈されてればフィッシャーも出た、とのこと。渡井がボスニッチに相談し、石井に声が掛かったようだ。畏友は詳しく伝えてくれたが、私の印象でざっとまとめると、ボスニッチによる状況説明が中心だった。渡井はフィッシャーの人柄を中心に語った模様。フィッシャーは決して非常識な奇人ではない、ということを知ってほしかったのだろう。私は、外務省や法務省、アメリカにもっと強いメッセージを送るべきだったと思う。また、日本の報道機関は相手にしない、という感じが気に食わない。畏友はわりと好意的で「渡井さんは友人としてがんばってると思う」。私は、日本のチェス界において、彼女がフィッシャーの友人としての立場を最優先させるのを疑問に思う。結果として、彼女個人の回想記がちょっと面白くなるだけのことではなかろうか。無論、彼女の努力が無駄にならぬことを私は望むし、彼女の行動は全国すべてのチェスクラブより、ずっとまともである。
04/07/29
 バイエルはモロゼビッチが時間責めで勝ち、独走で優勝を決めた。
 全国のチェスクラブの掲示板をざっと見た。会員のほとんどは、フィッシャーの身の上よりは、彼らの例会が次はどうなるか、の方が重要課題である。クラブ運営の難しさもよく話題になっており、それを考えれば、フィッシャーの話題が皆無に等しいのは、私には残念だが、いたしかたなかろう。問題は日本チェス協会(JCA)だ。今日、有楽町で会見があるそうだが、現状での私の印象は渡井美代子を代表とするJCAという名の個人がフィッシャーの知人として活動しているに過ぎない。私もJCAの会員であるが、未だに署名や募金の協力を求める葉書の一本も届いてないのだ。郵送の手間が大変なのかも知れないが、数年前、松本会長の傲慢で無知かつ無恥な文章の誤植を直しただけの最低な訂正版「チェス通信」を迅速に再配送する実力を持っていた彼らなのだ、やろうと思えば出来るのに、やる気が起こらないのだろう。自らの求心力に自信が無いのではなかろうか。たとえば、有力な弁護士やライターを雇って、アメリカに働きかけるための募金に、もしフィッシャーが「アリガトね、Maroさん」とでも領収書にサインしてくれるなら私は二十万円出してもいい、しかし、JCAはまともな会計報告さえしない(出来ない、ではない)団体なのだ。誰が信用するか。じゃあ、でも、千円なら捨てるつもりで出そう。しかし、JCAは日本のチェス・ファンに期待もしてないのではなかろうか。彼らの(いや、本当は我々の)ホーム・ページを見るがいい。事件をなんにも我々に伝えてない。ChessBaseの英語で知るしかない。そんな団体の記者会見に誰が日本のチェス界を代表する声としての重みを認めてくれるだろう。
 こうも言える。秋にチェス・オリンピアードに行く日本代表よ。「あなたはフィッシャーのために何をしましたか」、実際、それくらいしか日本選手に興味を持つ外国人など居ないだろう。私たちの名誉のためにも、恥ずかしくない答えを我々の代表にさせてあげたいのである。
04/07/28 紹介棋譜参照
 バイエルはモロゼビッチとサシキランの直接対決。モロゼビッチが流れを決めた一手が、図で18.b4!?。もし18...bxc4なら、19.Bxc4. Qxb4で、白が損しそうですが19.Bxc4が好点。黒陣はf7地点が弱いので、そこを突けるんです。それでも黒は機を見てb4のポーンをクィーンで取りに行き、Fritzも黒優勢を告げる。が、モロゼビッチは黒女王を自陣で取り囲み、サシキランのミスを誘いました。いつもながらの怪勝ですが、これで連続優勝は決まりでしょう。紹介棋譜に。
 ドルトムントは今夜が休み。グループ1からはアナンドとスヴィドレルが決勝トーナメントに進出。グループ2の面々は予想どおり(?)6ラウンドの12局すべてが引き分けでした。仕方なく、終了したその日のうちに、持ち時間10分(1手5秒追加)の早指しで12局すべてをやり直し。で、クラムニクとレコが残りました。レコは通算1勝0敗11分で決勝進出。
04/07/27 紹介棋譜参照
 昨日のクラムニクが素晴らしすぎて話せませんでしたが、バイエルのマクシェーン対モロゼビッチも好局のドローでした。モロ様は続くバクロー戦では黒を持ってスパニッシュのバードを採用、伸びすぎた白の孤ポーンを上手く利用し、相手のビショップを召し取る妙技で勝利。ところが、サシキランも星を延ばしており、現在同点首位。白番のこの日はポノマリョフに対し、セミスラブからボトビニクに入る例の7...g5に8.Nxg5とせず8.Bg3と引く穏やかな序盤。図の11.f4が新手で、それまでは11.h4。ポノは11...Nfd7、これはサシの研究手順だったはずです、彼は君子豹変の12.Nxf7!?。前半戦の借りを返しました。この構想の成否は私に判定できませんが、有効なら大変なことかも。
 でも、まっこと美しく決めてくれたのはアナンド。つべこべ言わずに紹介棋譜に。トリポリのタイトル争いよりも、私はこの一週間の方を楽しむタイプのチェス・ファンです。
04/07/26 紹介棋譜参照
 昨日のメールは「つまんない」どころか、私に非があることに気づいて深く反省。謝罪してるうちに深夜を過ぎて、それからドルトムントへ飛びましたら、おお、カルヤキンがクラムニクを見事に攻め立ててるではありませんか。クラムはクィーンを捨てざるを得ず、大ピンチで左の図、ここで44...b6。え?白は当然45.Qe2+。クラムは「aポーンを捨てる間にgポーンをわずかg3まででも進めよう」と考えたようです。私には思いもよらぬ粘りで、この顛末がどうなるか、夢中で見てましたら、カルヤキンが威勢良く技を出し、さらに駒を得して、Q+P対R+PPのエンディングへ。ICCのギャラリーは14歳の大金星を確信して沸きました。が、どこがどうなったのか、私にはまったくわかりません、とにかく最後の方ははっきりドロー。クラムニクの終盤力はすごい。
 いま午前4時25分。うーん、特に今日は遅刻は避けたいんだが。
04/07/25
 バイエルはお休み。ドルトムントを観戦中、職場の人間関係のつまんないメールが飛んできて、返信してるうち、チェスの気分ではなくなってしまった。いま見ると、スヴィドレルがNaiditschを下して星を五分に戻してる。他はドロー。
04/07/24
 ドルトムントはアナンドがスヴィドレルを下した。アナンドの終盤は、ポーン一個の差を慎重に維持してぬかりなかった。バイエルは前半五戦が終了。初日から四連敗だったマクシェーンがようやく一勝。相手は黒ポノマリョフだった。図で白はQb8+からQe5なんてせず、あっさり37.a6。黒は何を疑ったか、Rxb3+をせず37...Rdd7、これで大差になった。ChessTodayによると、37...Rxb3+でも白勝てそうだ、とのことだが、私は観戦していて、白の鷹揚さと黒の猜疑心が、いかにも二人らしくって面白い性格劇だった。モロゼビッチが首位。サシキランが半点差で続く。
 フィッシャー。畏友の調べでは、法務省は最大60日拘留できるらしい。盤駒の差し入れは受けてるかな。アメリカへ送還されて有罪になると禁固10年とか。冷戦の英雄なんだから、執行猶予くらいで済まして欲しいな。それにしても、弁護士が付いてなさそうなのが不安だ。
04/07/23
 ドルトムントは全戦ドロー。レコ対ボロガンを観戦して面白かった。バイエルはポノマリョフ対モロゼビッチ。87手の熱戦でドロー。これも面白かった。
 畏友がChessBaseで見つけた動画を教えてくれた。モーツァルトのレクイエムで荘厳に始まる100秒ほどの力作だ。クイックタイムが必要で、動くまで私は2分かかった。作者のデビッド・E・ケリーはハリウッドの業界人らしい。「ブルーに夢中」という映画の予告編である。畏友によると、「『ある愛の詩』をふまえている?」。よくあんな映画を覚えてるなあ、と感心したら、たまたま「冬のソナタ」にそれを思い出させるシーンがあったんだそうだ。つうか、冬ソナまで見とるんかい。
04/07/22
 バイエル、モロゼビッチは黒番でサシキラン戦。自陣の二線を敵ルックに支配されて危ない感じ、最後はクィーンを捨てて駒損のエンディング。しかし、それらが好判断だったようで半点を得た。今夜がポノマリョフ戦。一方、ドルトムントも始まる。アナンドやスヴィドレルのグループ1とクラムニクやレコのグループ2に別れ、上位二名が決勝トーナメントに残る。
 今月のムダ話は好きな短歌から。「生きゆくはみな修羅ながら鬣(たてがみ)の金色(きん)にかがやくものの羨(とも)しさ」。私はこれを馬の歌だと思いこんで、「生きるのは誰だってつらい、それはわかってはいるけれど、朝日に鬣をキラキラさせてる馬を見ると、あの美しい生き物をついうらやんでしまう」という意味だと信じていた。この一首で作者斎藤史は私の大切な歌人になったのだけれど、同僚に見せたら「ライオンの歌か」。たぶんそっちが正解だ。百獣の王の威勢に憧れる歌だったとは。
04/07/21
 バイエルの季節です。ここ数年の優勝者を見ると「棋士の復活祭」といった趣があり、すると今年はポノマリョフかな。第2Rのサシキラン戦でも、技を決められて危ないように見えたものの、最後は勝ちました。けど、観戦するならやはりモロゼビッチでしょう。しかも絶好調。図は1Rの黒マクシェーン戦。白は押され気味ですが、モロゼビッチの抵抗が力強かった。まず28.Kf2、黒の28...Nh5は当然として、さらに29.Ke3でゴールキーパーを押し上げる。こうしてaポーンを見捨て、中部戦線を支えているうち、気が付いたら白が大差で逆転勝ちしていました。次も圧勝。相手のバクローは指す手を失い無駄にルックを振るばかり。この二日だけで、すでにトリポリの3倍は楽しい。
 フィッシャーに関し、畏友が、冷淡な日本のマスコミに憤っている。しかし、選手にさえ、「フィッシャーは古い。最新のチェスはもっと進んでいる」なんて言う小ざかしい輩が多い国なのだ。
04/07/20
 フィッシャーの続報がChessBaseに出た。彼の声は日本チェス協会の渡井美代子を連絡係にして世界に流れている。旅券が失効しているのをフィッシャーは知らずにいて、こんなことになったらしい。第三国への政治亡命を望んでいる。私のページでも1992年の項に触れたとおり、アメリカに送還されるのはまずいのだ。おまけに、三年前の9月11日、ツインタワーに旅客機を突っ込ませた同時多発テロに喜ぶ内容の発言をフィリピンのラジオでしてたようだ。反共産主義、反ユダヤ主義、等エキセントリックな彼の政治信条はよく知られているとおりである。
04/07/19
 ChessBaseにインタビューが二つ。ひとつはショート。「なぜあんな世界選手権に参加したの」という質問に答えて、「私の棋士としての時間が尽きようとしてるんだ」。しんみり。「観客はどのくらいいた?」という質問には「すごく少なかった」。具体的な数を「100人くらい?」と聞かれて「いやいやいや、、、」。意地悪な聞き手はさらに「1ダースかな?」、答えざるを得なくなったショートは「ぶっちゃけ10人」。
 もうひとつはイリュムジノフで、こっちはあたりさわりのない質問ばかり。「殺人を指示なさった経験がおありですか」とか訊けばいいのに。カスパロフとカシムジャノフのマッチは来年5月の予定とか。ACPはそんなに待ってくれるだろうか。
04/07/18
 王位戦は谷川の勝ち。あんまり見かけないタイプの戦いだったのでは。
 ChessTodayがチェスボクシングを採り上げている。編集長バブーリンは面白がって「数日以内に"Chess Boxing Today"を創刊するつもりだ」。04/04/25でエンキ・ビラルについてお話ししたが、畏友が昨年のアムステルダムでの試合を収めたDVDを私に呉れて、見るとその最後に「エンキ・ビラルに捧ぐ」という一言が入っていた。
 すし屋から出ると連れが「隣にカルーセル麻紀が居たよね」。その場で言ってくれよ。おまけに04/05/01で買ったカルヴァン・クラインのネクタイに醤油が垂れてるのを発見。クリーニング屋さんは「ネクタイの染みは落ちたら御の字ですよ」。やけになって洗濯機に入れてしまった。
04/07/17
 畏友より一報。王位戦が始まったのだ。谷川に挑戦する羽生が先手で早石田を見せてくれている。特集ページでは加藤と藤井が対談していて、加藤が「羽生王座は華やかで、駒のやり取りがずっと続く将棋。互いの駒台に駒が多く乗っているイメージがあり、ダイナミックな感じがします」と言ってるのが面白かった。むかし、加藤はBSの囲碁将棋番組で「羽生将棋の本質は」と語りだしたことがある。そのときは「手厚いんですね」。例によって、両手で何度もお月様を作りながらの早口で、説得力があった。
04/07/16
 フィッシャーが成田で収容された。入国管理法違反容疑。旅券が失効していた。フィリピンに出ようとしていたらしい。13日夜の出来事。

戎棋夷説